シリーズのようになってますが、GW前に行った金沢話題を再び。
「黄金の蔵」の話題で紹介した箔屋は、
店員さんのお話によると、もともとはお茶屋だったそうです。
箔屋が買い取る前は、おばあさんが一人で住んでみえたとのこと。
木庇や外壁は、改装にあたり整備されたのだろうと思いますが、
以前からある、長い年月をかけて熟成された庭と調和しています。
2階の建具も改修したと思いますが、本当になじんでいます。
デザインや設計というと、
何かをしなければ、なにかハッとすることをやらないと...
となるのは、経済原理の中では仕方がない面もあります。
丁寧に、庭や建物がうまく時を積み重ねるように、
そして、時代の用に合うよう調整していくこと
何もしていないかのようで、実はやっているー。
気にとめないと、気付かないようなデザインや設計というのもある。
人が住まなくなった民家は、ものすごい速さで朽ちていくことは、
比較的よく知られていると思います。
人の手によって作られたものや環境が、うまく時を重ねるには、
実は人の手が必要ということ。
http://www3.ocn.ne.jp/~ydo/99_blank001.html
自然に加えてもらうように―。
ここで行われた建築設計とランドスケープデザインは、
カタチを作るという意識より、環境を整えるという意識がベースにあります。
例えば庭は、
ほぼ建設前の雑木林の姿をしていますが、実は人の手が入っています。
建築工事で荒れてしまった植生が、数年かけて元に戻るための手助けをするー。
時の連続性を修復する。
これもデザインであり、設計。
古い民家を大切に維持することもまた、デザインと言えるのかもしれません。
GWも後半にはいり、高山の観光スポットも、にぎわっていました。
桜も、例年ならもう花は散っているのですが、今年は、まだ咲いています。
この、宮川と背後の城山の風景は、江戸時代からずっと変わらないのでしょう。。。
先日、金沢へ行ってきたときには、
金沢の江戸時代当時の町並みを残す、ひがし茶屋街を訪れました。
金沢やその周辺には、九谷焼や輪島塗といった伝統工芸があり
金もよくつかわれます。
一方、神社でも屋根瓦の頂部に金の飾りが見受けられます。
箔屋は、そのような伝統を受け継ぎつつ、現代の生活にマッチするよう、
その伝統技法をアップデートした工芸品の販売を手掛けています。
写真は、その技術を生かした黄金の蔵。
プラチナを配合してあり、外部での使用でも劣化しないそうです。
すごいですね。
この蔵の、内部の黄金の壁を手掛けたのは、
飛騨高山の左官職人 挾土秀平さん。
アトリエにお邪魔したこともありますが、
そのセンスと高い技術の融合から生まれる仕事は、本当にすばらしいです。
そんな挾土さんですら、
今は、なかなかその腕を振るう機会が少ないと聞きます。
伝統の継承とその発展のためにも、
職人技が発揮できる場を少しでも作りたいし、紹介していきたいと思います。
・・・というわけで、
以前も紹介しましたが、
飛騨高山まちの博物館が4月からオープンしています。
ここの白い漆喰壁や蔵戸を手掛けたのは、挾土秀平さん率いる秀平組。
真っ白で、ただ大きいだけの壁と思われるかもしれませんが、実はこれがとても難しい。
「漆喰」という材料は、凹凸がなく、とても塗厚が薄いのです。
技術がないと、壁の下塗りの凹凸が目立ってきれいに仕上がらない。
吹付仕上の材料に比べ、ごまかしがきかないのです。
しかも普通、蔵でもこんなに大きい面は無いですから、これは稀なケース。
シンプルなことは一見簡単なようですし、
ローコスト住宅では、本当は単にコスト削っているだけ(本当は後々問題)なのに
シンプルモダンとか、かっこいいこと言って適当にしているものもある。
が、漆喰壁のように、
真にシンプルにやろうとすると、そこには高度な職人技が必要になるものです。
この蔵戸も秀平組。
飛騨高山まちの博物館では、
展示だけでなく、このような職人技にも触れることができます。
和紙の魅力―。
同じ白でも、その素材感の柔らかさは独特のものだと思います。
水落とし、重ね、透かし・・・などなど、よく見かける障子紙のような均一なもの以外に、いろんな手法がある和紙。
タイやカンボジアなど、アジアの国々にも独特の手漉き紙があるようです。
手漉き和紙職人には、人間国宝の方もみえます。
越前和紙を漉いてみえます。私も1枚持っていますが・・・
ゴメンナサイ、正直なにが違うのかあまり分かりません(笑)。
それほどシンプルな紙なのものですから。
建築にはどのように利用できるのでしょう?
今制作中の照明のほかに、
ガラスと組み合わせて水回りに使うこともできます。
プライベート浴室と寝室の間の壁に、和紙をサンドイッチしたガラスを嵌めました。
浴室あるいは、寝室の明かりがやさしく透過します。
写真のものは、美濃和紙です。拡大すると分かるのですが、はっきりとした模様ですが、細かい繊維が産毛のように出ているため、すごくやさしい印象になっています。
和紙といえども、ガラスに挟むとその独特の素材感がスポイルされがちなのですが、この紙はすごい。素材感がそのまま保たれています。
女性の部屋らしい、やさしくもエレガントな雰囲気を醸し出すのに一役買ってくれました。
この和紙は、保木工房の保木さんと松浦さんが漉いています。
保木工房は、天然コウゾにこだわり、伝統の道具を使いながら、新しいことにチャレンジしている美濃和紙の工房です。
保木工房 ↓
http://www.hokikobo.biz/index.html
和紙に限らず、いろいろな伝統工芸を、住まいの中に取り入れる提案ができればいいなと、思っています。