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歌舞伎見物のお供

歌舞伎、文楽の諸作品の解説です。これ読んで見に行けば、どなたでも混乱なく見られる、はず、です。

「沓手鳥孤城落月」 ほととぎす こじょうのらくげつ

2008年02月03日 | 歌舞伎


坪内逍遥先生がお書きになったものです。「新作歌舞伎」ですが、明治のものですからわりと古いです。
そして5代目歌右衛門の当たり役だったので彼のために書かれたような気がしますが、初演は11代目片岡仁左衛門です。って細かい。

で、内容
新作らしく史実をそのまま書きますよ。大阪城が家康に攻められて落城する、まさにその瞬間が舞台です。
北条と源頼家に置き換えたりしないですよ。

新作だからそんなにややこしくないですが、初演時は前半もっと長かったので設定が少しわかりにくいかも。
一応説明書きます。

・淀君
秀吉の奥さん、秀吉が死んだあとはまだ若い秀頼にかわって大阪方を取り仕切っています。ていうか仕切りすぎ。

・秀頼
息子さん、まだ若いです。とはいえ母親思いでしっかりした、なかなかいい役に書かれていますよ。
前、菊之助くんで見たんだよな。すごくよかったです。
・千姫
秀頼の奥さん、ていうか家康の娘。

まあこのへんは歴史でならったよね。数年おきに大河ドラマでもやるし。
というわけで、家康、全滅寸前の大阪城の中からうまいこと千姫を救出します。
怒り狂う淀君、そして関白であった夫が作った大阪城の落城という現実を受け入れられずに錯乱していきます。
という錯乱ぶりが見せ場です。
ただ錯乱するだけならそのへんの女優さんでもなんとかなりそうですが、「関白秀吉の妻」としての位取りは崩せません。
そのへんの、りっぱで、品があって、女性としても魅力的で、しかも錯乱している。疑心暗鬼でみんなに当たりちらすけどイヤな女じゃない、
というあたりがたいへん難しく、新作ながら女形(おんながたと読むのよ毎回書くけど)の中で大役にカテゴライズされる理由です。

あとは、大野修理之亮というヒトと氏家内膳というヒト。家来です。大野さんは家康とこっそり連絡を取って降伏の道をさぐっています。
氏家さんは強硬派です。いさぎよく自害しましょうと淀君に勧めますが、淀君錯乱しているので聞いてませんよ。とか、そういう人間モヨウが描かれます。

そして正気を失った母親を守るために、秀頼、涙をのんで降伏するのでした。

他に見せ場としては、出だし、大阪がたの若武者が大勢を相手に孤軍奮闘するところがかっこいいです。
裸なので俗に「裸武者」と呼ばれるオイシイ役ですが、階段から落ちるので命がけですよ。
こういう、奥座敷で浄瑠璃に乗って武将さんが延々と根回ししたりせずにイキナリ戦闘シーンがテンポよくはじまるところが、新作らしいなと思います。今日びのお客さんには向いてますよね。
こんなのばっかりだったらまたつまんないけど。

初演時の主役は、現行上演出て来ない片桐且元でした。
家康との講和と千姫救出のために心を砕きながらいろいろジャマが入ってうまくいかず、ボロボロになる大変な役です。
これと、どんどん壊れていく淀君とが対比的に描かれたのです。
初演の仁左衛門はこの二役を早変わりで演じました。

あと、淀君中心の現行上演になってからも、ちょっと前まで前に「御殿」が付きました。
家康の間者が千姫を連れ出そうとして失敗、斬られます。淀君激怒、千姫や周囲のお局をガンガン苛めますよ。そこまでしますかあなた。
というシーンがあって、で、合戦→狂乱→降伏 です。
このほうが気持ちの盛り上がりはわかりやすいですが、似たシーンを2回見ることになるのでよっぽどの役者さんじゃないと見る側がつらいですね。

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