goo blog サービス終了のお知らせ 

gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

金沢 ひがし茶屋街 床の間の意匠

2011-06-09 | アート・文化

和室の床の間の意匠は、調べれば調べるほど、

気にして見れば見るほど、

すごく遊び心がある空間です。

わずか畳1帖ないし2帖の空間に、意匠を凝らしています。

そんな中でも、金沢ひがし茶屋街にある、重要文化財建築「志摩」の床の間は

惹かれるものがあります。

110608_5 (正面)

もう、、、感動的です。

入り隅の扱いだけで、

この床の間は、普通にみえて普通でない空気感を醸し出しています。

詳しく見ていきましょう。

110608_4 (正面向かって左)

入り隅は、木を斜めに配し、角をなくしつつも、

土壁との色彩および素材の違いによりアクセントにしています。

木の配置が斜めなことで、この隅は凛とした感じと柔らかさを両立しています。

110608_6 (正面向かって右)

すばらしい。。。

左の入り隅とは違い、木を入れずに、側面と正面の壁はR面でつながっています。

寸法はR50mm程度でしょう。絶妙です。

左右の入り隅を、“角をなくす”という点で共通しながら、

その納まりを変えることで、この床の間の全体感は成立しているのだと思います。

では、ディテールのアップを見てみましょう。

110608_7_3  (左入り隅上)

110608_3 (左入り隅下)

幅木分、色を変えているところも細かい配慮です。

しかも寄せを入れていないことでモダンさも併せ持つ。

110608_2 (右入り隅上)

110608 (右入り隅下)

このR面、実は難しいのです。

このR面を造るには、まず道具(コテ)を造らないといけません。

そして、コーナーと隣り合う平面で コテを扱う強さが違うと、

平面とコーナーの間に筋が見えてしまいます。

この床の間の意匠を考えた人は、

これ見よがしではないが、技量のお披露目の場として

この床の間に注力したと思います。

なぜそんな風に思うのか...

金沢に行って初めて「志摩」の床の間を見たのは4月27日。。。

下の写真の物件が竣工したのは2月。。。

1106082_2_2 (入り隅上)

1106082_4 (入り隅下)

1106082_5 (出隅1 R面)

P31641101_3 (出隅2 5分面取り)

いろいろ試行錯誤の結果、

江戸時代の人と、ほぼ同じことを考えたことになる。

「志摩」の意匠を見たときは、

あー、先にやられた。。。というよりむしろ嬉しかった瞬間でした。

これがあったので、入り隅のR50mmのフィット感も、

幅木部分の色を違えた理由も理解できる。

たぶん、江戸時代の職人も試行錯誤したんだと思います。

 


飛騨の曲木職人

2011-05-10 | アート・文化

飛騨の家具工場は、第2次世界大戦の軍事用工場として

当時の政府施策により、発展してきたという歴史があります。

その後、民生化とともに、家具の技術も磨かれていきました。


「曲木」という技法があります。


木を曲げて椅子の部材にする工法です。

この技法は、日本では飛騨高山と秋田県が有名ですが、

低価格化競争のなかで、なかなかこの「曲木」という技術のうちでも、

より高度なノウハウを生かせる場面も減っています。

Photo

飛騨曲木民芸家具の中村さんは、飛騨曲木の職人であり研究者として、

この技術の発展に大きな貢献をされてきました。

現在は、高齢のため注文のみに応じる生産を行っています。

Nod_2 (曲木機械※特注)

中村さんの工房「飛騨曲木民芸家具」は

時々、家具系や旅行系の出版物などで紹介されています。

この前は日産のネット上のドライブマガジン?の取材が来ていました。

Photo_2 (手加工の道具)

機械にできることと、機械にできないこと。

3

一般的なボール旋盤などの機械を使って、

それに組み合わせる工具を自作して、製造しています。

中村さんはいろいろ解説してくれるのですが、はっきり言って理解不能。。。

中村さんの頭の中でいろんな数式がカタチを結んでいっているのでしょう。

4

出てくる加工物は、現在主流のNC機顔負け。。。

「木材は同じ種類でも1つ1つ性格が違う。削りながら力の入れ具合を加減しなかん」

「NC機はすごい機械で、積極的に使う方がいい。

でも堅さや癖など、木の1つ1つの性格まではまだよう判断しないから、失敗もある。

最終的には人の手が必要やな~」

「もう70歳を過ぎて、あと何年できるやろうかな~

受け継いでくれそうな人もいないし、

そう簡単なものでもないし、売れるかと言ったらそうでもないでな~、ハハ...」

元気な姿ながら、ちょっとこぼす中村さんです。


縁側

2011-05-08 | アート・文化

日本独特の建築空間といえば、

        
                        「縁側」


建築設計の分野では、

〝外と内をつなぐ、あいまいな中間領域〟というように説明されます。

P4275623 (中間領域)

金沢 ひがし茶屋街にある重要文化財建築 「志摩」。

ここにも多様な縁側空間がありました。

1,2階共に、中庭に面して。

P4275646 (内と外のつながり)

浴衣で夕涼みなんかしたら、絵になるだろうな~と思います。

P4275654(光景が浮かぶ)

手摺の意匠も、品の良い遊び心があります。

P4275690 (手摺の意匠)

江戸時代、今と比べれば社会的にも、また技術も制約が多かっただろう時代。

それだからこそ、、かもしれませんが、

これほどまでの豊かな造形が生まれたことには感嘆せざるえません。

031 (住宅設計提案より)


金沢 ひがし茶屋街 格子の町並み

2011-04-29 | アート・文化

先日行ってきた金沢では、

伝統的な茶屋街を保存整備している、ひがし茶屋街にも行ってきました。

ひがし茶屋街は江戸時代藩政期から栄えたお茶屋を集めて町割りした町並み。

木虫籠とよばれる木格子の意匠が特徴的です。

この格子のデザインは飛騨格子とは異なる意匠で、文化の違いを感じました。

京都とも印象が違いますね。

110429_3 (ひがし茶屋街)

110429_3 (格子の意匠)

多くの建物は木の自然な色だったのですが、一番いい位置に建つ1つの建物だけは

全体がベンガラに塗られていました。なぜだろう?

110429_2_2 (建物意匠)

妻壁の鎧張りの壁の押し縁間隔も飛騨とはちがう。

でも、 なにより特徴的なのは、2階の建具。

110429_4_2 (床まである建具)

2階の縁側(回廊)のこのような造りは、

京都の東山界隈にもありますが、

雨戸兼用のようなガラス面の少ない意匠は、ここの特徴のようです。

しかも京都の場合は、後白河院のように庭園内に建つ楼閣ですが、

ここは、通りに面して同じ立面構成、同じスケールの建物が軒を連ねる。

通り全体として、優雅な感じがします。

110429_5 (1階と2階の対比)

1階は線、2階は面を基本とした対比のデザインがきれいです。

その間にある庇も、各建物で意匠を凝らしています。

また、基礎部分の意匠も細かい。

土台と柱の接合部の金物。

柱位置に目地を取った基礎の意匠。

110429_6 (格子拡大)

格子間隔は飛騨格子より大きいが下から上まで同じ。

看板もおしゃれ。

110429_7 (横桟のディティール)

これは、経年変化によって分かりやすくなってますが、

よーく見ると、横桟の中央部はわずかにR状に削られています。

竪格子と横桟の接合部に水が溜って腐らないように配慮してあるのかも。

すごい。。。

110429_8_2 (夜景)

夜になると、1階の格子が不思議な半透明のような効果を生み出しています。

不思議。

2階の建具は、日中の垂直性に対して、窓明かりの水平性が強調される。

明かりによって、昼と夜とで異なる表情を生み出す。

ただただ秀逸―。

ひがし茶屋街は、国の重要伝統的建造物保存地区に選定されています。


フランソワーズ・モレシャン講演 in 金沢

2011-04-28 | アート・文化

4/27 金沢の兼六園近くのホテルで

フランソワーズ・モレシャンさんの講演会があり聴講してきました。


フランス人・女性

パリ・ソルボンヌ大学東洋美術系学科卒業後、

1958年来日

肩書きはファッションエッセイストですが、

ファッション、文化、インテリア全般におけるアドバイザーとしても活躍。

金沢21世紀美術館の立ち上げにも関わるなど活躍の場は公共、民間に限らず。


講演では、具体例の紹介もありましたが、

物事の捉え方、対し方の根本となる“姿勢”に関するものや

そこから派生するキーワードを上手に話されました。

聴講の方は、インテリアコーディネーターの方々ですが、

カーテンメーカー、クロスメーカーなどの“部分”を扱う方も多く、

そのような方には、講演全体の80%を占めた「文化比較論・精神論」のような内容は

現実の仕事や体験から距離があり難しかったかも。

でも、本当に金沢まで行ってよかった!と思える内容でした。

それは、

  自分なりに言葉にし、形にしてきたコトを

  異文化(フランス)の方の言葉に照らし、客観的に見る視座を得た。

  また、今後、その視座からの客観的検証ができる。

から。


・・・書くと難しいですね。はい大体、端的に言うには難しくなります。

簡単、やさしいということは、

分かりやすくすると同時にそのためにエッセンスをそぎ落とすことですから。



例のごとく、キーワードの列記ー。

・“モノの置き方”が重要

・大陸(フランス)と島(日本)の違いはDNAレベルで歴然としている

・360°の状態を知る

・プロフェッショナルな背骨

・日常のグレード(小さいときからどのような環境で育ち、接してきたか)

・Family

・美しさ、バランス=最上の先生は自然

・オーガニック(自然素材)

・日本文化の中心の美意識

・嵐のとき(最もシビアな時)に自分の根っこ(DNA)が物をいう

・人間は、フランス人であろうと日本人であろうと、

 どこかで共通するものがあると思っていた。が!今は違う。

 根本(DNA)で違うのです。

・フランス人 クリスチャン、プロテスタント、カトリック →キリスト→平等、ヨコ社会

・日本人  東洋、中国→儒教→孔子→タテ社会

・プロポーションとバランス

・(着物の)帯のサイズには意味がある。それをデザインと称してカットしては無意味。

 本物ではなくなる。

・空間とモノのスケールバランス

・深み、プロポーション、色の組み合わせ...そして ストーリー!

・美と便利は相反することが多い

いい意味での“普段”であること

・ブーツ、椅子、しぐさ→ストーリー→ 美 (便利だけど美しい)

・椅子+ランプ →存在のイメージ

“間”の重要性 (絵もファッションもインテリアも人間も呼吸も...)

・壁と家具の間に空間をつくる

・家具~間(呼吸)~家具~間(呼吸)...

呼吸!

Stance of mind ~魂(心)の置き方~

・自分の文化を生かす(Stance of mind)ことは義務

・文化的な右翼はいい

・人間ぽさ

・和家具とメキシコの民芸 ~~ “民芸”という共通点、統一感

・昔のものと今のものの共通点、統一感

基本を押さえた上で、くずす

・色を(抑える方へ)制御する。2色

・オフホワイト(空間、カーテン)とダークカラー(家具)

・モネ・・・ブルー、ホワイト、イエロー

素材の統一感、色の統一感

・白木にくるみのからのしぼり汁を塗る。それは言わないと分からない隠し味―。

・コンセンサス

110428 (金沢ひがし廓 志摩)

110428_2 (同上 縁側)

3t5z4997 (M-Villa)

http://www3.ocn.ne.jp/~ydo/CCP004.html

霞のようなもの