私が大学に通っていたころの実話です。法学部に在籍していた私はある日の授業で裁判を実際に傍聴するケースがありました。裁判シーンはテレビや小説の中でしか経験がありませんでしたので、実際の裁判が傍聴できるということでウキウキしながら見に行きました。
しかし裁判の内容自体は大事件でも有名な事件でもなく、複雑でもない余りにもショボい事件でした。事件の概要としてはチンピラ風の男が警官に職務質問され、質問中に突然警官を殴り逃走した事件とのことでした。逃走した理由として裏に大きな事件などが潜んでいるのかと期待しましたがそれも無く、結局警官の態度に腹を立てたそのチンピラが職務質問を拒否し警察に同行させられそうになったための犯行だったようです。
罪状は公務執行妨害で争点も特にない、これと言って面白い事件の裁判ではありませんでした。ただこの裁判が興味深かったのは事件や被告そのものではなく、それ以外の関係者への気づきでした。
まず被告はいかにもチンピラですと言わんばかりに入廷時の態度が悪く、虚勢を張った小者というテレビでもよく見かけるチンピラを地でいったような男の入廷でした。また、その男に小指が無かったことでもチンピラの匂いがプンプンしました。ただ驚いたのは被告の弁護士もヤクザみたいな容貌だったことです。チンピラの弁護士もヤクザ関係者か?このヤメ検 弁護士も裁判でヘマをやったのか?と思わず思いました。
また、被告が入廷した時の傍聴席の様子に被告がビックリしたような顔をしたことです。ふだんの裁判の傍聴風景というと恐らく身内だけの傍聴なのでしょう。そう被告も予想していたところ、法学部生が数十人傍聴席に居並んでいたのでとても驚いたようです。
そして裁判が始まると少し笑いが止まりませんでした。事件のショボさからいつもの裁判は全く盛り上がらず粛々と進行していると予想されますが、この日は多くの法学生の傍聴がいたせいか、検事も弁護士も、そして被告もエキサイトしていた感がありました。
皆思いのほか声が張っており、裁判官も「おやおや、いつもと違うね」と言わんばかりの顔をしていました。そして一番感心したのは裁判長です。検事や弁護士が話している時はまるで寝ているように終始静かに目を閉じていて「この裁判長大丈夫か?」と思っていましたが、ポイントポイントで驚くような鋭い指摘や質問をするあたり流石だと思いました。
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