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陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

神無月の巫女設定資料集(八)

2014-11-23 | 感想・二次創作──神無月の巫女・京四郎と永遠の空・姫神の巫女


今回は、管理人がいちばん疑問視していたところの謎について、つらつら考量してみたいと思います。
いやあ、これね、初見時からずっと感じていたんですよね~。どうして、ああなんだろうな、って。で、十年めを機に、自分のこころのなかでもやっとした疑問に着地点が見つかったので、ひとまず満足。その謎に触れる前に、ちょっとしたトリビアを。

日本ではじめて実作のロボットなるものが登場するのは、西村真琴博士(黄門様で知られる俳優の西村晃の父)の「學天則」。昭和はじめの1928年のことです。東洋初のロボットとして有名。横山光輝原作の「バビル二世」に出てくるポセイドンみたいな造形です、なんとなく。

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映画化もされた荒俣宏のライトノベル『帝都物語』シリーズにも、悪鬼に邪魔だてされないように地下鉄で作業するロボットとして登場するので有名ですね。ちなみにこの『帝都物語』に出てくる戦う巫女・恵子さんがなんともかっこよかったりします。このシリーズ長すぎて、あといろいろ細かい設定が深すぎて、最後まで読みきれてないのですが。

この「學天則」、現在は復元模型が大阪市立科学博物館に展示されているのですが、動く仕様になっているらしく(ネット上で動画が公開されています)、表情があざとくて、微妙に怖いですよね。アンコールワットの仏像みたいな。経験から積み重ねられた複雑な感情に裏越しされていない、どこか計算尽くしの笑顔というか、瞳に柔らかさがない笑顔で、怖いんですよね。ロボットって、現実化してみれば、やっぱりこんなもんですよね。

「神無月の巫女」の前世は、漫画原作者によれば大正時代とのこと。
この大正の御時世にロボットなんてものが、ほんとうに本気で存在したのか、はなはだしく疑問だったわけです。これ、皆さんも思いませんでした? えっ、大正時代でしょ? ちんちん電車が走ってるような時代でしょ? なのに、ロボットぉ?! そんなアニメみたいなことあるわけないっしょ?!(いや、これ、アニメなんですが…)みたいな素朴な疑問。

でも、アニメ本編中にフラッシュバックされた過去映像では、ちゃんと前世の姫子と千歌音とが、アメノムラクモらしき機体に搭乗しております。なんか、お猿さんみたくシンバルを鳴らして、踊っているように見えてしまうのですが…(殴)、あの「外部はがんばったけど、極力内部のデザインにエネルギー注ぎませんでした。文句ありますッ?!」といいたげな、ひじょうにシンプル・イズ・ベストな、金屏風ふうのコクピットももれなくご健在なのです。アニメ史上あれほど、内部になにもないロボットも珍しかろうに。

オロチ神とかって、大魔神のような埴輪みたいなものか、巨大な石像か、はたまたただの剣だったとか、そんな古色ゆかしいほうが似合うのではないか、とつねづね思っていたわけですね。日本神話にある「八岐大蛇伝説」を下敷きにしているので、まんま、八匹の大蛇(一体ずつがばらばらで)みたいな怪獣が襲ったというのでも不思議ではありません。でも、クリーチャーと戦うとなると、とたん物語が伝奇ホラーっぽくなるんですよね。にょろっとした触手が出るとか、へんなどろっとした液体が飛んできそうとか、ひとがぱっくり喰われるとか、血みどろスプラッタになるとか、画面が気持ち悪さ満載になってしまいそう(参考例:クールジャパン戦略の忌み子として後世語り継がれるであろう問題作の「BLOOD-C」)。さすがに、これはいただけません。なにをおいても、愚かしくも美しい愛憎劇でなくちゃいけません。これでは、巷間にぎわす、当世よくある(…のかな?)伝奇ホラー系百合になってしまいます(そうなっても、まあおもしろいとは思うけど。というか、実写映画でも、「ミネハハ 秘密の森の少女たち」みたく、サスペンスと百合ものって波長が合うけどどうしてなんだろうね…)







先述したように、現実にはその端くれとして、大正のロボットなるもの、実現かなっていたわけです。
(公開されたのは昭和になってからですが、わずか数年のタイムラグなので、大正時代に実在の余地があったと考えてもさしつかえないと思われる)

というわけで、「神無月の巫女」の過去編なんてものがあったとしたら、それも立派にロボットアニメとして成立してもおかしくはないわけですね。少女小説で見られる香しげなエス文化と、血湧き肉踊る伝奇アクションテイストのロボットとが、いったい、どこをどう折り合いつけて融けあうのか、さだかではないのですが、まあ神無月の巫女製作陣ならばやってくれたことと思います。そもそも、巫女ものと来たら、悪霊とか化け物とかありきたりなわけで、そこにロボットを接ぎ木してしまったのが、この作品のおもしろいところだったりもするのですね。しかも、第一話ではOPをわざと省いて、「マリア様が見てる」を擬態した、清純派ごきげんよう学園ラブストーリー風味だったのですから、スタッフの周到な計算が伺えるというものです。あんたら、そこまでやるか。

そういや、その昔、土曜夕方に「サクラ大戦」(キャラクターデザインが『ああっ女神さまっ』の藤島康介氏)という、大正浪漫なテレビアニメがありましてですね。管理人はあまりその内容は知らないのですが。


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宝塚っぽい劇団の女の子たちが蒸気で動くロボットみたいなものに搭乗して戦うお話だったですよね(しかも、あれの隊長も大神だったような)。しかしながら、これは「太正時代」という架空の時代設定になってるらしい。

大正時代っていうのは、たった十五年しかないわけども、このあいだにずいぶんと文明開化が進み、日本は異国に勝利し、トントン拍子に自信をつけていった時代ですね。
いまの漫画カルチャーの基盤が築かれたのもこの頃らしい。日本で最初の社会保険である健康保険法が施行されたのは1922年。労働者階級が民主主義思想に目覚めていくとともに、福祉制度の基盤もちょいちょい築かれつつあった時代です。フェミニスト運動の萌芽も見られるし、主婦が発端となった米騒動も、パンを求めて暴動を起こしたフランス革命のようなものか。なので、最近、まあやたらとこの百年前の隆盛を懐かしむドラマがやたらと多いですよね。あの頃は良かった、あの頃の日本人は逞しかったのだ、と。歴史に残っているものを取りあげれば華やかに思うのだけど、実際は庶民はかなり大変な暮らしだったかと思われますが。学校に行きたくても行けなかった子も多かったろうし。

で、話戻しますが、大正時代の戦闘用ロボットの可能性について。
つまりロボットがあったのはいいとして、それがどういう戦いをするのか、ということについて。やっぱり、あの当時としても結局、サムライの一騎打ちみたいになるロボット同士の戦闘になるのでしょうが、それって、やはり効率悪いんじゃないでしょうか。戦争という侵略を防ぐためではなく、あくまで悪鬼退治とか治安維持という意味あいにおいての働きに過ぎないでしょう。作中における「世界を守る」というのも、「好きな君のいる世界を守りたい」なわけですよね。ほんとに本気で、顔も見えないけれど、人類総体をひっくるめて保護すべきために、あんな巨大なロボット操縦してっていきなり言われたら、青少年でなくとも、碇シンジくんみたいに怯えちゃうのも道理です。







そういえば、このロボットのコクピットって、オロチもアメノムラクモさんも、どちらも背景がど金箔の、なにもない空間なのですが、お互いにつながりあってるんですよね。一見かなり投げやりなこの設定があんがい肝でして、ロボットバトルなのに、搭乗者どうしがお互いに内部で行き来することができます。第五話でおこなわれたソウマVSツバサの兄弟決戦なんて、肉弾戦で直に殴り合ってるんですよ。だから、このアニメ、ロボットが空気だってさんざんヤジられてる残念感があるのですが、ま、それはともかく。

搭乗者どうしが巨大な拳をふるわずに直に対決できるってことはですね、過去の巫女とオロチの眷属たちも、そのように戦ってきたのかもしれませんね。それは戦闘したというよりも、ちょっとした小競り合いを話し合いなどでまるく収めたとか、そういうことだったのかも。現世編でも、この巫女たち、あんまり戦闘ヒロインっぽくないですよね。悪霊退散!とか言って怨霊退治したりする、よくある巫女バトルものを目指してもいないし。姫子がソウマ操るタケノヤミカヅチに力添えできたり、あるいは千歌音が乗っ取った機体を難なく操れたのは、あんがい、そういう歴史的な経緯があったのでは、とも思われます。なぜなら、巫女が機体を動かしていた動力は、憎悪や怨恨ではないからです。最終的にアメノムラクモを全機動させたらしき巫女のパワーの本質が、まさに「京四郎と永遠の空」における、人の愛(マナ)なくして存続できない絶対天使にひきつがれているのですね。つまり、愛情があれば、巨大なロボットも兵器も、ひとを殺めずにすむ、という真理がここに隠されているのです。

なお、本作でのロボットは戦闘シーン以外にも、なかなか洒落た使い方がされることがあります。
それはロマンスアニメでもあるからなのですが、ロボットアニメにあまり免疫ない人が見ると、けっこう、ほぇえええーッ?!(表現がやや古いですが(汗))ってなるかも。詳しくは本編をご覧くださいまし。


【追記】
アニメ「神無月の巫女」のオロチ役(合体した邪神)の納谷六郎さんが、つい先日永眠されました。
私もよく間違えてしまうのですが、銭形警部役の納谷五郎氏の実弟だったのですよね。田中敦子さん等がツイッターで誰かは分からないが訃報を嘆かれていたのは、もしや…。声優界の大御所を亡くしたのは実に惜しい。ご冥福をお祈りいたします。



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