陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

本を読むスピードは速い方がいいのか

2022-05-13 | 読書論・出版・本と雑誌の感想

本好きの皆さんは、だいたい一冊をどのくらいの時間で読み終えていますか?
試しに、ついさっき私は300頁ほどの小説を3時間ノンストップで読み終えました。これは、はたして早いのか否か。

日本人の平均読書の速度は1分あたり500文字~700文字なのだそうです。
先ほどの本はおよそ40文字×20行で800文字が一頁。しかし、今回の小説、かなりの改行が多く、言い回しも平易だったがために、かなりサクサクと読めた方です。なので、1頁当たりの分量は700文字ぐらいでしょう。1分で1頁読めたとしたら、300分かかるはずなのに、3時間で読めてしまった。…ということは、私は平均よりは読むスピードが速いかも、と言えます。

しかしながら、本を読む速度は本人の能力値が高いとは言い切れない面があります。
まず、失礼ながら内容が薄い場合。背景描写が浅く、キャラクターの行動原理が薄っぺらくて、どうも感情移入しづらい。展開にジェットコースター並みの起伏があるけれど、とくに思い入れもなくて、もう頁をただ消化するだけに読み進めてしまう。そういった小説やらは、すぐ読めてしまいます。とくに既視感のある展開だとそうではありませんか?

小説だけではなく、図解でわかりやすいビジネス本やエッセイ、新書などもそうです。
しかし、これらの類は軽く読めるものとして設定されているし、むしろ時間がかかりすぎてもいけないものでもあります。

読むのに時間がかかるなと思うのは、たいがい海外の翻訳ものの小説だとか、論文からの引用が豊富、注釈もきちんとついていそうな研究書とか。最近はもうご縁がありませんが英語の本だって、わりあい簡単な単語を用いていても文脈によって、辞書を引かないと意味がとりづらいこともありました。

文章に癖があるが、それが心地よくて何度も往復したくなるような本は、やはり滞在時間が長くなります。本のなかは異世界です。そこから脱け出したくない、終わってほしくない。そう思える本は何周もしたくなるものですから。

本を読むスピードが速い方がいいのかどうかは場合によりけりです。
たとえば、頭に入りづらくて文意が掴めないような本や退屈極まりない本は途中で投げ出してしまうので、そもそも読んだうちには入らない。さっさと読み終えてしまいたくて、わざと飛ばし読みしてしまう本もあります。

ただ、やはり、ある程度速読能力は鍛えておいたほうがいいものです。
とくに受験生の皆さんは、限られた時間内になるべき大量の文章を読解して答えを見つけ出すことが求められています。士業関係の資格取得をされたことがあればおわかりかと思いますが、判例を引用した問題文は一問でも何頁にも渡っていますよね。最初は四苦八苦しますけども、普段から辞書やら六法全書から、分厚い百科事典やらを制覇するのが胸躍るほど好き、という方ならば問題なしです。訓練すれば慣れるようになります。

本を早く読めるようになるということは、早く書けるようになることでもありますし、より多くの本を読める、ということでもあるのです。
つまり少ない時間でより多くの知識や思想を自分のものにすることができるのです。味わうようにじっくり熟読する本があるのも良いのですが、まずは一読してみてすぐに意味を把握できるような状態になる。そのためには、読書をする習慣を長く続けないといけません。


(2021/09/12)


読書の秋だからといって、本が好きだと思うなよ(目次)
本が売れないという叫びがある。しかし、本は買いたくないという抵抗勢力もある。
読者と著者とは、いつも平行線です。悲しいですね。



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