いま時分この小説のレヴューをやっているのは管理人ぐらいなものだろうと思われますが。
小学館のパレット文庫から出ました小説版『少女革命ウテナ』
もう十年以上もまえの作品なんですね。
執筆者は、大河内一楼氏です。
現在は「コードギアス」のシリーズ構成として知られる彼ですが、この小説が小説家デヴュー作。「∀ガンダム」の脚本から、アニメのシナリオ、シリーズ構成を手がけるようになったとのこと。
つまり、この小説はまさに彼にとっては記念すべき作品というべきものでしょうか。
あとがきで著者がいうように、この小説版は幾原監督のサイケデリックアニメ、およびさいとうちほ先生の情緒たっぷり漫画版とも、ことなる弟分。とはいえ、お話の筋や設定はアニメに準拠しております。ゲーム版のようにオリキャラがでてくることもありません。
以下、ネタバレあり。
![]() | 少女革命ウテナ〈1〉蒼の双樹 (パレット文庫)![]() |
物語はおなじみウテナが生徒会メンバーと決闘をしてしまうお話。
アニメでいいますと、第一話「薔薇の花嫁」から第五話「光さす庭」あたりまでのお話。ということは、ウテナが誰と決闘するかはおわかりですよね?(タイトルに暗示されてもいる)
アニメと筋書きはおなじですが、西園寺と若葉の心情をカバーしてあります。あと、アニメの梢は毒々しい少女でしたが、小説ではそんなに悪い子には思えません。
最大の違いは、著者いわく「恋愛のヴェクトル」が違うとのこと。
たとえば、アニメでは幹が好きなのは、アンシーですが、この小説では漫画版とおなじくウテナに惹かれてしまいます。そして、漫画版の樹璃は冬芽をひそかに慕っているのでウテナを毛嫌いしますが、小説版では樹璃は(すくなくとも恋愛感情としては)つゆほども彼のことを想っていません。
そして、いちばんびっくりなのが、〇〇と✕✕の関係でしょう!(驚愕)
ついでに、七実もおらず、チュチュもあまり出しゃばらないので、コメディ要素は控えられています。
けっきょく、アニメどおりに幹くんは負けちゃうのですが、その敗因を分析した冬芽の言葉が印象的。双子の親和感というのはよく伝えられていますが、赤の他人の恋人よりも家族の方がだいじ、っていうのはそんなに責められるべきことなのか?血の繋がりをたいせつにしてる人間は大人ではないのか?疑問が浮かんできてしまいます。たしかにできあがった関係に依存しあって生きているふたりは、卵の殻の中に棲んででていこうとしない、といえるかもしれないけれど。
ちなみに、デュエリストの決闘は最終的にウテナが勝利するわけですけど、どちらかといいますと、敗者のほうの決闘に賭ける意気込みのほうが、胸を打つものがありますよね。西園寺にしたって、じつはアンシーを奪われたくなかったからだという。まあ、ウテナは好きこのんで剣を握っているのではなくて、巻き込まれてしまっているのですが。
メイン脚本家の榎戸洋司氏がつくったら、といいますか、あの幾原監督が監修してたらなんだかもっと、スゴい番外編になっていそうな気がしますが。この小説版は小説版で楽しめることかと。ちなみに挿絵はもちろん、さいとうちほ先生。
なぜ今さらこれを手にしたかといいますと、三月に帰省した折、実家の倉庫を整理しておりましたら、自分が棄てたと思っていた本が大量に見つかりまして。
学生寮を退去する際に、アニメ関係の本は売ったつもりだったのですが、売るに忍びなくて避難させていたようです。
しかし、A4版で出版されていたアニメのビジュアルファンブックや、五巻組の各話解説本などは、売ってしまったらしくありませんでした。
一冊は買い戻しできたんですけれどね(たぶん、自分が売ったのが残っていたのだと思う)