河内国喜志村覚え書き帖

大坂の東南、南河内は富田林市喜志村の歴史と文化の紹介です。
加えて、日々の思いをブログに移入しています。

その十八中編 室町――富田林寺内町巡り

2022年02月26日 | 歴史

ここからは落語のネタですが、スマホでは読みにくいかもしれません。あしからず。

清八 さあ、きーやん、こっちおいで。

喜六   せーやん、腹へった。朝、藤井寺の観音さんお参りして、巡礼街道を南へ南へ、あれからなんにも食べてーへん。

清八 情けない声出すな。もうちょっと行ったら富田林や。南河内の大都市や。

喜六 えっ、こんな田舎に、そんなんあるんかいな?

清八 さあ、ここが富田林寺内町の入り口や。念西口というねん。

喜六 地蔵さんがあるで。

清八 町の北の入り口にあるんで北口地蔵。赤ちゃんの夜泣き・疳の虫にごりやくがあるいうな。

喜六 ほな拝んでいこ。

清八 おまえ一人もんやろ。

喜六 わい、たまに夜泣きするねん。

清八 子供かいな。

喜六 こんなとこに墓があるで?

清八 あほ 墓やないがな、道しるべや。

喜六 なんて、書いたーるねん? わい、字ー読めんがな。

清八 「左ふじいでら、右まきのおてら」と書いたある。

喜六 「まきのおてら」てなんや。

清八 和泉にある槙尾山施福寺や。藤井寺が、観音巡礼の第三番札所で、施福寺は第四番の札所や。

喜六 よう知ってるなあ。

清八 今、持ってる『富田林名所案内』というのに書いたーる。

喜六 なんて書いてあるねん?

清八 ええか、富田林は六筋七町とよばれていて、六筋とは南北方向の通りのことで、東筋、亀ヶ坂筋、城之門筋、富筋、市場筋、西筋の六つの通りをいう。七町とは、北から順に壱里山町、富山 町、北会所町、南会所町、堺町、御坊町、林町というなーりー。

喜六 あなかしこ、あなかしこ。

清八 『御文書』やないがな。さあ、この前のまっすぐな道を行って町中に入ろ。・・・今歩いてるのが城之門筋や。

喜六 城之門? 城みたい無いがな。

清八 後でわかるから黙って着いてこい。

喜六 わー! 大きい家がぎょうさんあるなあ。みな刑務所か?

清八 なんでやねん?

喜六 二階に、ごっつい格子の牢屋の窓があるがな。

清八 あほ、あれは牢屋の窓とちがう。虫籠窓(むしこまど)いうて、煙抜き、風通しのええようにする窓やがな。

喜六 二階の壁が突き抜けてるで?

清八 あれは「うだつ」いうて、隣が火事になったときに火の粉をよけるために作ったるねん。

喜六 ええなあ。うちの長屋にもつけよか。

清八 あんだら! うちの長屋みたい燃えても、持ち出すもんがないがな。ここらは違う。持ち出すもんがようさんあるがな。ようさん持ったはるさかいに、うだつをあげることができる。わしらは、「うだつが上がらん」ということや。

喜六 ははーん、そういうことかいな。それも御文書に書いたーる。

清八 ちゃういうねん!

喜六 しかし、ここはやっぱし刑務所ちゃうか?

清八 なんでやねん?

喜六 塀の上に、とがった竹や木をいっぱい並べて逃げられんようにしてるがな。

清八 あれは「忍び返し」いうて、盗人が入らんようにしてるねん。軒下にも竹で編んだ柵が置いたるやろ。

喜六 金持ちというのはじゃーくさいことすんねんなあ・・・、わしら「うだつが上がらん」でよかったな。

清八 まあまあ、そない思てるほうが幸せや。

 わあわあと言うております。「地内町巡り」前半でございます。続きは後編へ!

【補筆】

※地図は富田林市商工課パンフレツトを加工。

※『御文書』浄土真宗の第八世蓮如上人が、浄土真宗の教えを一般門徒のために、わかりやすく書き示したものです。各文章ともに「あなかしこあなかしこ」で終わります。

 

 

 


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