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陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「イングリッシュ・ぺイシェント」

2011-02-01 | 映画──社会派・青春・恋愛
戦争で記憶を失った男の話と聞けば「心の旅路」「ひまわり」が名作として有名。
事故で負傷し砂漠で救出された男が主人公の、1996年の映画「イングリッシュ・ぺイシェント」も、その手の類の記憶と愛の回復のドラマなのだろうと思っていたら、まったく違います。こちらのほうはかなり入り組んでいて、大河ドラマなみのボリューム。
そして、じつは過去と現在の二組の恋愛が進行する形態でもあります。

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1944年のイタリア。
砂漠の飛行機墜落事故で全身大火傷の重傷の患者が、野戦病院に収容された。名前すら思い出せない状態だった男だが、看護婦ハナの献身的な看護を受けるうちに、断片的な記憶を集めはじめる。

その男はアルマシー伯爵。
王立地理学協会に属し、1938年、アフリカサハラ砂漠で地図製作に携わっていた。やがて、協会のスポンサーであるクリフトンの美しい妻キャサリンと恋に落ちてしまう。

このアルマシーの過去と平行して、現在軸で進むのがハナを取り巻く男たち。
親友や恋人を戦争で次々に亡くした悲しみから、廃墟となった修道院で、孤独にこの患者を看取る彼女。そこへ、現れたのがなにやら不審な男カラヴァッジオ。カナダ人の元スパイだという彼は、実はアルマシーに恨みを抱いている。
さらに、爆弾処理専門のインド人将校キップも、近くに居候。そのうちハナとは恋仲に。

復讐を果たそうとしているカラヴァッジオの叱責によって、アルマシーの記憶が全て開き、真実が明らかに。
アルマシーとキャサリンの関係は不倫なので許されるものではないけれど、なんとも悲しい恋の結末です。
最後にカラヴァッジオの恨みが晴れたこと、そしてハナとキップの純粋な愛情を育んだことが、せめてもの救いってものでしょう。

表題の「英国人の患者」というのは、アルマシーとキャサリンの悲劇を生んだ事件に由来しています。インド人であるキップへの差別的描写もあったり(おそらく、そのために危険な爆弾処理をさせていると思われる)、終戦に浮かれた米軍の戦車によって誘爆の危機に遭わされたりするのは、なんとなく湾岸戦争への批判なのかとも感じます。
キップとハナが、修道院の絵画を眺めるシーンがとても印象的でした。
冒頭の洞窟壁画からして、異国情緒が漂うミステリーロマンスです。


主演は、アルマシーに、レイフ・ファインズ。「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」で魔術師ヴォルデモート役で有名。
キャサリン役は、「海辺の家」のクリスティン・スコット・トーマス。
カラヴァッジオを怪演するのは、ウィレム・デフォー。「スパイダーマン」のゴブリン役など往々にして悪役肌の演技派ですが、オリヴァー・ストーン監督作品の「プラトーン」では良心的な軍曹を演じました。オーラントのように両手を挙げて絶命するシーンはポスターにもなっていて、有名ですね。

監督・脚本は、アンソニー・ミンゲラ。
原作はマイケル・オンダーチェのブロッカー賞受賞作『イギリス人の患者』。
第69回アカデミー賞 作品賞ならびに第54回ゴールデングローブ賞 ドラマ部門作品賞受賞した作品です。



イングリッシュ・ペイシェント(1996) - goo 映画

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