イスラエルの諜報機関では、
「十人目の男」という危機管理システムが用いられているという。
「十人目の男」とは何か説明しよう。
情報分析の際に、
分析員たちの9人目までが同じ解釈を披露した場合には、
10人目は何が何でも前者たちとは異なる解釈をひねり出さなければならない、
という取り決めだ。
何故、このような取り決めがあるかといえば、
選りすぐりのエリートが揃いも揃って似たような解釈を述べるということは、
何かしらの先入観念が皆に横たわっていると考えるべきではないか…という叡智だ。
つまり、「10人目の男」システムは、
10人目が心ならずも違う意見を述べることで、
皆を固定観念の呪縛から解放するという方法論だ。
そして、この10人目の男には、
固定観念の解放以外にも、
特にエリートがおちいりがちな、事なかれ主義や同調圧力からの解放という効用もある。
1人目、2人目、3人目・・・・・・
と同じ解釈を述べると、
後になればなるほど異論をはさみにくい空気が熟成されてくる。
「寄らば大樹の陰」や「長きものに巻かれよ」「付和雷同」といったコトワザ、四文字熟語が日本にはあるが、
こういった同調圧力は日本固有のものでは決してない。
-他人と同じ意見を述べておけば、往々にして無難である-
という経験則は世界万国の共通項だ。
・・・・・・7人目、8人目、9人目と同じ意見が続くと、
もうダメだ。
10人目には強い同調圧力がかかり違う意見など言えよう筈がない。
例え本当は異なる解釈を持っていてもだ。
そこで、
「10人目の男は異なる意見を述べなければならない」という強制規則を作ることで、
同調圧力を無理やり取り去る。
これも「10人目の男」システムの意図するところだ。
このように、
固定観念や同調圧力というものは、兎角に厄介なものである。
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