モグモグ隊 高雄遠征メンバー
(を):をきな(絶対的リーダー)
(や):やはぎ(特攻隊長兼撮影主任)
(し):シェリー(見習い隊員)
(に):にいや(永久幹事)
若干の胃もたれ的な違和感とともに起床。
我々の高雄の旅も最終日を迎えた。
南国の朝というものは、なぜこんなに緩やかなのだろうか。
昨夜街角にうごめいていた得体の知れない熱気は姿を潜め、すでに燦々と照りつける陽光の中、原付の排気音が響く大路小路は、けだるい空気に満ちている。
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安宿の朝。
各階に設けられているのかどうかわからないが、エレベーターを出たところには、掃除婦と管理人を兼ねたおばちゃんが居座る一角がある。
布団や冷蔵庫なども置かれているため、おそらくここで生活しているのだろうが、この日姿を見かけることはなかった。
この日の予定は、特になし。
昼すぎに日本へ帰る飛行機に乗るだけだ。
もちろん、最後の最後まで、いろいろなものを食べるということはすでに決まっている。
何となくメンバー全員が集まったので、宿からほど近い朝食屋に繰り出した。
店には明らかに付近の住民が席に着いている。先客にならって、適当に注文。
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焼き餃子やらソーセージ。
この適当な盛りつけが、朝のけだるさにマッチする。
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ニラが入った焼餅。
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ニラ饅頭。
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焼小籠包。
まだ昨日の山羊肉が居座っている胃袋には丁度いいボリューム。
食後だらだらと付近を散歩して、昼前に空港に向かうことにした。
ただ、そのまま空港に行ってもベンチを温めるばかりのため、付近を散歩。
すると、散策に丁度いい市場を発見。
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地元民度100%のローカル生鮮市場は、見ているだけで楽しい。
色とりどりの野菜や加工品、魚介類など、一度ガッツリ買い物をして、調理をしてみたいとも思うが、台湾に来てまでキッチンに立つ気概は、我々には毛頭ない。
ただ、見るだけ。
市場にはさまざまな匂いが充満しており、歩を進めるごとに胃腸も元気を取り戻し、いつしか空腹になっていた。
し「こういう散歩も楽しいですねー。海外にいるって感じがする」
に「特に何をしているわけでもない時間が本当の贅沢というもの」
を「っていうか、そろそろ腹が空いてきたんだが」
や「そうっすね。おい、にいや。空港に行く前にどこかで飯食おうぜ」
と自然な流れで、昼食が決定。
といっても、ローカル度満点のこのあたりは、さすがの僕もノーチェック。
どこの店がおいしいとか、さっぱりわからない。
市場を離れ、町をうろうろしていると、飲食店が並ぶ一角があった。
これまでの勘で、このエリアで選ぶしか選択肢はなさそうだった。
に「こういう町なので、おそらくこのあたりしか店がないと思います」
を「何があるのかね?」
に「看板を読むと、精進料理のブュッフェ、牛肉麺、七面鳥、ステーキも置いているカフェって感じでしょうか」
や「七面鳥?」
に「そう。台湾じゃ一般的に食べられてる。フライドチキンみたいに揚げるんじゃなくって、蒸した肉が麺とかご飯に乗っている感じだけど。鶏の胸肉みたいなさっぱりとした味かな」
を「ええやん!食べたことない!」
し「さっぱりっていうのがいいですね!」
ということで、全票獲得で七面鳥を喰らうことに。
ちなみに、台湾では七面鳥のことを「火鶏」と書く。麺の上に七面鳥がのれば、火鶏肉麺。ご飯の上に肉を乗せれば、火鶏肉飯だ。
連日のモグモグで胃腸の限界を迎え、何だか顔色が悪いシェリーもいるため、各々で注文。
リーダーは火鶏肉飯の小椀を、やはぎは火鶏肉麺を一椀、にいやは火鶏肉飯の大椀と青菜の炒めものを一皿、そしてシェリーは「みんなのものを少しいただきます」と拉致監禁されているくらいの勢いのなさでつぶやいた。
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にいやチョイスの青菜の炒めもの。
もちろんさっぱりとしていながらも、ニンニクがほどよく効いていておいしい。
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やはぎが注文した火鶏肉麺を。
塩ラーメンのようなあっさりスープは、当然火鶏のダシも効いている。
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リーダー&にいやが頼んだ火鶏肉飯。
この店では、どうやら米を火鶏ダシで炊いているようで、ご飯だけでも十分にうまい。
「なかなかいいダシやな、これ」と汁をすすりながらやはぎ。
に「この店にしてよかっ…」
と机を囲み会話を楽しんでいたところ、リーダーは無言で火鶏肉飯をガッツいていた。麻醤麺のときと同じような光景を想像していただきたい。
や「せっかくだから、一口食べてみ?」
し「ありがとうございます。あ、さっぱりでおいしい。塩ラーメンみたい」
や「滋養強壮によさげやね」
や「をきなさん、ご飯のほうの味はどうですか?」
を「……」
に「そんなにおいしい?」
を「…、あげへんで」
し「えっ?」
を「食べたかったら自分で頼みや。これは俺がいただく」
に「そこまで言うなんて、あんた……」
を「こんな普通の店までうまいなんて、台湾はやはりおそるべしや」
に「あ、あの…」
や「どうしたんや?」
に「すげー言いづらいんだけど」
し「?」
に「僕、火鶏肉飯の大を注文したんだけど、いまリーダーが食べているの、僕の前にある茶碗より明らかに大きいですよね?」
し「え…? あっ!」
を「……」
に「そっち、僕の頼んだやつじゃないかなって…」
を「……」
に「…僕が前払いでお金払いに行った時に、完全にすり替えましたよね?」
や「まじで…?」
を「油断大敵やな、ハッ」
に「一口自分のやつを食べて、そのおいしさに目がくらんで、まだ箸をつけていなかった僕の大椀とすり替えましたよね!」
を「いや、小さいの頼んでたやん。ごちそうさま。おいしいものは早い者勝ち、これはモグモグ隊の鉄則である」
し「おそるべし」
や「あんた、そこまでして…」
に「………。僕、…なんか、…そういえば、小さいの……頼んでいた……かも……」
し「…負けを認めた…」
モグモグ隊の絶対的ヒエラルキーが発動され、ランチが終了。
ここから空港まではほど近いため、タクシーで移動。
さんざん歩き、食べまくった高雄の旅も、いよいよ最後である。
高雄の空港に着き、チェックインをすませれば、あとは帰国するばかり。
ここまで何とかやってこれた4人の猛者は、余った台湾元を使い切るため、空港内のコンビニでビールを購入し、各自の奮闘に祝杯をあげることにした。
しかし、そこは我らモグモグ隊。
先ほど大椀を食べたかったのに、結局小椀しか食べられなかった僕は、ビールとともにコンビニで
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麻婆豆腐ご飯を購入。
レンチンの弁当だが、日本ではお目にかかれない辛さと旨味がうれしい。
それを見たリーダー、コンビニへと引き返し、
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沙茶醤という魚介系のペーストで炒めたヌードルを購入。
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ついでに、八角や茶葉で煮込んだ茶葉蛋も購入。
あんた、前回の旅でも最後にこれ食べてたよね?
結局、空港外に設けられたテーブルに陣取った我々の前には、台湾ビールとコンビニ飯が並んだのだった。
に「最後はリーダーからの一言で締めましょう」
を「はい、ということで、高雄の旅、おつかれさまでしたー。今回もたくさん食べたし…」
し「ちょ、ちょっと、」
や「どうした?」
し「あんたら、正気か? さっき七面鳥食ったよね? あれ、昼ご飯だったよね? なんですぐにコンビニ弁当食ってんの?」
に「いや、それは、ほら、あの店では少し量が足りなかったから…」
し「いや、もう本当にいい加減にしてくださいよ。ちょっともう付き合いきれない! 食べる食べるって聞いていたけど、これ正気じゃないよ! 正気の人が食べる量じゃないよ!」
を「シェリーよ、それがモグモグ隊の…」
し「ちょっと空港内を散歩してきます。時間までには戻ってくるので!」
と、急ぎ足で旅客の雑踏に消えていくシェリー。
テーブルには、愛想を尽かされた三人…。
を「ともあれ、冷めちゃうからいただこうか」
に「そうっすねー」
や「2つともおいしそうやなー、一口ちょーだい」
を・に「えー、どうしよっかなー?」
や「いけずすんなやー」
を「煮卵だけはあげないぞー」
こうして最後の最後まで台湾飯を堪能し、機上の人になったのだった。
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モグモグ隊、2回目の海外モグモグ。今回も2泊3日ではあったが、大満足の旅であった。
もちろんその満足度と比例するように体重も増加した(シェリーはなぜか痩せたらしい)。
そして、恒例の、この遠征で何が一番美味であったかの結果発表。
に「僕は、2日目の朝に食べた、年寄りが細々やってる屋台の朝食。家庭の味って感じで、毎日で
も食べられるやさしい味付けが台湾っぽいと思いましたよ」
を「いろんなもの食べたけど、やっぱりガチョウのうまさは相変わらずだったわ。俺はガチョウに一票。次に台湾来ることがあっても、絶対ガチョウは食べる!」
し「一番インパクトあったのは、山羊肉ですかねー。あのリゾットみたいな炒飯は最高でした」
や「わしも山羊肉やね。あれは何杯でもいけた」
ということで、多数決で、今回一番美味かったものは、羊肉炒飯に決定。
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モグモグ隊 高雄遠征 完
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