孫が遊びに来て「今年もイチゴをいっぱい食べさせてね」と言う。
……。
去年の春のカラスに落花生の苗200株を全部引き抜かれた事件で、イチゴの苗を採るのを忘れてしまった。
夏に思い出して、あちこちに生えているのをかき集めて20株ほど苗床に植えておいた。
ところが、秋に定植しなければならないのに、アライグマに落花生を食べられた騒動で忘れてしまったのだ。
さて、どうしよう……、自分のせいではなくカラスとアライグマのせいだからと責任転嫁して、特にやらなくてもいいだろうと勝手に理由をつくり、どうにでもなれと居直って、結局、放ったらかしにしてしまった。
随分と長く考えたあげくだったのに……。
「今年もイチゴをいっぱい食べさせてね」だなんて可愛いこと言われると……。
やるしかない!
〈人は、他者から期待されると、期待に沿った成果を出す〉というピグマリオン効果というやつだ。
孫の期待を果たそうと、短い畝を三本たてて、黒のビニールでマルチングをする。
これで午前中の作業は終了。
昼食を摂って、朝ドラの再放送を視て、早々に畑へ。
だが、ここからが嫌な作業になる。
夏から放ったらかしにしていたイチゴを一つ一つシャベルで掘り起こし、根を崩さないように綺麗に掃除して、5、6株ずつ畝まで運んで、穴を掘って水を入れて植え付けていくという、年寄りにとっては苦手な力の要る作業になる。
前回書いた〈仕事を後回しにすると、本来の作業の倍の労力・プレッシャーになる〉というエメットの法則の確たる例。それに、植え時期が外れているのに大丈夫かとという疑念で、なんとも腰が重い。
しかし、こんなときは、ぐずぐず考える前に、1・2・3・4……ドカンーン!
5秒数える前に、シャベルを手にして、イチゴの株を掘りに行く。
〈しなければならない嫌な仕事をどうしようかと5秒以上考えると、人はやる気のスイッチが入らなくなる〉という「5秒の法則(5秒ルール)」に従う。
それに加えて、〈褒美があれば、人は働く〉というエンハンシング効果につられて作業完了。
シャツ一枚になれるような暑い日に、しんどい作業を仕終えた満足感。
家に帰って飲む冷たいビールのなんとも美味いことよ!
明日から、岡山へ「老いの小文」の旅に出る。
これもエンハンシング効果。
根張りが悪くて実ができなかったら、カラスに食べられたとでも言えばいい。
先に言い訳を考えながら旅に出る。