ただの面白おかしい家族写真映画じゃない『浅田家！』

【基本情報】
製作年：2020年
製作国：日本
　配給：東宝

【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング：61/144
　ストーリー：★★★★☆
キャラクター：★★★★☆
　　　　映像：★★★☆☆
　　　　音楽：★★★☆☆

【あらすじ】
幼い頃、写真好きの父からカメラを譲ってもらった浅田政志（二宮和也）は、
昔から写真を撮るのが大好きだった。

彼は家族全員を巻き込んで、ユニークな家族写真を撮る。
消防士、レーサー、ヒーロー、大食い選手権など、
みんながなりたかった職業、やってみたかったことをテーマにコスプレするのだが、
なんと写真界の芥川賞である木村伊兵衛写真賞を受賞。

それをきっかけに日本中の家族から撮影依頼を受け、
写真家としてようやく軌道に乗り始めたとき、
東日本大震災が起こる。

かつて撮影した家族の安否を確かめるために向かった被災地で、
政志が目にしたのは、家族や家を失った人々の姿だった。

【感想】
いい映画を観たなーという印象で、読後感が清々しい。

実話ベースの映画なんだけど、この手の映画にありがちな淡々とした進みではなく、
前半と後半でかなり雰囲気が変わるのがミソ。
『タイタニック』ほどドラマチックではないけど、
あれぐらいの変わりようだなと個人的には思った。

前半は、政志による面白家族写真の話がメイン。
消防士の写真を撮るために消防車を借りたり、
極道の写真を撮るためにそれっぽい家を借りたり、
よくもまあこんなことに家族は付き合ったもんだと思う（笑）

後半は、そんな面白おかしい話とは打って変わって、東日本大震災の話。
政志は津波で流された写真を回収するボランティア活動を行うんだけど、
「家族とは何か」「写真家の自分にできることは何か」
と葛藤するところが印象深い。

僕は知らなかったのだけど、自衛隊の人たちってアルバムを別にして、
家があった場所にまとめて置いてくれてたんだよね。
それを小野陽介（菅田将暉）とリヤカーを引きながら回収して、
洗って、干して、展示して、被災者の人たちが見れるようにする。

津波で全部流されて、写真が一枚も残っていない人もたくさんいるんだ。
家族の姿をもう一度見るため、遺影にするため、
事情は様々だけど、多くの人が写真を探しに来る。
実際、こうやって集められた写真は約8万枚あって、
そのうち6万枚ほどが持ち主のところに戻ったそう。

過去を思い出すには記憶が頼りだけど、
その過去を形として残せる写真という存在が持つ意味というのは、
こういう状況だからこそ強く感じられるのかもしれない。

今年になって、東日本大震災を描いた映画は2つあった。
原発で働く人々を描いた『Fukushima 50』。
男女の運命を描いた『弥生、三月 -君を愛した30年-』。

今回の『浅田家！』は一見面白おかしい映画かと思うけど、実際はそうじゃない。
"写真"によって家族の温かさを際立たせ、
被災地の人たちに笑顔を取り戻す手助けをする
前を向いて生きていくための映画だ。

日本人なら観ておきたい1本。

映画『浅田家！』公式サイト

大ヒット上映中！「家族」を撮り続けた写真家と、彼を支え続けた「家族」の感動実話。