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河内国喜志村覚え書き帖

大坂の東南、南河内は富田林市喜志村の歴史と文化の紹介です。
加えて、日々の思いをブログに移入しています。

旅18 / 老いの小文 六の①

2025年03月31日 | 旅日記

今年こそ満開の桜を観に来いよと、備前の国に家を持つ友人が誘ってくれた。
予報では26日が開花で、満開は四月の上旬。
だが、四月は何かと所用があり日程が合わない。
ならば、満開の桜は諦めて、せめて天気の良い日にと思い、三月の下旬に備前の旅に出ることになった。

弥生も末の七日。
昼前に、友人が堺の実家から車で迎えに来てくれた。
備前の土産にと用意していたキャベツやレタスの苗を積み、いつも通り西国街道(山陽路)をひた走る。
途中、明石の宿で弁当を買おうとするも、昼遅く、お握り二個と沢庵の入った弁当しかない。
まあ、播磨の国の美味しい米を食すのも悪くはあるまいと購入する。
ベンチに座って弁当に張られたシールを見る。
播磨の米のはずだと思って買ったのに、製造は「京都府城陽市」とある。備前の旅は「~のはずなのに」が、なぜかよくある。
桜が咲いているはずなのに……散っていた。
雲海を見ることができるはずなのに……霧が深すぎて見えない。
日帰り温泉に入ることができるはずなのに……定休日であった。
などなどと、とことん裏切られてきた。
今回も、なんとなく幸先がよくない。
まあよかろうと、京都にいるつもりで握りをほおばる。

相生でバイパスを下り、赤穂の「有年」というという地に入る。
備前の旅は今回で六度目で、その都度友人になんと読むのか尋ねるのだが覚えられない。。
ひたすらハンドルを握っている友人が、その質問は聞き飽きたという調子で「うね」と答える。
畑で土を盛り上げて作る畝(うね)の意味で、小高い山々が続いているので名付けられたという。
和同6年(713年)に発せられた好事二字令(地名は漢字二字に統一せよという勅令)によるものだろう。
しかし、なぜ、こんなまぎらわしい漢字を当てたのだろうか?

友人の親戚にあたる源左衛門という人が、沖田という古風な村の村長をしていて、家を新築したので見に行くことになった。
行ってみて驚いた。
古風どころか弥生時代後期とみられる竪穴住居がいくつもある。
その中のひときわ目立つ真新しい住居から、80歳を超えたかと思われる源左衛門さんが出て来た。
「ようおいでくれやました。お茶でも飲んでいってくれてや!」とおっしゃるので、家の中に入る。
地面を掘っただけの囲炉裏があって、大きな鍋が吊るしてあり、ぐらぐらと湯が湧いている。
急須に日本茶を淹れるのだろうと思っていたら、源左衛門さんはドリッパーを持ってきて、コーヒーを淹れてくれた。
まだ咲きかけの桜の木の下で、竪穴住居や高床式倉庫を眺めながら熱いコーヒーをすする。
うららかな春陽を受けて、今は古代なのか現代なのか、頭がぼぉーっとしてくる。
何千年もの年を有して、こんな生活があるのだろう……。
「うね」という地名に「有年」という漢字を当てた意味が、ようやく解った。
「往(い)にに、また寄ってくれてや。そんころには桜が満開やろ」という源左衛門さんの言葉をあとにして有年の地を離れた。

※②に続く

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畑199 / 畑の法則

2025年03月28日 | 菜園日誌

孫が遊びに来て「今年もイチゴをいっぱい食べさせてね」と言う。
……。
去年の春のカラスに落花生の苗200株を全部引き抜かれた事件で、イチゴの苗を採るのを忘れてしまった。
夏に思い出して、あちこちに生えているのをかき集めて20株ほど苗床に植えておいた。
ところが、秋に定植しなければならないのに、アライグマに落花生を食べられた騒動で忘れてしまったのだ。
さて、どうしよう……、自分のせいではなくカラスとアライグマのせいだからと責任転嫁して、特にやらなくてもいいだろうと勝手に理由をつくり、どうにでもなれと居直って、結局、放ったらかしにしてしまった。
随分と長く考えたあげくだったのに……。

「今年もイチゴをいっぱい食べさせてね」だなんて可愛いこと言われると……。
やるしかない!
〈人は、他者から期待されると、期待に沿った成果を出す〉というピグマリオン効果というやつだ。
孫の期待を果たそうと、短い畝を三本たてて、黒のビニールでマルチングをする。
これで午前中の作業は終了。
昼食を摂って、朝ドラの再放送を視て、早々に畑へ。
だが、ここからが嫌な作業になる。
夏から放ったらかしにしていたイチゴを一つ一つシャベルで掘り起こし、根を崩さないように綺麗に掃除して、5、6株ずつ畝まで運んで、穴を掘って水を入れて植え付けていくという、年寄りにとっては苦手な力の要る作業になる。
前回書いた〈仕事を後回しにすると、本来の作業の倍の労力・プレッシャーになる〉というエメットの法則の確たる例。それに、植え時期が外れているのに大丈夫かとという疑念で、なんとも腰が重い。
しかし、こんなときは、ぐずぐず考える前に、1・2・3・4……ドカンーン!
5秒数える前に、シャベルを手にして、イチゴの株を掘りに行く。
〈しなければならない嫌な仕事をどうしようかと5秒以上考えると、人はやる気のスイッチが入らなくなる〉という「5秒の法則(5秒ルール)」に従う。
それに加えて、〈褒美があれば、人は働く〉というエンハンシング効果につられて作業完了。
シャツ一枚になれるような暑い日に、しんどい作業を仕終えた満足感。
家に帰って飲む冷たいビールのなんとも美味いことよ!
明日から、岡山へ「老いの小文」の旅に出る。
これもエンハンシング効果。
根張りが悪くて実ができなかったら、カラスに食べられたとでも言えばいい。
先に言い訳を考えながら旅に出る。

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畑198 / エメットの法則

2025年03月26日 | 菜園日誌

暖かくなったので、朝の7時に畑へ。
さて、なにしよう?
やるべきことが無いのではなくて、やるべきことがたくさん有りすぎる。
そりゃそうだ。
3月になっても寒かったし、たまに暖かい日があっても、健気に咲く花を眺めているだけだったんだから……。
さーてと……畑を見回す。
そして、最も後回しにしてしまうであろう作業をすることにしている。

仕事を後回しにしてしまうと、忘れてしまうかもしれないし、仕事に追われてしまうかもしれない。
結果として労力が倍になってしまう可能性がある。
経営コンサルタントのリタ・エメットという人が著書で提唱したので、「エメットの法則」という。
法則なんぞと大げさに言わなくったって、そんなの、子どものころからわかってる。
夏休みの宿題を後回しにして、どんなに叱られ、必死になったことか。

畑の片隅にあるミカン・イチジク・ブルーベーリーの果樹コーナ。
収穫が終わると、目が届かないので放ったらかしになる。
冬の間に一面に蔓延(はびこ)った冬草を抜く。
そして、剪定。
午前中かけて完了。
雑草も気持ちも、すつきり。
今年も宜しくお願いしますと肥料を蒔く。
夏休みの宿題を七月中にやり終えたような達成感。
心行くまで今日を生きた。
エメットの法則も、まんざらすてたものではない。

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畑197 / 根本

2025年03月24日 | 菜園日誌

畑の片隅にある趣味のコーナ。
盆栽でもやってみるかと、挿し木から育てた、さつき、くちなし、それと木瓜。
普段は放ったらかしにしているが、花が咲くころに存在に気づく。
木瓜の蕾が膨らみだした。
「ぼけ」とはまた不幸な名を与えられたもんだ。
そのうえ、半分ボケた老人に育てられていたのでは、たまったもんではなかろう。
しかし、その花は肉厚で光沢があり、美しい。
蕾は、頬を紅く染めた少女のようiに可愛いい。

中国名の「木瓜」を音読みして「ボクカ」、それが訛って「ボケ」となった。
「木の瓜」と書くように、瓜のような実をつける。
盆栽用の木瓜は実のならない品種だから、とんと実を見たことない。
カリンに似た実がつくらしい。
焼酎に漬けて木瓜酒、乾燥させて漢方薬に使っていたとか。
実のなる品種の種を買って育ててみたいものだ。

暖かいので家の中で育てていた観葉植物の日向ぼっこ。
去年の夏にダイソーで買ったカポックとパキラ。
パキラは一つのポットに二株入っていて100円。
カポックは一株だが、まだ小さくて根元がまだ青かった。
大きく育てたいときは、こういうのを選ぶといい。
つまり、挿し木ではなく種子から発芽した実生(みしょう)。
挿し木したものは、なかなか大きくならないが、実生はどんどん大きくなる。
ただし、売られているものの90%以上が挿し木株だから、出遭えるかどうかは運しだい。

挿し木株は根を横に伸ばすので引っ張れば、すぐに抜ける。
対して、実生は種から太い根を真下に伸ばすので抜けにくい。
だから、強い。
「根ほど葉広がる 」ということわざがある。
ダイコンは双葉の時に伸ばした根の長さで、大きさが決まっているのだとか。
植物の成長の根本(こんぽん)は根であり種なのだ。
さて、大根の種を蒔くとするか。

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畑196 / 健気

2025年03月23日 | 菜園日誌

今日(21日)は全国的に暖かく、大阪も17℃の暖かさ。
だが、朝一で百姓仲間からlineメール、「やられた! 白菜400株! 全滅!」
犯人はヒヨドリ。
数百匹の集団で舞い降りて来て芯を喰ってしまうので商品にはならない。
カラスに次ぐ害鳥
我が畑でも、キャベツをボコボコにやられたことがある。
なんとも切ないが、朝の7時半から子ども見守り隊があるので、いつもの交差点へ。
「おはよう!」
「おはようございます!」
不安げだった1年生も、元気に挨拶できるようになった。

家に帰って朝食をとって畑へ。
ビニールハウスの中で冬越させていたホテイアオイが、なんとか緑を保って冬を越してくれ。
随分小さいが、冬の間、じっと寒さに耐えてくれたのだ。
キャベツの横には、こぼれ種のネモフィラが一株。
キャベツの大きな葉に押されながらも、負けるものかと花茎をもたげて次々と花を咲かせている。
弱音を吐かずに耐え忍んできたのだ。

ふとしたとき、困難を乗り越えて生きている存在に気づく。
逆境にあっても、弱音を吐かずに生きている存在。
健気(けなげ)な存在。
普段は気がつかないが、人間が自分の弱さというものを感じたとき、健気なものと共感し合うのかもしれない。
「そんなに気を落とすなよ。俺だって辛いこと乗り越えてきたのだから、大丈夫だよ」と勇気づけられる。
そして、健気に生きていこうと決心する。
人もまた健気な存在なのだ。

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