ヨンデリーヌ・ヨンデルホンのビミョーなる書棚群

加齢なる 読道生活半世紀。 歯磨き、活字は、生活習慣。 

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制裁

2017年05月27日 | ミステ棚
アンデシュ・ルースルンド&ペリエ・ヘルストレム  ハヤカワ文庫

少女連続殺人犯が脱走した日、愛娘が消えた… 

「約四年前」と題された冒頭、最初の一行から嫌な予感。
案の定、案の定!…糞反吐が出るような少女への暴行シーン…

これだけのものをポンと頭に広げきっておいて、何ものかに昇華させ得るほどの展開を提示できるのか?!ハンパな提示じゃ許さないよ!
と、ささくれ立つよな気持ちで、次章となる「現在」にページを進めれば…

ノンストップ必定。

「現在」は更に、
第一部(一日)
第二部(一週間)
第三部(一ヵ月)の三部構成となっているのだが、
ラスト近くには、この、(一日)(一週間)(一ヵ月)の意味を思い起こすだけで、せりあがってくるもの、こみ上げてくるものが抑えきれない…

その父親、
別れた妻、
恋人、
刑事、
検察官、
判事、
脱走の責を負うべき刑務官、
囚人、
市民、
市民、市民、別の市民、そしてまた別の…

全ての登場人物が抱え込んだ「負」の感情、
そして「連鎖」!
冒頭で読者へぶちまけられた暴行シーンの描写は、読者をもここに登場する一市民として、傍観を許さない立場に引きずり込むための仕掛けであったのだと、やっと気づくのだ。

ものがたりは何も結論付けてはいない。
それゆえに、読了した者に残された課題は、あまりに大きい…

すごい本と、言うべき一冊。



P.S. カバーをつけて読んでください。
   読了後、カバーを外し、あらためて表紙を見た時…
   胸に迫るものは何倍にも増して…
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コードネーム・ヴェリティ

2017年05月04日 | ミステ棚
エリザベス・ウェイン  創元推理文庫

「謎」の第1部。
「驚愕」の第2部。
そして、「慟哭」の結末。

その上、MWA賞受賞。

とオビ広告されたひにゃ、期待してしまうじゃないか。


やたらガーリーな文調・内容の第1部にイライラしつつも、
次に「驚愕」が待っているなら、
ラスト「慟哭」が訪れるなら、
ここが我慢のしどころと思ってしまうじゃないか。

「謎」はまあ、解けたにしても、
うーん、「驚愕」と「慟哭」は?
最後の最後まで、赤毛のアンか若草物語かってな雰囲気を醸しつつ、そのモチーフは思いっきり戦争(第二次世界大戦&ナチス)…
そのアンバランスに最後の最後まで馴染むことが出来ずじまい。

イギリスの空軍飛行士(女子)、イギリスのスパイ(女子)、
ふつうにノンフィクションであった方が、素直に「驚愕」できたかも。
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謀略の都 上

2017年04月07日 | ミステ棚
ロバート・ゴダード  講談社文庫

うひゃー!ゴダードの、新作?!

と、喜び勇んで上下で購入しちまいましたが。

上巻で、撤収ー ( ノД`)

1919年のパリ。講和条約締結が進められる中で、英国の外交官が自殺した。それは本当に自殺だったのか?外交官の次男である元空軍パイロットのマックスは、父の死の真相を追いかける…

あんなに好きだったゴダードなのに。
めくるめくゴシック・ミステリーの名手だったのに。

いやはや大味。

こんなだっけ、ゴダード?

会話も、背景描写も、「超訳か?」ってほどの、ぬるま湯状態。

ゴダードにヤキがまわったのか、
ヨンデがジェフリー・ディーヴァーの緻密かつ多重構成ミステの洗礼を受けてしまったからなのか…

それでも上下巻だけだったら、吐きそうになりながらも頑張って読了したかもしれないけれど、
3月に続巻2冊、5月に続々巻2冊の三部作とな。
しかも講談社文庫ときたら、高すぎるんだってばよ。

傷は浅いうちに…
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悪魔の羽根

2017年03月22日 | ミステ棚
ミネット・ウォルターズ  創元推理文庫

久しぶりのミネット・ウォルターズ

ロイター通信の女性記者・コニーは、シエラレオネで殺害された女性たちの事件を追う中で、一人の英兵を疑うが尻尾はつかめない。二年後、バグダッドでその英兵・マッケンジーに遭遇したコニーは、なんとマッケンジーに監禁されてしまう!
…しかしなぜか、三日後に無傷で解放されたコニーは、警察の追及をかわし、何かから逃れるかのように故国イギリスに戻り、片田舎に身をひそめる…
マッケンジーは殺人犯なのか?
監禁中、コニーにいったい何があったのか?
そしてコニーはなぜ無傷で解放されたのか?


正直、何ヶ所もウザいほどの質問合戦になっている場面があり、
読んでるこっちが質問攻めにあってるようで、疲れた…

質問とその答えだけでハナシを進めるって、小説として(特にミステ分野は)イエローカードだよなぁ~

しかし、コニーが隠れ住んだ田舎町で出会った女性・ジェスは実に魅力的。
ミネット・ウォルターズのものがたりを厚くしているのはこういう要素、
女性陣の人物造形です。

ヒロインのコニーはもとより、
変わり者の農場主・ジェス、認知症の老女・リリー、そのいけ好かない娘・マデリーン、コニーの母・マリアンヌ等々、
コニーに絡んだ「女性」たちそれぞれのミステリーが輻輳するからこそ、
バグダッドでの監禁とマッケンジー問題がさて置かれたような形になっちゃっても、読み切れたのかなー。

ええ、監禁(?)の件は、軽く藪の中的状態で終了。
ま、そこをあからさまにしないからこそ、尊厳、ということを考えさせられるのかもしれませぬ。
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エンプティー・チェア 上・下

2017年03月04日 | ミステ棚
ジェフリー・ディーヴァー  文春文庫

シリーズ三作目「エンプティー・チェア」も、
図書館にて、美本状態文庫を獲得!

5年連用日記は、3年目が面白い。
ミステのシリーズものは、2作目が面白い。我が法則です。

…と思っていたけど、三作目は更にキョーレツに面白い! のでした。

四肢麻痺回復という一縷の望みを託して、ある手術を受けるべくライムが訪れたのはノースカロライナ州パケノーク。そこに起きた殺人事件&誘拐事件の犯人ギャレット少年は、最初の誘拐被害者が見つからないうちに、更なる誘拐事件を引き起こす。手術までの待機期間中、捜査協力をすることになったライムとアメリアだが、犯人逮捕後にアメリアのとった行動から最悪の窮地に追い込まれていく!
大ディズマル湿地を間近に控える大自然の中で繰り広げられる二重三重の逃走劇、はたしてその行方は…


犯人としてマークされた少年・ギャレットの人物造形がこの作品にもたらした厚み、重み、迷いときたら…
読者はギャレットに対する「先入観」に、何度も振り回されること必定。
…先入観を抱いてはいけない。どんなことも起こり得ると肝に銘じること…
と、ライムも常々言っているのに、持ってしまうこの先入観。
それが覆されたと思ったら、また裏切られ、と思ったら更にどんでん返し、でもって二回転半捻り~、みたいな。


読後、上下巻二冊を手に持ってしみじみ思う事、
文庫本2冊という、たったそれだけの質量の中に、どれほどの「世界」と「時間」が詰まっている事か…
読書屋冥利につきるとはこのことなり。
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コフィン・ダンサー 上・下

2016年11月13日 | ミステ棚
ジェフリー・ディーヴァー  文春文庫

ここまでの作家となると、図書館にも古本屋にも出回っているわけなので、いくら文庫フリークであっても、新本を買ってまで…ではないのです。
だからといって、昭和作家のレア本ならいざ知らず、焼けて臭うほどとなった茶色いページを繰りたくはない…

シリーズ二作目「コフィン・ダンサー」は、
図書館にて、美本状態文庫を獲得!

5年連用日記は、3年目が面白い。
ミステのシリーズものは、2作目が面白い。我が法則です。


ライムの大好物である微細証拠物件、ふふふ、既に心の中では主な登場人物欄の先頭に置いてあります。

その分析描写シーンには、ははは、全く頭脳がついていけないのだけれども、そこはサビの効きまくった挿入曲のように「感じる」だけで良いのだと学習済み。

シリーズのレギュラー陣、アメリア・サックス、ロン・セリットー、ジェリー・バンクス、ローランド・ベル、メル・クーパー、フレッド・デルレイ、トム、…皆すでに顔見知りとして血を通わせ、「待ってました!」の声援を送れるのも2作目ならではの醍醐味です。

更に中心であるリンカーン・ライムときた日には、…そして、これはまだ誰にも打ち明けていないが、彼の知性はこの上なくセクシーに思えた…(本文より)
ですよ。
究極の障害者であるリンカーン・ライムが、超障害者として、相棒アメリア・サックスを魅了していく各種段階は、読者にとっても恋の疑似体験


中身にも期待大となってしまう2作目ですが、
はい、
徹夜本 でした。
最後まで犯人の見えなかった一作目と違い、犯人コフィン・ダンサーの心象風景が、時には人との交わりが、ものがたりに奥行きをもたらします。(特に、ホームレスのジョーディとの会話シーンは、読後に読み返せば、なおさらに美しく哀しすぎるシーンです…)

被害者側のパーシー(女性パイロット)のキャラクターや事情も、ものがたりを確かなものにし、何よりもリンカーンとの絡みによって、リンカーンに血が通います、もうドバドバと。
下巻165頁「…私が生きていられるのは、機械のおかげ」また笑う「あなたとどこが違うの?」 名言です。

「コフィン・ダンサー」の魅力を一言で言うならば、
マトリョーシカ?
特に下巻後半で、バンバンと入れ子が飛び出してくるドライブ感は圧巻。
緻密な多層構造が、みごとに一体に収まったマトリョーシカ・ミステりーです。
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コピーフェイス ~消された私~

2016年11月09日 | ミステ棚
サンドラ・ブラウン  新潮文庫

新潮文庫マジ~ック!
サンドラ・ブラウン、名前は知ってます。
けど、これが新潮文庫の、しかも今月の新刊でなかったら手に取らなかったであろう作家だなあー

いやー、新潮文庫マジックですよ。
何がマジックかというと、
トロリとしたページのテクスチャーを、めくるごとに味わいたいの…
他社文庫の追随を許さない、うっとりするほどの、シルクのような紙質よ… 嗚呼!
それを時には、500頁超えで徹底的に味わいたいのです。
そこに現れたる本書は、堂々の792頁(あとがき含)。
頁を繰る快感重視ときたならば、ザックザク読めるジャンルのもの、ラブ・サスペンスなんてドンピシャです。

落ち目のTVリポーターりエイブリーが乗った飛行機が墜落炎上!奇跡的に助かったエイブリーだが、片目を残して包帯だらけ、会話もできない瀕死の状態で、気づいた時には上院議員候補テート・ラトリッジの妻キャロルに間違えられ、最高の美容外科手術で“キャロル”となる。取り違えを告白しようにも、テートの命が狙われていることを知ってしまい、あまつさえテートを愛し始めてしまうエイブリー。家族の中にいるはずの「犯人」は誰なのか?上院議員選挙の最終日に予告されたテート殺しは防げるのか?そして、エイブリーは“キャロル”であり続けるのか?…

ないわー (*´Д`)
愛する紙質を繰る楽しみがなければ、無理だわー

翻訳がしょもないのか、そもそも原作がそうなのか、
登場人物の会話がボキャ貧。
「ちぇっ」
「ちきしょう」
「くそっ!」
「はあ?」
「あ、そお」
「ふん」
…正の字で数えるぞ、こら。

ラブ・サスペンス?…あられもないポルノシーンが無駄に連発されて、ラブにまで昇華できてないぞー
サスペンスの女王メアリ・H・クラークを目指せとは言わないけれど、ロマンティックが足りませぬ。

そしてサスペンス部分ですが、
取り違え? いやいやいやいや、テートさんよ、フツー、気が付くでしょ!?
そんな洞察力もないヤツが上院議員でいいのか。
事故前にずっと仲の悪い状態だったからとか、苦しい言い訳…

最後の最後に犯人が判明してからも、
「え?じゃあ、ツジツマ合わないんじゃない?!」と疑惑は増すばかり。そもそも、コイツったら、殺してから逃れる気がなかったって事なのか?そんな心情にまで至る前段はどうなってる?
興奮するほどツッコミどころ満載で、うっかりすると直ちにもう一回読んでしまいそうになるほどです(笑)

そして、力技のハッピーエンドに大爆笑。。。


明後日からスタートするNHKドラマ10の原作です。
さてさて、こんな話をいったいどこまで料理できるやら…
全然見る気がなかったのに、原作読んだら逆に見逃せなくなってきた。興味というより、嫌味でね。

そういや今日はアメリカ大統領選。
こんな低レベルの競争が?と思っていたけど、上院議員をネタでこの程度なら、あるんでしょう、こんなんが。アメリカ。
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傷だらけのカミーユ

2016年10月28日 | ミステ棚
ピエール・ルメートル  文春文庫

カミーユ警部シリーズの完結編とな。

『その女アレックス』では、ミステリーにまだこんな可能性があったとは!と感嘆し、
『悲しみのイレーヌ』では、必要以上にエグすぎる暴力に辟易し、
そして本作。

『その女アレックス』としか言いようのない一作目、
『悲しみのイレーヌ』のタイトル通りだった二作目、
ときたら、
そうか今回、
身長145cmの愛しきカミーユ警部は傷だらけなのね。

しかし、もともと既に傷だらけのカミーユじゃないか。
どうそれ以上に傷つくというのか。
うーむ。
読む前から救いがないぞ。

案の定、『傷だらけのカミーユ』な展開。
ならば、これにて完結編になんぞしてくれるな~!
どん底まで傷ついたカミーユが、
どん底ならではの人間力で事件に向き合い、
今度こそ、今度こそはなにがしかの「救い」が見えるような、
そんなもう一篇を最終章として欲しい…
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熊と踊れ 上・下

2016年10月26日 | ミステ棚
アンデシュ・ルースルンド&ステファン・トゥンベリ  ハヤカワ文庫

一冊560頁超えで上下巻…
いやもう体力を考えてしまいます、最近は。

しかし、「ハヤカワミステリ文庫創刊40周年記念作品」とな。
そして、「熊と踊れ」、このタイトルに魅かれます。

しかし、しかし、一冊1000円(税別)で上下巻…
こう高額だと、食指が動くにはもうひとつ決め手が欲しいんだな~

となると、訳者あとがきor解説…
「暴力と真正面から対峙し、小説を通じて問いかけ続けている作家がいる。それが本書の著者の一人、アンデシュ・ルースルンドだ…」
帯にもあった、「暴力」の文字。
ただのサスペンスにとどまらない予感が高まります。
「…1991年から93年にかけて、スウェーデンでは本物の軍人ギャングが現れた(中略)つまり本作は事実を元にしたフィクションで、しかもトゥンベリは強盗団と血の繋がった兄弟なのである…」
まじか。
解説、じっくり二度読み(立ち読み)してしまいましたよ。

結果、買ったわけで、
そしてこのぶ厚さにも関わらず積読にせずに読み始め、読了。

根底に流れる「暴力」というテーマは、
昨今の、精神異常的、わけの分からない理不尽なタイプの暴力ではなく、
「愛」だったはずの何かと背中合わせになっているうちに、ふと歪んでしまった結果としての暴力、とでもいいましょうか。
「愛」だからとてエクスキューズできるものではないけれど、
「悲惨」「陰惨」という言葉よりは、
「哀しみ」だけが浮かんでくる、そんな読中・読後。

ミステリというよりは、「家族」ジャンルに収納します。
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彼女が家に帰るまで

2016年09月16日 | ミステ棚
ローリー・ロイ  集英社文庫

帯には「家族サスペンス」と。
その上、「撲殺された黒人女性」「行方不明の白人女性」「二つの事件に蝕まれた人々」と。

しかしヨンデにとっては二冊目のローリー・ロイ
帯は帯として、嘘ではないけど帯広告。
この作家に関しては、『ものがたり』として読み進むべきと学習済みです。

1958年 デトロイト。
マリーナ(主婦)が疑う夫の行状とは…
ジュリア(主婦)が乗り越えられずにいる過去とは…
身重のグレース(主婦)が隠し通そうとする悲劇とは…
エリザベス(近所の少女)はどこに消えたのか…

殺人事件、行方不明、売春、レイプ、街を闊歩し始める黒人たち、、、緊張が最大限に達したとき、女たちの事情と思いが渦巻きだす。


この度も、「ベント・ロード」同様に、
メインの事件は意外な結末を迎えます。

いや、意外じゃないな
想定はしてしまっていた。
あってほしくない想定だったけど。

そして、「ベント・ロード」同様に、
それぞれの事情と思いは、たくさんの宿題を読者の胸に残して幕を閉じます。
「そんなに何もかも、持って来られても…」と戸惑った「ベント・ロード」でしたが、
今回はその「なにもかも感」を、この作家のとして堪能したのでした。



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