ヨンデリーヌ・ヨンデルホンのビミョーなる書棚群

加齢なる 読道生活半世紀。 歯磨き、活字は、生活習慣。 

リーシーの物語 下

2015年12月30日 | ものがたり[海外]棚
スティーヴン・キング  文春文庫

まじ苦しい上下巻だった。
『巨匠キングが愛する感動大作』のオビ広告に、
「えっ、どこで?どこで感動ー?!」
と、吠えながら、やっとこさっとこ完読した上巻。
その後8ヶ月もの間、下巻に手をつける気になれず…

訳者あとがきを読んで納得。
キング自身曰く「これはとても特別な本だ。唯一これに関してだけは書評を読みたくない。というのも、この本について不快なことを言う人間がいるだろうから。そんなことわたしにはたえられない。自分の愛している人に対して卑劣なことをする奴がいたら、そいつを憎むだろう。それと同じこと。私はこの本を愛している」…

愛なのかー。
愛と来られちゃしかたがないかー。
オビ広告の半分は誇大ではない、と。

収穫は、さらに続く訳者あとがき。
これぞキング。
キングの魅力を存分に評しきった、白石朗様のこのあとがきこそが、感動モノ。

「本書でキングはお家芸ともいえる、倍率をあげながら細部に迫っていくかのような濃密きわまる描写と(そうそうそうそう、でも今回の濃密感覚ハンパない)、…中略…過去の秘密への鍵になるキーワードやイメージや会話の断片などが、主人公の思考の道筋を断ち切って強引に割り込んでくるスタイルや(そうそうそうそう、でもこのキングお約束も、本作では塩分過多だったー)…」

うまうまツリー

どでかでっかい

悪のぬるぬる
…等々、

白石氏の絶品訳には感服しきりでありますが、
「そんなふうに凝った書きぶりでありながら、決して読みにくくはならず…」
うーん。
この作品については、そうはいかなかったよ。アタシには。
(注)訳のせいではないですよ。

だけどキングはやめられない。
「緻密な計算のうえで全編にちりばめられたいくつもの“言葉、言葉、言葉”を媒介に、過去と現在が共鳴し合い、物語がしだいにスピードを速める螺旋を描きながら、あまりにも壮絶な核心に迫っていく…」
そうそうそうそう、それがあるからやめられない。

本書上下巻は手放しても、この『あとがき』のキング賛歌は永久保存しておきたいのでした。


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