親愛なる日記

僕が 日々見つめていたいもの。詩・感情の機微等。言葉は装い。音楽遊泳。時よ、止まれ!

五行の業が午前の私に与えたもの

2008年12月02日 | 男と女
                *

なにか もの静かなものを思い描こうとして

台所の棚に 口の欠けた急須が残っていたのを思い出した

そこからの連想で昔の恋人のことが 心に浮かんだが

その人に対する責任は もう時効になった  と考えている私は

この詩の中の私で 現実の私ではない

                *

あのときは 口先で謝っただけだった と

涙ながらに詫びる男が 今回のは本気だ と差し出すのは数枚の紙幣

確かに 紙幣は偽札でない限り 嘘をつかないし

ときには言葉以上に 雄弁だとも思えるが

こめられた意味は荒々しく 一義的で韻律にも欠ける

                *

生々しい感情は ときに互いに殺しあうしかないが

詩へと昇華した悲しみは 喜びに似て

怒りは 水の中でのように 声を失う

そして嫉妬が あまりにたやすく 愛と和解するとき

詩は 人々の怨嗟さえ 音楽に変えてしまう

                *









                *









                *

昨日を忘れることが 今日を新しくするとしても

忘れられた昨日は 記憶に刻まれた 生傷

私には癒しであるものが 誰かには絶えない鈍痛

だが その誰かも 私に思い出させてくれない

私の犯したのが どんな罪かを

                *

その人の悲しみをどこまで知ることが出来るのだろう

目をそらしても耳をふさいでも その人の悲しみから逃れられないが

それが自分の悲しみではないという事実からもまた 逃れることが出来ない

心身の洞穴にひそむ 決して馴らすことの出来ない 野生の生きもの

悲しみは 涙以外の言葉を拒んでうずくまり  こっちを窺っている







                 五行『夜のミッキーマウス』より 一部抜粋



実を言えば、最後の2行はあまり気に入っていない。

でも、代わりになる言葉を探すのも難しい。



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