雑談の達人

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続「お客様第一主義」の弊害

2009年05月24日 | ビジネスの雑談
前回のブログ記事では、日本の多くの会社が重要な経営理念として掲げている「お客様第一主義」が、実のところ万能ではないということを書いた。いわゆる「クレーマー」の登場のほか、商社のような仲介業務の場合、顧客側にべったりではビジネスは成り立たないのである。その他にも、筆者のような一介の中小企業の営業マンであっても、お客様第一主義の弊害を痛感するような事例をよく見聞きする。筆者が特に問題視しているのは、以下の二点である。

1.製品のスペックが過剰になりがちである

「お客様第一主義」を徹底すると、個々のクレームに真摯に対応することよりも、クレームの発生そのものを封じてしまおうという発想になる。そこで、ありとあらゆる問題を事前に想定し、製品の品質を限界まで高め、文句のつけようがないものを作ろうとする。お客の立場を踏まえているようで、実は面倒な客との対話を放棄しているのだ。

そうすると、当然ながら製造・管理のためのコストがかかる。しかも、多くの客がそこまで求めていないようなレベルの機能がついていたりする。その結果、必要最小限の機能を持ち、そこそこの品質を備えている手ごろな価格の製品に敗れたりするのだ。日本のパソコンや携帯が、海外市場においてはあまり売れていないのは、その典型である。

2.「目の前のお客様」第一主義に陥りやすい

お客様第一主義の「お客様」とは、いったい誰なのかということが重要である。もちろん、販売する製品の最終消費者のことを指すはずであるが、日頃接触している目の前のお客様が、最終消費者であるとは限らない。製品の卸先は、家電量販店、スーパーなどの小売店であったりする。他にも、たとえば自動車部品メーカーの場合は、直接の客先は自動車のエンドメーカーであり、車のユーザーではない。

目の前の客への対応を優先すると、更にその向こう側にいる人々のことは後廻しとなる、そうなると、最終製品の消費者はニの次になり、「スーパー様第一主義」「家電量販店様第一主義」「エンドメーカー様第一主義」になる。最終消費者からの満足を得られなかったとしても、とりあえず目の前の客先がこれでよしとしてくれるのであれば、それで十分だということになりやすい。また、最終消費者にとって必要なものなのに、販売店やエンドメーカーの都合で市場への投入が却下されるなどということも起こりうる。

食品の産地偽装や賞味期限の改ざんなどは、最終消費者よりも小売店の便宜を図ったものであり、まさに「目の前のお客様第一主義」が生んだものだと言えよう。

今のところ、「お客様第一主義」に反対するような声はあまり聞かれない。これまでの日本の企業の目覚ましい成功は、「お客様第一主義」によるものが大きかったためだろう。過去の成功体験を否定するのは難しい。しかし、国家にせよ企業にせよ個人にせよ、過去に繁栄をもたらした要因と同じ要因で没落していくことが多いのは、歴史の示すとおりである。

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