きのつらゆき(Kino_Tea)

紀貫之のごとく、気の向くままに、つらつらと、(書いて)ゆきましょう。
ブログというより備忘録。スケート関連多い。

ジュニア・グランプリ・ファイナル2017

2017-12-11 | Skating

(Update 2017-12-16)

名古屋ガイシホールで開催されたジュニア・グランプリ・ファイナル。ロシアのアレクサンドラ・トゥルソワ選手がザギトワの持つジュニア歴代最高点に迫る205.61点で優勝した。表彰台を独占したのは、いずれもエテリ・トゥトベリーゼコーチが指導するジュニア1年目のロシア女子選手3名だった。
Podium JGPF2017
(Gettyimages.co.jp Sorry for not embedding the image.)
左からロシアン・ビューティーのアリョーナ・コストルナヤ(146cm)、髪の長いアレクサンドラ・トゥルソワ(148cm)、SPの衣装を着ているアナスタシア・タラカノワ(152cm)。

「ひめ姉さまたち、真っ青な異国の服を着ているの」「サーシャの髪はまるでエテリの髪のように金色に輝いているの」(カニシェワ嬢とシニツィナ嬢)

「その者ども、青き衣をまといて、銀盤に降り立つべし。おおお・・古き言い伝えはマコトであった。」(パノワ婆)

(この寸劇を理解して下さる方がいたら嬉しい)

身長はシーズンはじめにISUに提出した値と思われるので、トゥルソワの身長は少しはやく伸びているようだ。


大会結果

順位名前区分所属得点SPFS備考
1 アレクサンドラ・
トゥルソワ
J1 ロシア 205.61 1 73.25 2 132.36 SPジュニア最高点
4Sに挑戦
2 アリョーナ・
コストルナヤ
J1 ロシア 204.58 2 71.65 1 132.93 滑りの極致
3 アナスタシア・
タラカノワ
J1 ロシア 199.64 3 67.90 3 131.74 暴れん坊将軍
4 紀平梨花 J2 日本 192.45 4 66.82 4 125.63 3A+3T成功
5 ダリア・
パネンコワ
J2 ロシア 191.16 5 65.65 5 125.51 タケノコ大収穫祭
6 ソフィア・
サモドゥロワ
J2 ロシア 187.74 6 65.01 6 122.73 安定女王
しかしLz!再発

大会結果サイト

ショートを終えた時点で6人ともミスらしいミスが無く、トゥルソワ、コストナヤがジュニア最高点を更新、見ごたえのある演技だった。質の高い演技が続くと、見ているこちらが緊張してしまう。
ショートのジャッジスコアを見ると、エッジエラーを取られたパネンコワ、サモドゥロワがわずかに3Fまたは3LzジャンプのGOEで減点されたのみ。スピンは全員レベル4、ステップは3人レベル4の質の高い演技だった。


アレクサンドラ・トゥルソワSP
JGPF2017
(Gettyimages.co.jp Sorry for not embedding the image.)
トゥルソワのクリムキンイーグルは静止画で見るとすごい角度だ。宇野ショーマチカは最近はお手つきちょっとズル版?のようなので、今はサーシャが第一人者かもしれない。4月に見た時より進化している。(エキシビションの練習でショーマチカと共演したようだ。)

なぜクリムキンイーグルか?

推測だが、3月末にザギトワとエテリん娘のディアナが練習でやってみたようだが、サーシャがそれを見て真似をしてみたら出来てしまった、ということではないか。4月上旬のロシア年長選手権には入れていないが、4月20日頃のモスクワ連盟記念賞(シニア)のフリーで、冒頭のコレオ(またはそれに続くつなぎ)として披露している。
その4か月後にはJr.GPのSPとFSの両方で3Lz(3F)ジャンプの入りの動作に組み込んでいる。

(参考)ザギトワとエテリん娘のディアナの練習
(余談だが、ディアナは2016年9月にすでにマスターしていた。)

JGPF2017
「今ではあたしのほうが、うまいんだから!」


FSSp4+0.79 CCoSp4+1.00 StSq4+1.30 / 3F(r)+3Lo+1.50 3Lz(r)+1.60 2A+1.00 LSp4+1.00
(
♪ Big Spender、Jumpin' Jack)

今季のザギトワの3Lz+3Loは少しハラハラしながら見ているが、サーシャの3F+3Loは心配する以前に跳び終わっている感じだ。ジャンプはいつも通り安定してとても良い出来だが、2Aは少し低めか。スピンはしっかり回っている。ステップもJGP1戦目より進化し続けている。

少し前のネイサン・チェン選手と同様に体操競技と掛け持ちしてみては、と思う身体能力をSPではいかんなく発揮し、ザギトワの出したジュニア最高点を更新する得点となった。

トゥルソワFS

4S-4.00 FCCoSp4+1.07 StSq4+1.40 / 3Lz(r)+3Lo shaky -0.40 3F(r)+2T+2T+0.70 3Lz(r)+3T(r)+1.30 3F(r)+1.40 3S+1.30 2A+0.93 FCSp4+0.79 CCoSp4+0.50
(♪ ビバルディ四季より夏)


4Sに成功すれば2002年のJr.GPファイナルで安藤美姫が跳んで以来となったが、今回は回転不足+転倒だった。TESカウンター上はずっと「BV10.50」と表示され、回転充足を期待したが、結果は回転不足(BVは8.1となる)だった。スロー再生すると回転不足とわかる。


トゥルソワの4Sの歩み

No.時期大会要素BVGOE得点
1 '17/08 Jr.GP豪州 4S(UR) 8.10 -1.20 6.90
2 '17/09 Jr.GPベラルーシ 4S(DG,fall) 4.40 -2.10 2.30
3 '17/10 ロシア杯#3 4S(UR,fall) 8.10 -4.00 4.10
4 '17/11 ロシア杯#5 4S(UR) 8.10 -1.20 6.90
5 '17/12 Jr.GPフィナル 4S(UR,fall) 8.10 -4.00 4.10

4Sには、新採点下で2008年(GPファイナル)安藤美姫、2011年(米国国内)コートニー・ヒックス、2016年(韓国国内)ユ・ヨンが挑戦しているが、4回転ジャンプの減点が3点から4点に変更されたのは'15/'16シーズンからなので、サーシャは「GOE-4.00」を記録した初めての女子選手となった。
(この豆知識は期末テストに出ます)

しかし、常に回転不足なのではなく練習ではうまくいっている。
FS前の練習の動画
EX前の練習の動画

紀平梨花さんの3Aは、15年11月全兵庫選手権で挑戦をはじめ、クリーンに跳んだのは16年9月のJr.GPスロベニア大会だった。サーシャも挑戦を続けてほしい。
サーシャは今13歳6か月なので美姫の14歳11か月より前に成功する可能性は十分にある。


今季も前半戦が終わり、セカンドループジャンプ(+3Lo)を跳ぶ選手が若干増えたようだが、3Lz+3Loを(国際大会で)跳んでいる選手はエテリ門下のトゥルソワとザギトワのみ。(青木祐奈、岩野桃亜、川畑和愛、それに加えて白岩優奈、本田真凜は大きな国際大会で挑戦してほしい。)
今回のFSのサーシャの3Lz+3Loは珍しく着氷で勢いが止まってしまいGOEは減点となった。その後の演技は素晴らしかったが、トゥルソワ自身が少し残念と言っていたのは最後の2つのスピン。少し疲れが見えたようだ。

JGPF2017
JGPF2017
サーシャには空中浮遊する特殊な能力があるのです。
いいえ!フライングスピンの最初のバタフライの跳躍部分です!

JGPF2017

直前のロシア国内大会(ロシア杯第5戦、シニア)で高得点を叩き出し優勝候補ナンバー1と思われていたコストルナヤを、SPのわずかな貯金により僅差でかわし、サーシャが優勝した。


今季前半の「ジュニア女子の顔」となる選手は、4S、3Lz+3Lo、クリムキンイーグルを披露し、体操選手のようなサーシャになった。エッジワーク、ジャンプ、スピンの所作がキレイなコストルナヤ、ディープエッジのタラカノワより面白いタイプのスケータ。おまけに少し幼く、髪が長く、笑顔がかわいい選手だ。

FSの動画の4分32秒あたりを見ると、エテリがお尻を押して、ニコニコ顔でリンク中央に向かうサーシャを見ることができる。怖いと言われるエテリとは良い関係なのだろう。


サーシャの長い髪はどうやって団子髪にするの?

長い髪を後ろで一本の三つ編みにして、それをお団子にまとめる。試合会場で見たかたによると、関係者席で同伴していた母親が三つ編みにしていたようだ。(SPのときは前髪も別に三つ編みにして、お団子にまとめるのでしょう。)

サーシャのママは今回のJr.GPファイナルだけでなく、Jr.GP豪州大会、Jr.GPベラルーシ大会にも同伴している。

(参考)目撃談
サーシャのママ

JGPF2017
(Thanks. www.tulup.ru, Instagram)


(おまけ)2011年12月、7歳のトゥルソワちゃん(伝説の演技!)

スピンの足換え?あたりで転倒してしまったかわいいサーシャ


コストルナヤ

ザギトワ以上のシンデレラ・ガール。
8月上旬のテストスケート(=ロシア国内のJr.GP出場選手の選考会)を経ずにJr.GPシリーズに出場し、いきなり表彰台に乗った選手。このブログでも'16年秋に「ナショナルチームではないが有力な選手」としてトゥルソワなどと共に紹介した選手であったが、2月のロシアジュニア選手権では結果が出なかった選手だった。5月頃にエテリのもとへ移籍し、9月の国内大会で優勝して以降、快進撃が続いている選手。
ジャンプの成否や得点ではなく、ステップ、ターン、振付、音に合わせた動作などをよく見ていたファンは、昨シーズンにこの選手に惚れ込んでいた人もいる。このことを気づかせてくれた選手。

試合前にエテリコーチと目をあわせ、にこやかな表情のコストルナヤ。この試合は「(チームメイトが多く)試合というより普段の練習のような感じ」と語ったように落ちついて演技ができたようだ。
JGPF2017
JGPF2017
面白いポジション。動画では珍しく正面からではなく真横から撮影している。手を上げた軟体スピンなども面白い。

JGPF2017
フリーのレイバックイナバウアーも、ショートで2Aの入りに行うイナバウアーも、どちらもしっかりとポージングしていて真凜のそれよりキレイだ。
フリーでは1回だったタノジャンプが少し増えた。また、ついにステップがレベル4となった。「♪ステラのテーマ」は最近お気に入りのBGMでもある。


タラカノワ
JGPF2017JGPF2017
JGPF2017
ショートもフリーもタラカノワ・ワールド全開。卓越したエッジワーク、ディープエッジと躍動感のある動きが魅力的な選手。髪をお団子にしないのはそのあたりが関係するのか。野生馬の尻尾のようなポニーテールだ。
ショートはターンから3Lzに至り、その後、転ぶのではないかというRBOも面白かった。

今回はフリーのジャンプでミスが続発するようなこともなく、しっかりとまとめ上げ、最後に強気のガッツポーズをした。

優勝した時にしかSNSに写真を投稿しないプライドの高いタラちゃん。いつも強気で自信に満ちた表情だが試合に負けると悔し涙を流す選手。

(追記)Jr.GPクロアチア大会ではミスが多かったフリーの後ずっと泣いていた。観戦された方のブログ

今回は、ノービス全国大会では2連勝していたトゥルソワに負け、かなり悔しそうな表情だ。
今までは自分が完璧な演技をすればトゥルソワに勝てたが、今回はそうではない、ということを感じ取ったのかもしれない。

タカラノワ(宝の輪)ではなく、タラちゃん、タラカノワです!


紀平梨花
JGPF2017JGPF2017
ようやくようやく日本のエースとしての風格が出てきた。3A+3T世界初成功おめでとう。しかしフリーに3Aを2回は必要ないかもしれない。トゥルソワのようにすべての要素の完成度を高めた上で、タラカノワが悔しがるであろう「とどめ」の高難度ジャンプを跳ぶのならよいが。国内大会で調子が良かったので優勝候補だと思っていた。ミスがあっても192.45点は立派。世界ジュニアでの活躍を期待している。


パネンコワ
JGPF2017JGPF2017
ダーシャは本当はよく喋る面白い選手なのに、普段は感情の抑揚をあまりおもてに出さない選手なのか、このあたりが演技に影響しているのではないか。このプロをコストルナヤやタラカノワに演じさせたら音を捉えた良い演技になるのではないかと思う。同じ「Ne Me Quitte Pas」を演じるコストナーを超えてほしい。
努力して努力してほぼ全てでタケノコジャンプを跳び、「私失敗しないので」と最近までメドベ先輩を上回るジャンプ成功率を誇っていたダーシャ。エテリ一家が今後どのように料理するのかを見てみたい。

(追記)191.16点は昨季なら3位、一昨季なら2位の成績だが、ダーシャが頂点に登りつめ、白い歯を見せて笑う姿が見たい。


サモドゥロワ
JGPF2017JGPF2017
ソーニャのSPの「ハバ・ナギラ」(ヘブライ語の民謡)もお気に入りBGMのひとつだ。
安定感のある選手で、ルッツのエッジエラーを4月に克服したと思っていたが、今回はショート、フリーの3回全てでエッジエラーを取られてしまった。フリーで3-3を回避するのはソーニャとワシリエワくらいか。しかし190点前後の高いスコアが出るのはミーシン教授の指導が卓越しているからか。


エテリ組から4人出場しているが、後半ジャンプ、タノ多めは共通しているが、ジャンプ、スピン、ステップ、滑りもそれぞれ違い個性のある演技だった。

2月のロシアジュニア選手権の時に、ザギトワが練習で3Lz+3Lo+3Lo+3Loを跳ぶことに触れたが、エテリ組の選手は3-3-3や4-3(トゥルソワ、シェルバコワ)などの練習をよくやっている。最近テレビでもザギトワの3-3-3-3ジャンプが放送された。

表彰式

昨年の樹脂製(?)のメダルと異なり金属のメダルのようだ。日本とロシアの大会はいつも厳かに表彰式を行うので良い。選手の栄誉を称え、コスト削減のためにチープ感を出してはいけない重要な部分だ。表彰式でのコストルナヤの振る舞いが少し面白い。


エキシビション(トゥルソワ)

「♪ Your Heart Is As Black As Night」
前回Jr.GPベラルーシ大会のEXでは回避していたが、今回は昨季のSPのプロと同じように2A着氷後に右足だけでの連続ターンをやっていたサーシャ。ひょっとしてエテリ組の誰かがこのブログを読んだ?などということはないだろうが、サーシャはこの先が楽しみな筋肉少女だ。体型変化を乗り越えエテリ組四天王(トゥルソワ、コストルナヤ、タラカノワ、復帰予定のシェルバコワ)で切磋琢磨していってほしい。



(追記)青き衣を纏いし姫様たちは、髪の毛を後ろで結んで、髪も統一していたようだ。エテリは、練習中でも常に身だしなみを整え、美意識を持つように指導しているコーチ。タラカノワがFSの紫の衣装からSPの青い衣装に着替え、3選手の衣装を青で統一したのは、エテリの指示だったのだろうか。Jr.GPファイナルの表彰式は今季前半の一番重要な選手の晴れ舞台であることを誰よりも意識していたようだ。(Thanks Пакоさん)




(追記)SPのキスアンドクライでのコーチのローテーション

ファイナリスト6名の選手のうち4名がエテリチーム。エテリ、デュダコフ(ジャンプ担当の爺)、グレイヘンガウス(振付担当の若手イケメン)の3名のコーチはキスアンドクライと試合に臨む選手のいるリンクサイドを行ったり来たり。エース・コストルナヤを含むスケーティング派はエテリ、ジャンプ派はデュダコフの引率だったのだろうか。

「でも、僕はアカチエワちゃんと一緒にお留守番だったよ。」by ロザノフ



(追記)ステップシークエンスをまとめた動画を見かけたのでペタリ(約10分)
さすがに世界トップ6ともなると皆すごい。サーシャもJGP第1戦より進化している。コストルナヤもついにレベル4。

Junior Grand Prix Final 2017/18 Ladies Stsq SP/FS GOE+Score from SashaWitchProject on Vimeo.

 


(追記)バンケットの写真

集合写真

演壇

ザギ、ボロ、タラ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする