明日香の細い道を尋ねて

生きて行くと言うことは考える事である。何をして何を食べて何に笑い何を求めるか、全ては考える事から始まるのだ。

2022年の正月は、ジュディ・ガーランドのイースター・パレードで始まった

2022-01-04 14:05:41 | 芸術・読書・外国語

去年の暮から今年に掛けてテレビを見ていると、何だかいつも華やかな気分がイマイチなかったような気がする。それもこれも、若者のテレビ離れがコロナで加速したせいかなのかどうか、紅白も相棒特番も、正月恒例のお楽しみ企画が「ことごとく」つまらなくなっていた様に思えたのは私だけではないだろう。人と人とが面と向かって語らい、共感し笑い合うことがなくなって、社会生活が家にいてパソコン越しにリモート主体で行うようになってしまえば、本当の意味のエンタテイメントは死んでしまうのではないかと憂慮している。

そこで私事だが昨年末には、恒例の「懐かしきハリウッド映画」をDVDで鑑賞し、古き良き時代の人々の「明るく素直な感情」の描写を味わいつつ、涙涙の2時間を除夜の鐘と共に過ごしたこと、ご報告する次第である。なお、作品は「イースター・パレード」という傑作ミュージカル映画で、名作曲家アービング・バーリンの美しいメロディが光る往年の名作。出演するのはショービジネス界の大スター「ジュディ・ガーランド」と、最もタキシードが似合う男と称賛された「フレッド・アステア」だ。この前年には、これまた男女の不朽の愛を描いて万人の心に残る永遠の名作「めぐり逢い」を堪能したから、今度はよりウキウキとする「ラブ・コメディの傑作」を選んでみた。

ちなみに「めぐり逢い」は私の大好きなイギリス人女優「デボラ・カー」と、理想のイケメンでお金持ちプレイボーイ役を得意とする「ケーリー・グラント」という、絵に書いたような美男美女の「涙涙の恋愛劇」であった。これについては、いずれまた詳しく書いてみたいが、今回はひとまず本棚に置いておこう。

イースター・パレードは、全編に覚えやすい歌と華麗なダンスナンバーを散りばめた極上のエンタテイメント作品。この作品は、最初「ジーン・ケリー」の主役で撮影する筈だったが、彼がくるぶしを怪我したので急遽フレッド・アステアが代役を努めたという。実はフレッド・アステアはこの2年前に引退を発表していたのだが、この作品の大成功により、「引退を取り消した」というエピソードが有名である。結果、どちらかと言えば「ガッシリ体型」でお茶目な人気者のジーン・ケリーよりは、「やや細身の弱そうな男」で、根が真面目の誠実なアステアの方がピッタリな役どころだと、世間で温かく受け止められたのだろう。ジュディ・ガーランド扮する田舎娘が知らず知らずのうちにアステアへの恋心を募らせる辺りは、さすが名監督チャールズ・ウォルターズの「さり気ない心理描写」が楽しい。

助演はタップの名手「アン・ミラー」と、こちらも豪華である。これも私の大好きな傑作ミュージカル「踊る大ニューヨーク」で華麗なタップを披露しているから、ご存知の方も多いであろう。

筋書は至って単純明快で、「恋の当て付け」から偶然で始まった師弟関係が、終いには本物の恋愛に発展してしまうという物語。それを「実にストレートに分かりやすく描いて」くれる所が、娯楽作品としてのハリウッド映画の真骨頂なのだ。勿論、ハリウッドと対比されるもう一つの映画大国「フランス映画」の魅力は、長年私の密かな宝物として「心の奥に」しまっている。ジャン・ルノワールやジュリアン・デュビビエ、そしてルネ・クレールやルネ・クレマンやなどの懐かしい名作を振り返り、またフランソワ・トリュフォーやジャン・リュック・ゴダールなどの斬新で個性的な名画を見れば、その香り高い芸術の醸し出す独特の「おしゃれな雰囲気」が私を魅了して止まないと言える。

だが年末の慌ただしい時間に観るには、ちょっと私のほうの「心の準備が出来ていない」と言ったほうがいいのかどうか。まあ、若い人なら「痛快アクションのダイ・ハード」シリーズや「身も心もスカッとするランボー」シリーズ、はたまた「人類を救う未来ロボット、ターミネーター」シリーズとか、あるいはもう少しお年を召された人なら「ちょい悪の正義のヒーロー、ダーティ・ハリー」シリーズなんかも、年末に一気見するには「ワクワクする大活劇映画」で丁度良いだろう。何より見ていて「主人公の人間像がどこまでも明快・屈強」なのがいい。そういう意味ではこの「イースター・パレード」も登場人物には一点の疑問も感じさせない単純至極で、素直な愛すべき人柄を描いて余すところが無い。

そう、我々が求めるのは「性格が異常な連続殺人犯とか放火大量殺人犯の謎に満ちた心理」などではない。愛すべき普通の生活をしている隣人が、「ひょんな」事から巻き込まれて起きるドタバタ劇を「面白可笑しく」描いてくれるコメディなのだ。これにさらに恋愛が絡むとくれば、正に年末に相応しい「一家団欒で楽しめる」というコンセプトにピッタリなのである(まさか年末に、夜独りで「貞子」を見たいというような人は、まずいないと思うけど・・・)。

イースター・パレードの粗筋は、アン・ミラー扮する女性ダンサーが突然ダンスのパートナーを解消すると言い出した所から物語が始まる。怒ったアステアが相手の鼻を明かしてやろうと「場末の踊り子」ガーランドを引っ張り出して、猛特訓して舞台に出るが中々上手く行かない。そんな中、久し振りに再会したアン・ミラーから「私の真似をさせないで」と言われて「ハッと気付いた」アステアのアイディアで、急遽ガーランドに個性的な役柄を与え「大成功」を収めるというもの。そこでようやくアン・ミラーを見返すことが出来たアステアだが、自分はそのために利用されただけだと知ってガーランドは落ち込んでしまう。アステアが、もうアン・ミラーのことなんて、どうでもいいんだ。今は「君のことを愛している!」と告白するが、イマイチ信じきれないガーランド。この辺りの細かい「すれ違い演出」は、ハリウッド映画のお手のもので心憎い。

いやーもう、この段階でわたくし実は「幾度と無く号泣!」しているのであります!(テッシュが足りなくなるぅ〜)。

そしてハリウッドお約束のハッピーエンド、イースターのお祭りでごった返すニューヨークの目抜き通りを、二人仲良く着飾って歩く「アステアとガーランド」の長引きシーンが美しい。そしてエンドロールの群衆をバックに流れるのがアービング・バーリン作曲の超ヒット・ナンバー、歌姫ジュディ・ガーランドの歌う「イースター・パレード」なんである!。これがまた号泣に次ぐ号泣、と来るからもう堪んないですねぇ!

という訳で、私の大晦日は「名画で号泣」でした。


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