ロシア選手権女子はアリーナ・ザギトワが優勝した。
表彰台にはさらにマリア・ソツコワ(2位)、ジュニアのアリョーナ・コストルナヤ(3位)が乗り、ロシアスケート連盟から1月の欧州選手権代表(実質的な五輪代表)が発表された。表彰台のシニア選手2名とケガで欠場していたメドベージェワの3名が選ばれた。
(グレイヘンガウスのインスタグラムより)
演技終了後のキスアンドクライで珍しく喜びの表情をあらわす魔女エテリと悪い奴ら。魔女の髪型はソバージュからストレートになっている。
大会結果
順位 | 名前 | 年齢 | 区分 | 得点 | SP | FS | 備考 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | アリーナ・ザギトワ | 15 | S1 | 233.59 | 1 | 78.15 | 1 | 155.44 | エテリ共和国 |
2 | マリア・ソツコワ | 17 | S2 | 221.76 | 2 | 76.39 | 2 | 145.37 | CSKA |
3 | アリョーナ・コストルナヤ | 14 | J1 | 216.57 | 4 | 73.59 | 4 | 142.98 | エテリ共和国 |
4 | S・コンスタンチノワ | 17 | S/J | 211.28 | 10 | 66.51 | 3 | 144.77 | サンクト |
5 | ポリーナ・ツルスカヤ | 16 | S1 | 207.61 | 3 | 75.33 | 6 | 132.28 | エテリ共和国 |
6 | アナスタシア・グバノワ | 15 | J2 | 206.60 | 5 | 71.69 | 5 | 134.91 | サンクト |
7 | E・トゥクタミシェワ | 21 | S7 | 202.06 | 6 | 71.07 | 8 | 130.99 | サンクト・ミーシン |
8 | ダリア・パネンコワ | 15 | J2 | 201.97 | 7 | 69.83 | 7 | 132.14 | エテリ共和国 |
9 | S・サハノヴィッチ | 17 | S2 | 197.44 | 8 | 67.58 | 10 | 129.86 | プルシェンコ |
10 | エレーナ・ラジオノワ | 18 | S5 | 196.78 | 13 | 66.16 | 9 | 130.62 | CSKA |
11 | ソフィア・サモドゥロワ | 15 | J2 | 196.51 | 9 | 67.07 | 11 | 129.44 | サンクト・ミーシン |
12 | アンナ・タルシナ | 14 | J2 | 195.59 | 11 | 66.46 | 12 | 129.13 | CSKA |
13 | アナスタシア・グリャコワ | 15 | J2 | 187.87 | 12 | 66.35 | 14 | 121.52 | クリムキン |
14 | ワレリヤ・ミハイロワ | 15 | S1 | 186.51 | 14 | 63.79 | 13 | 122.72 | CSKA |
15 | アリョーナ・レオノワ | 27 | S10 | 176.72 | 16 | 62.15 | 15 | 114.57 | サンクト |
16 | ソフィア・イストミナ | 15 | S1 | 174.05 | 17 | 62.09 | 16 | 111.96 | CSKA |
17 | アナスタシア・グラチョワ | 16 | S2 | 167.30 | 15 | 62.17 | 18 | 108.35 | サンクト |
18 | リディア・ヤコヴレワ | 15 | S1 | 160.78 | 18 | 52.43 | 17 | 105.13 | サンクト |
辞退 | E・メドベージェワ | 18 | S3 | エテリ共和国 | |||||
辞退 | アンナ・ポゴリラヤ | 19 | S5 | ||||||
辞退 | アリサ・フェジチキナ | 15 | J3 | サンクト |
大会結果
欧州選手権代表
女子 ザギトワ、ソツコワ、メドベージェワ
補欠 コンスタンチノワ、ツルスカヤ
男子 コリャダ、サマリン、アリエフ
補欠 ヴォロノフ、ドミトリエフ
ロシアスケ連の発表(ru)
ショートの結果から、大きなミスが多発しない限り、表彰台はザギトワ、ソツコワだろうと思っていたが、予想通りとなった。ジュニア筆頭は3位表彰台のコストルナヤ。
上位8名が200点越え、12名が190点越えという驚くべき結果となった。点数のインフレではなく技術が向上しているのだろう。エテリ組が仕掛け、他の選手とコーチ達も負けまいと追い上げる状況。上位はエテリ組、サンクト勢が多いが、CSKAも喰らいついている。
全選手が「+3T」ジャンプを跳び、16名が「3+3」または「3+1+3」ジャンプを跳ぶ。手を上げるジャンプ(片手タノジャンプ、両手リッポンジャンプ)も多く、後半に7つ全てのジャンプを跳ぶ選手が3名(ザギトワ、コストルナヤ、パネンコワ)、後半に5つ以上のジャンプを跳ぶ選手は10名いる。
ステップがレベル4なのは4名(ザギトワ、ソツコワ、コンスタンチノワ、グバノワ)。ステップ、コレオはもちろん、「つなぎ」も見どころの一つで、特にエテリ組の選手はジュニアも含めて必見だ。
ザギトワの233.59点は昨年のメドベージェワの得点233.57点を上回っている。欧州選手権、平昌五輪のザギトワとメドベージェワの対決がますます面白くなってきた。
ザギトワ
ChSq FCSp美 StSq 3Lz+3Lo 2A+3T 3F(r)+2T(t)+2Lo(r) LSp 3Lz(r) 3S(r)詰? 3F(r) 2A CCoSp
五輪代表選考のかかるこの大舞台でも結果を出してきた。ステップのあたりで緊張感が伝わってきたが、後半の3Sの着氷がわずかに乱れた以外はミスらしいミスはなかった。3Lz+3Loコンボジャンプはいつもよりやや小さく見えたが加点は1.4。見ているこちらが緊張していただけかもしれない。
前半はいつも本当に上がるのか心配なTESカウンターの低い数字が、後半にあっという間に高い数値に変化していくのも面白い。
155.44点という高い得点が出て、PCSはTRを除き9.5以上だ。大御所タラソワ・ママからもお墨付きを頂いた。氷上バレエはジュニアデビューから1年4か月の時を経て「完成」に近づきつつある。
ソツコワ
3Lz(t)+3T(t) 3F(t) LSp StSq / 3Lo hd 3F(t)+1Lo+3S(t) 3Lz(t)ot ChSq 2A(t)+2T(t) 2A(t) FCSp CCoSp
最初の3Lz+3Tは高いジャンプだった。背が高いからではなくジャンプが高い。加点は1.4だ。ドビュッシーの「月の光」の優雅でゆっくりとした音楽がマーシャによく合っていてステップもよい。3Lo、3Lzでミスが出て、後半のスピンFCSpは、少し疲れたのかもしれないが、よくまとまった。
長身の選手は不利と言われていたようだが、ついに欧州代表に選出された!欧州選手権ではコストナーがいるので4位以上なら文句なく五輪代表に選抜されるだろう。身長は173cm、五輪の後はパリコレにデビューするのか?
コストルナヤ
CCoSp StSq FCCoSp ChSq 3Lz 3F+3T(r) 3F+2T(t)+2T 3S+3T(r) 3Lo 2A 2A LSp
最近お気に入りの「ステラのテーマ」のメロディー。最初のスピンの背中より手を押し上げる姿勢が印象に残る。そこから(レベルは取れないが)ステップまで音楽に合わせた柔らかい動きで魅せられる。
気がつけば後半7ジャンプをミスなく跳んでいる。ジャンプまでの動作、スピードもあり、ぶれないジャンプ、着氷も柔らかく流れがある。アリョンカは3Lzが苦手なのかもしれないが、ザギ、鶴のように見ていてハラハラする場面が無く、あっという間に演技が終わった。
こんな選手、昨季のロシアジュニア選手権にいたかなぁ?もう一度チェックしてみよう。
コンスタンチノワ
3Lz(t)+3T美 3Lo CCoSp StSq 3F(t)+1Lo+3S 3Lz(t) LSp美 3F(t) 2A+2T(t) ChSq 2A FCSp
今季はナショナルチームのシニア副代表チームに選ばれるもジュニアの国際大会(Jr.GPシリーズ)に出場していた微妙な立場のスターシャ。昔のアシュリー・ワグナーのあだ名ではないが、ロシア版「Almost Girl (あとちょっとの女の子)」だったスターシャが、この大舞台できっちり決め、ガッツポーズが出た。え?あのスターシャがミス無し?
こちらのアンナ・カレーニナも140点を超えている。勢いがあり豪快なスケートをするが、SNSのコメントは控えめで可愛いスターシャ。
華やかなサンクトペテルブルクを練習拠点にするが、チョボタリョーワ、クルシニチェンコの両コーチに、男子のコリヤダとともに指導を受けており、朴訥としたところはコーチ、選手でよく似ている。
グバノワ
3Lz+3T StSq FCSp 3Lz+3T+2T(t) 3Lo 2A 3F+2T(t) CCoSp 3S 2A ChSq LSp
衣裳が代わったグバノワ。Jr.GPではジャンプに苦しんでいたが、成長期を乗り越えられそうな予感がする。伸びやかな滑りは変わらない。毎回細かくプログラムの手直しをしているようだ。
手乗り文鳥のように小さく可愛かったナースチャがコーチのトゥレンコと親子ではなく姉妹に見えるくらいに成長した。フリー130点、総合200点を超えてもニコリともしないナースチャ。
あれ?プロトコルには3Lz+3T+2Loとあるが、左トゥをついて跳んでいるので3Lz+3T+2Tではないの?Jr.GPやロシア杯も3Lz+3T+2Tだったはず。技術に詳しいわけではないので少し動揺している…
パネンコワ
CCoSp StSq ChSq 3Lz(r)+3T(r) 3F(r)+1Lo+3S(r) 3F(r)+2T(r) 3Lz(r) 3Lo(r) 2A(t) 2A(t)ot FSSp FCCoSp
最近はパネンコワのファンが多いのか、イロイロ教えてもらうことが多い。実は今まで「3Lz→♡を描く→3Lo」のマイムに気づいていなかった。最後の2Aもオーバーターンに見えつつも、ひょっとしたらジャンプの出に工夫をしたのかとも思った。エテリ組だから。
ジャッジスコアの減点と詳しい方の指摘で、ただのオーバーターンだと分かった。
キスクラでは珍しく白い歯が見え、エテリが甲斐甲斐しく世話を焼き、口紅を拭っていた。しかし得点を見ても笑顔が無い。フリー140点、合計210点超えを目指していたのだろう。
ティッシュケースはサンリオの「まるもふびより」の「もっぷくん」とのこと。
こちらより引用するが、
「なぜ髪のゴムを外すのかというと、その日は雨が降っていて、その時濡れたぐちゃぐちゃの髪の毛を表現してみました」とのこと。
実はコストナーの「抜きっ歯(Ne me quitte pas)」より、ダーシャのほうが好きなんです。
ミハイロワ
2A+3T 3Lz 2A+1Lo+3F FCSp CCoSp ChSq 3F 3Lo+2T(t) 3Lo 3S StSq LSp
お衣裳が新しい!黒い大人びた衣装で登場したレーラ15歳。ショートは田舎娘みたいと言ってすみません。エテリ組に比べてつなぎが薄いのでそんな暴言を吐きましたが、フリーの演技は素晴らしかった。ボーカル入りの曲はあまり好きではないがABBAはいいかも。レーラのキャラにも合っている。手拍子もある!
同じダビドフ門下のタルシナと同様に「2A+1Lo+3S」ではなく「2A+1Lo+3F」を跳んでいる! 練習では「3S+3Lo」も跳んでいるのでそちらも頑張れ!
ロシア選手権は、出場選手が18名なので集中して見ることができる。年に一度の選手の晴れ舞台とはいえ、全日本選手権の30人は少し多い気もする。
欠場した3選手も出場し、さらに(出場資格は14歳以上という2013年にできた年齢制限を撤廃して)トゥルソワ、タラカノワも出場していたら、もっとワクワクする夢のオールスター大会になっていたに違いない。(さらに特別ゲストに紀平梨花、コストナー、オズモンドも呼ぶ!)
若手の選手が躍進し、ベテラン選手がやや苦戦する大会だったのだろうか。4年に一度の五輪代表をかけた戦いで、選手の喜ぶ表情と悲しむ表情を見た。前回ソチとは違い選手のことをネットを通じて少しは知ったので見ていて少し辛い。
しかし、(全日本選手権もしっかり見たが)
ハイレベルなロシア選手権はとても面白かった。