つれづれ日記(或いは日々雑感)

40代前半、人と少し違った道を行く筆者の、日常の雑感を綴ります

壁と卵

2009-03-01 06:06:09 | 時事
まだまだ気ぜわしいんだけど、旬の話題なので、ちょっとだけ。

表題を見て、あああのことか、と思われた方も多いと思う(誰?)。
先日、イスラエルで文学賞を受賞された、村上春樹さんの、その受賞記念講演での
発言だ。

詳しい経緯は省く(というか)が、要は、氏はイスラエルでも高い評価を受けており、
今回、イスラエルで最高の文学賞を受賞された。
(というか、海外でも全般に評価が高いらしい。)
ご存知のように、イスラエルは、アメリカの新大統領(オバマ氏)の就任直前に、
ガザ(パレスチナ解放自治区)に侵攻、主に市民から成る1000人余の犠牲者を出した。
(米大統領就任までに一方的に停戦宣言をした。)

氏は、その文学賞受賞にあたり、大阪の市民団体などから、受賞辞退の薦め(というか)
を受けたそうだ。
(受賞すれば、ガザ侵攻を肯定することになるとして。受賞した場合、不買運動を
するかもしれないとの脅迫(?)というか発言も受けたらしい。)

氏は、それでも受賞した。そして、受賞記念講演で、イスラエルのど真ん中で、
イスラエル人に対して、こう講演した。
「今回、受賞を辞退するよう薦められ、拒否すれば不買運動も辞さないとの言葉も
言われた。
しかし私は文学者で、ひねくれものなので、こうして来た。
来ないで黙っているより、とにかく実際に来て、発言をする方が良いと思ったので。」
そして続けて。
「強固な壁と、それに当たって壊れる弱い卵があるのなら、いかに壁が正しかろうと、
 私は常に、卵の側に立つ。」
と発言されたそうだ。
無論、壁はイスラエル政府のガザ侵攻、卵はガザの市民を喩えたものだ。
勿論、明確にそうは言わなかったが。“壁”は、システムを表すものとも言ったらしい。
イスラエルで、名誉ある文学賞の受賞講演と言う、極めて公式な色彩の強い席でだ。
そこで、ガザ侵攻批判だ。凄いと思う。

村上春樹という人を、一般に皆さんがどう思っているかは判らない。
私は、あまりこれまで関心を持っていなかった。
(失礼な話だが、流行りの軽い文体を特徴とする、風俗作家に毛の生えたような
ものかという印象しかなかった。実際は、読みやすい文体と難解な内容を特徴とする、
現代文学の代表という感じのような方のようだ。)

しかしこれを聞いて、時間があれば、作品を読んで見たいと思った。
だって、言っていること、行動がとても共感でき、とてつもなく勇気の要ることだからだ。
加えて、いかにも骨太な文学者(私の(というか一般の人が)イメージする)が
しそうな(して欲しい)発言であるからだ。
ちょっとひねくれてて、アイロニーに富んでいて、文学者だから力はないが、
その立場から、世の中に警告を発している。で、それが効果的。
おそらく本人に聞いても、何だかんだとまともな褒め言葉を、揚げ足を取るような
形で否定するだろうな、と想像できたりする。でも、本心“弱い者”を思う心はある。
(ご本人は、そんな大げさなこと、と否定される可能性が強いが。)

なんかいい話を聞いたので、とりあえず。

この他にも、日本映画がアカデミーを2つ取った(「おくりびと」と「つみきのいえ」)
とか、書きたいこといろいろあるが、忙しいのでまた後日(こればっかり)。

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