親愛なる日記

僕が 日々見つめていたいもの。詩・感情の機微等。言葉は装い。音楽遊泳。時よ、止まれ!

オリオンその後

2005年09月02日 | 男と女
ー中略ー


その時のことを、彼女は何年間も考え続けた。

つかの間の出来事だったし、実際に感じたのは、オリオンの腹に生えた砂まじりの毛が彼女の肌を引っかく感触くらいなものだった。

ことを済まして、早くもぐうぐういびきをかいているオリオンを彼女はわきへ押しやった。いびきが大地を揺さぶった。月日が経っても、その時間は生々しく、変わらぬまま彼女のなかで生き続けることになる。

彼女はそれを違ったものとしては考えようとはしなかった。

記憶のなかで柔らかくしたり、硬くしたりしようとはしなかった。

あくまでそのままの形で保持し、両手で何度もひっくり返してみた。

アルテミスの復讐は迅速だった。

単純で、これ以上ないというくらい屈辱的だった。

彼女はサソリを使ってオリオンを殺したのである。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿