「午前十時の映画祭10-FINAL」にて。
1971年のアメリカ映画『時計じかけのオレンジ』。
不良少年による悪行、逮捕、収監、更生を描いた映画であるけど、
ただならぬ雰囲気を持つ映画だった。
冒頭、普通だったら
真っ黒な背景に白字で始まるであろうオープニングクレジットが、
原色全開の真っ赤な背景で始まり、
この時点ですでにこの映画の独特な世界観を予感させたよ。
性と暴力の限りを尽くす主人公グループの悪行は目を背けたくなるほどであり、
さらにモザイク一切なしで上も下も出ている映像が強烈。
そんな自由奔放な生活を続けていた主人公アレックスが捕まり、
厳しく統制された刑務所に入れられた後は、
その180度異なる環境の対比がとても印象的であり、
さらに「更生のさせ方」がポイントだったね。
新しい手法で2週間で完了するから、そのまま外に出られると。
中身はひたすら残虐な映画を見させるだけなのだけど、
その前に薬を飲ませることで吐き気を催させ、
「残虐な行為を見ると吐き気がする」と脳を勘違いさせるというもの。
確かにそのおかげで暴力の抑止には繋がるものの、
でもそれは、本人の選択によって暴力を拒絶したものでなく、
強制的に暴力との関係性を断絶したものだから、
本当の意味での更正ではないという議論も面白かった。
しかも、その残虐な映画のBGMが
たまたま彼の好きなベートーヴェンの『第九』であったことから、
その曲を聴いても吐き気がするようになってしまい、
そこだけは可哀想だなと。。。
(まあ自業自得ではあるけど)
14年の刑期を2年で終えてシャバに出るも、
昔の仲間にいじめられたり、
過去の被害者に復讐されたりと散々な目に。
ラストのね、あのベートーヴェンの曲が流れる中、
男女のセックスシーンを思い浮かべたときのアレックスの表情は、
果たして更生が効いたのか、無駄だったのか、
意味深な形で終わるのも秀逸だったな。
とにかく世界観がかなり独特な映画。
性と暴力が主軸になっているからか、
劇中のいろんなデザインやオブジェもちんちんの形をしたものが散見されたし、
主人公グループだけの造語があって、
ちゃんとした意味もわからないまま物語は進んでいくし。
(前後の文脈から何となくは伝わるから、
そこのバランスはすごいなと思うけど)
ある意味、とても中二感を強く感じる作りで、
ハマる人はすごくハマりそうだと感じました。
スタンリー・キューブリック、恐るべし。