明日香の細い道を尋ねて

生きて行くと言うことは考える事である。何をして何を食べて何に笑い何を求めるか、全ては考える事から始まるのだ。

名作シネマ鑑賞記(2)ひまわり

2023-01-21 22:26:00 | 芸術・読書・外国語
最近テレビがつまらなくなった。楽しく見られるのはサッカーかゴルフか、それか旅番組と深夜のお笑いである。そんな気分を正月ぐらいは変えようと思ってCSの懐かし名画を録画しまくった。その中の一作がこのイタリア作品「ひまわり」である。
 
ドラマはマストロヤンニとソフィア・ローレンが愛を育むシーンから始まる。昔の映画だから「かったるい進行」にイライラするが、私は一回観ているので早送りして先を急ぐ。まあ、こういう時短鑑賞法は作品に対して失礼じゃないかという意見も理解できるのだが、単純に恋愛ドラマを楽しみたいのならもっと別のピッタリのがあるように思う。それに、そういう作品ならローレンは余り適役では無いとも思う。どっちかというと「フランス映画」なんかが良いよね〜(ちょっと脱線した)。
 
話は戦争で二人が引き裂かれる辺りから「どうなるどうなる」と切迫感が増してくる。男の生存を信じて遠くロシアまで探しに行くが見つからない。あちこち男の後を辿りながら訪ねまわるが、諦めないローレン。ついに、とある家にイタリア人の男が住み着いているという情報を得る。そこから映画は急展開し、新しい妻と子供の存在が明らかになって、張り詰めていた心を粉々にした・・・。
 
そして夕方、帰る男を駅のホームで待つローレンの心が痛々しい。奥さんに言われて男がローレンに気付き、一歩踏み出そうとするその瞬間に「絶望と悲しさの感情」が一気に押し寄せて来て、振り返りもせずに彼女は列車に飛び乗った!。彼女はこの瞬間に「永遠の愛が手の届かない所に行ってしまった」のを否応なく思い知ったのである(列車内で泣き伏せる彼女が痛々しい!)。
 
ここまででも一つの映画とした完成している。しかしそれには続きがあって、さらに「愛の哀しみと戦争の悲惨さ」が、映像となって観客の脳裏に焼付けられるのだ(おおっ)。さらにローレンは、別の男と結婚し子供も生まれて静かな生活を送っているという設定。どうもこの辺りは良く見ていなかったので」曖昧である。
 
で、そこへ、マストロヤンニが長い旅の末にやって来る!(この辺りから緊迫感が徐々に増していき、MAXになる)。
 
マストロヤンニが電話を掛けるがローレンは会えないと一度は断る。が、諦めきれない彼の情熱にほだされて、とうとう住所を教えた。・・・ついこないだはストーカー殺人で日本中をニュースが駆け巡っていたばかりだというのに、こちらは「愛のせつなさ」に涙するというのでは、ちょっとギャップがあり過ぎじゃないだろうか?
 
いえいえご心配には及ばない。あちらは「断られての逆恨み」で、こちらは愛し合っているのに「運命の悪戯」で別れざるを得なかったのだ。全然違う!、天使とヤギくらいモノが違うのである!(ストーカー殺人犯よ、思い知れ!)
 
そしてその夜、運命の再会が・・・
 
だがローレンの心は変わらなかった。今は倹しくてもささやかな幸せがあり、夫と愛する子供もいて「充実した日々」を送っている。そしてマストロヤンニにも奥さんと子供がいるのだ!。昔とは全てが変わってしまった。それはあの忌まわしい戦争のせいである。
 
最後の別れの時、駅でお互いの目を見つめ合う二人の表情は、もしかしたら今頃は一緒に愛情溢れる家庭を築いていたかもしれないのに、時の流れに翻弄され、戦争という愚かな戦いで全てを奪われてしまった二人の未来を・・・そして諦めざるを得なかった「幸せ」を想いながら、その幸せが、去りゆく列車によって「永遠に失われる瞬間」を感じていた、... the end 。
 
その二人の、悲しさを通り越した虚ろな表情が切なくて、涙なくしては見られないのである、ああ・・・
 
*********
 
とまあ、映画の感動が蘇って来て、つい興奮してしまった(ティッシュはどこだっけ?)。さて、この映画で監督が描きたかったことは「戦争の悲惨さ」だ、というのは簡単である。だが本当は、もっと別の、「愛というものの本質」にあるんじゃないか、あるいは過ぎ去った青春への遠い憧れ・・・。そんな色々な感情を起こさせる傑作映画である。
 
映画は1970年、伊・仏・ソビエト連邦・米の共作とある。監督はヴットリオ・デ・シーカ、実力・名声ともに十分だ。彼の作品には自転車泥棒、終着駅、旅路などがあり、こちらも名作揃いである。俳優としても「武器よさらば」など数多くに出演していて、味のある名脇役で鳴らしていた。私の好きな「監督ベスト5」に入る監督と言える。ちなみに他の4人は、ブライアン・デ・パルマ、ビリー・ワイルダー、ジュリアン・デュヴィヴィエ、ルネ・クレールと並ぶ。私は古き良き時代のハリウッド映画とフランス映画をこよなく愛する映画ファンなのだ。
 
出演者はローレンとマストロヤンニの他に、若きリュドミラ・サベーリエワが出ている。やっぱ、ロシアンビューティ健在だね。惜しむらくは今回私が見たのは、CSの多分縮小版だと思われる。何か、筋書きの細かい部分が相当省いてあるのだ。まあ、私も早送りしてるから「どっちもどっち」だが。とにかく是非一度、皆さんにも見てもらいたい傑作である。
 
なお、VOD( Netflix とか Hulu その他)でご覧になる時は、横に必ずティッシュを置いて見る事です。探している間に大事なシーンを見逃しますよ!


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