放浪日記

刮目せよ、我等が愚行を。

美しい国

2007年08月25日 | 社会復帰宣言
僕は大学を出て社会人になる前に、半年ほど、海外を旅行していた。
そのとき出会った旅人の一人と、僕は帰国してから再会した。

僕よりいくつか年上の彼は、会社を辞めて旅に出て、1年と少し、おもにアジアを巡って帰国したばかりだった。

会社員の僕の部屋にしばらくのあいだ居候状態だった彼は、僕と一緒に歩いているとき、ふと空を見上げて、こう言った。



「日本も、空がきれいなんだね」



チベットを巡り、聖地カイラス山をヒッチハイクで旅した彼の言葉が意外だった。
チベットの、あの吸い込まれるような蒼い空を見ていたはずなのに。
ネパールの透き通ったような青空を見上げていたはずなのに。

それでも、彼は、日本の空も綺麗だと言った。


正直、そのとき、僕は彼の意見に納得が出来なかった。
日本の空なんて、チベットに比べれば、なんてことないさ。そう思っていた。




2年半の旅を終え、僕は帰国した。
先日、岐阜の山奥のほうに行ってきて、そこで目にした緑。山々。用水を流れる水。茂った田の稲穂。そして、空。雲。

きれいだった。

それはたしかに、チベットの空よりは蒼くなく、モンゴルの草原で見た空よりも広くはない。
でも、それとは違う美しさをもっていた。

この空のもとで、僕は産まれ、育ってきた。
まぎれもない、いままでずっと見ていたけれど、いままでずっと気付いていなかった美しさが、そこにはあった。



海外に行って、視野が広くなったんじゃないの?とよく聞かれるが、そんなことはないと思う。
逆に、足元の、ほんのささいな景色を眺められる余裕を身につけたんだと思う。


うだるような猛暑が続いている。
そんななかでも、ふと周りの景色を落ちついて眺めると、そこには数え切れないほどの美しさが転がっていた。




僕は今、あらためて、日本を満喫している。


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5 コメント

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Unknown (四葉)
2007-08-25 08:22:29
海外旅行をして視野が広くなるというよりも、地に足着いた生活が出来るようになったんじゃないかな?

それと・・にいや~歳だよ  歳!

若いときは感じないことにワビやサビを感じる
確実に30代だな。
そのうち涙腺も弱くなるぞ
仲間に入れてあげるぅ
幸せ感。 (敬助)
2007-08-25 09:27:11
「外国旅」が与えてくれたモノ・・
小生も「ニイヤンの文章力はすごい」と感心させてもらった「美しい国」に一票を投ずるつもりです。

不満とはいわぬにしても、少なくても日本の大地や風に、さほどの「幸せ感」をもつことなく人生の晩年にきてそれを体験したこと。

遅すぎた悔いもありますが、それでも「生きているうちに」できたことに、小生はわが身を納得させています。

「若き時代」にそれを心したニイヤンを羨ましくおもいつつの一筆です。
Unknown (にいや)
2007-08-27 21:40:21
四葉さん>
侘び寂び!
30代は、利休の心が理解できるようになりたいと思います。
涙腺は、いまのところ、まだ大丈夫みたいです。


敬助さん>
インドにて、「息しとるだけで幸せ」とおっしゃった敬助さんの一言、すばらしかったです。
ちょっと遅くなったけど (ななこ)
2007-08-27 22:58:28
お誕生日おめでと

また一つ大人になりました
Unknown (にいや)
2007-08-28 00:15:03
ななこさん>

大人の階段、また一段登ったよ。

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