昼食を食べに出かけた、とある日曜日。
ボーダー・コリーがひとりでフラフラ歩いていた。
適度にフレンドリーで、寄ってきて触らせてくれるし、
犬にもクールで、なかなかいい子だ。
それにしても、どこの子?飼い主は誰?
首輪もリードもない。
うっかり閉め忘れたドアから出ちゃったのか?
迷って焦ってる感じではないから、近所に住んでるのか。
日曜の昼時だから犬の散歩も多い。
だけど、誰もどこの犬かわからない。
みんな愛犬家だから、車が通る道路でウロウロしている犬を、
放り出して行くことができない。
大型犬を連れた飼い主さんが家に電話して、リードを持ってきて
くれるよう頼んでいた。
とりあえず一時的に保護することになり、安心してリードを待っていたその時。
突然走り出したボーダーちゃん。
たった今、横を通り過ぎていった自転車を追いかけていく。
ボーダーだから走るものを追っちゃうのか?
いや違う。あれはきっと飼い主だ。
ボーダーは自転車の後について、道を左に曲がり、
あっという間にいなくなってしまった。
後に残された一同、しばし呆然。
「・・・あれ、飼い主ですよね?」
「そうでしょうね。いったい何なんでしょうね」
「ま、とりあえずよかったってことで。お世話さまでした」
「じゃ、失礼しま~す」
と、それぞれ本来の用事に戻ったのだった。
しかしねえ。
飼い主、探してるふうでもなかったから、はぐれたのではないんだよね。
ああやって首輪もつけないで散歩しているのは、日常のことなのかもしれない。
賢くて忠実で性格もいい、飼い主にとって自慢の愛犬なのだろう。
でもどんなによくできた犬だとしても、この飼い主、想像力が足りないよね。
私たちは、もしものことがあったらと心配で、そのまま放っておけなくて、
みんな自分の用事を中断して時間を犠牲にして、なんとかしようと思ったのだ。
だけどこの飼い主の目には、犬仲間が井戸端会議している
くらいにしか見えていなかったろう。
もうちょっと飼い主の来るのが遅かったら、
もうちょっとリードが早く届いていたら、
ボーダーは保護されて、飼い主大慌てだったかもしれないのに。
そうなってほしかった。
と意地悪な私は、心底残念に思ったのだった。
ばまちゃんも呆れて、ベロをしまい忘れました😾