和室の床の間の意匠は、調べれば調べるほど、
気にして見れば見るほど、
すごく遊び心がある空間です。
わずか畳1帖ないし2帖の空間に、意匠を凝らしています。
そんな中でも、金沢ひがし茶屋街にある、重要文化財建築「志摩」の床の間は
惹かれるものがあります。
もう、、、感動的です。
入り隅の扱いだけで、
この床の間は、普通にみえて普通でない空気感を醸し出しています。
詳しく見ていきましょう。
入り隅は、木を斜めに配し、角をなくしつつも、
土壁との色彩および素材の違いによりアクセントにしています。
木の配置が斜めなことで、この隅は凛とした感じと柔らかさを両立しています。
すばらしい。。。
左の入り隅とは違い、木を入れずに、側面と正面の壁はR面でつながっています。
寸法はR50mm程度でしょう。絶妙です。
左右の入り隅を、“角をなくす”という点で共通しながら、
その納まりを変えることで、この床の間の全体感は成立しているのだと思います。
では、ディテールのアップを見てみましょう。
幅木分、色を変えているところも細かい配慮です。
しかも寄せを入れていないことでモダンさも併せ持つ。
このR面、実は難しいのです。
このR面を造るには、まず道具(コテ)を造らないといけません。
そして、コーナーと隣り合う平面で コテを扱う強さが違うと、
平面とコーナーの間に筋が見えてしまいます。
この床の間の意匠を考えた人は、
これ見よがしではないが、技量のお披露目の場として
この床の間に注力したと思います。
なぜそんな風に思うのか...
金沢に行って初めて「志摩」の床の間を見たのは4月27日。。。
下の写真の物件が竣工したのは2月。。。
いろいろ試行錯誤の結果、
江戸時代の人と、ほぼ同じことを考えたことになる。
「志摩」の意匠を見たときは、
あー、先にやられた。。。というよりむしろ嬉しかった瞬間でした。
これがあったので、入り隅のR50mmのフィット感も、
幅木部分の色を違えた理由も理解できる。
たぶん、江戸時代の職人も試行錯誤したんだと思います。