水彩画の楽しみ

2009年03月03日 | アート・文化

 

「仕事=人生」とずっと頑張ってきた日本式サラリーマン、リタイアを迎えてその後の長い人生をどう過ごすか考えている人も多いだろう。「俺は酒とゴルフで十分」と豪語される方は別として、文化的なことにも挑戦したいと思う方も多いはず。芝原稔さんにお願いして「水彩画の楽しみ」というタイトルで、コメントと作品の一部をこのページで紹介させて頂くことにした。

水彩画の楽しみ  芝原 稔

Ap130_2 年金生活に入った時、今後の人生を如何に楽しむか、色々と計画を立てた。先ずは旅行だが、海外・国内・近場の散策を含めて行きたい所は随分ある。前々から楽しんでいたガーデニングも充分に楽しみたい。本格的な取り組みが出来なかったビデオカメラの撮影と編集にも挑戦したい。それに、春夏秋冬、晴雨にかかわらず、又費用面からもあまり負担が掛からず、一年中楽しめる趣味をもう一つ加えたいと思っていた。(作品:異郷で思う・2009年・F10号)

その時偶々出会ったのが「武蔵野写生会の絵画展」であった。一目見て描かれた武蔵野の自然の美しさ、その色彩の美しさに感動し、水彩画に魅了された。それにもまして、今思うと無知にして無謀な考えだったが、これなら私でも挑戦できるという単純な想いであった。

Ap131_2 絵画教室に入門し、同好会にも参加し、次第に水彩画の魅力にのめり込んだ。約8年前である。(殆ど読んでいないが)水彩画の本も随分購入した。絵画展も幾たびか訪れた。そしてその都度、その先生の画法に感動し、入門、一時は週に6ヶ所の教室に通う日が続いた。こんなことが長く続く筈がない、まして上達する筈もない、試行錯誤の結果、今では静物・人物・風景の写生を、月に夫々3枚程度描いて楽しんでいる。そして何時かは六本木の国立新美術館の公募展に入選することを念願していた。今年2月、其の目的は何とか達成できたが、更なる飛躍を目指して、次の公募展への挑戦に、最後は水彩画の個展を夢見ている。愚かなる老人の念願か? (作品:ぶどうとマンゴー・2008年・F10号)

 最近、趣味の教室の中で、絵画教室なかんずく水彩画教室は何処も盛況の様である。公園などでは写生を楽しむ人々で賑わい、絵画展も賑わっている。どうしてこう人気が高いのか。美しい景色・色とりどりの花など見たとき、何とか記憶に留めたいと思うことがある。確かにカメラの撮影でも目的は達成できる。だが絵画は、ありのままの写実的な描写に、気の向くまま、追加・削除・自分の想いを加味して描くことが出来る。又1時間描くことによって、1時間の観察が出来、思いもかえないような自然の妙味を味わうことが出来る。(作品:初秋の御岳渓谷・2004年・F6号)

 特に水彩画は(最近流行の透明水彩は)用紙・絵の具・水さえあれば簡単に描け、油彩画・日本画に比べ、費用も安い。紙の白さを生かしながら、水を使う水彩画は、水加減一つで無限の効果を得ることが出来る。しかも絵の具の混色、塗り重ねで紙にしみこみ、乾いていく段階で予期せぬ美しい効果が現われる。一方、絵の具の垂らし込みに失敗すると、原則として油絵のように修正が出来ない怖さもある。(作品:ワインとりんご・2006年・F8号)

水彩画を始めた当初は、そこそこに卒業して、油絵を始めたいと思っていたが、水彩画の奥は深く、卒業どころではなく、益々其の魅力にはまりこみ、悩む日々である。平成4年から平成9年までの作品4点を添付したが、恥ずかしい程進歩のあとがない。これでは卒業どころか、一生かかっても、満足出来る作品は出来ないと思う。更なる飛躍に挑戦させられるところも水彩画の魅力の一つと思っている。

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第18回全日本アートサロン絵画大賞展 国立新美術館

Ap153_3 芝原さんの友人からメールで、「芝原さんの水彩画作品が国立新美術館の公募展で入賞したよ」と書いてあって、早速出かけることにした。平日の午前Ap150_3中だったがかなりの盛況ぶり、絵画愛好家が増えているなと実感した。先ずは芝原さんの作品探し。あった、「静物 芝原稔」、と。写真の作品、素人の感想で申し訳ないが、先ずは構図が良いな、玉蜀黍の描写はすごいな、色使いも優しく、まるでモーツアルトのセレナードを聞いているような感覚にとらわれた。彼の寄稿文では誰でも水彩画に挑戦できるようなことが書いてあったが、このような絵が描けるのは持って生まれたセンスもあるのだろう。芝原さん!おめでとう。

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Ap160

国立新美術館 The National Art Center, Tokyo

Ap162 建設準備のため設けられた準備委員会の名が、新国立美術展示施設(ナショナル・ギャラリー)設立準備委員会(平山郁夫座長)、新国立・・・の印象があったのか、「国立美術館」と呼ぶ人が多いが、正式名称は「国立美術館」。あまりにも簡単な名前が付けられたと思うが、経緯を見ると意味が良く分かる。独立行政法人国立美術館の一組織となるため、既設の4美術館との並びから「国立〇〇美術館」とすることにして、既存の美術館にない「新たな機能を持つ」という館の特色を表す意味の言葉から「新」を館名の盛り込んだという。名前は全国公募だったそうだが、何だかはじめから決まっていたように思える。

Ap164 設計は黒川紀章、設計期間は2年間、建設工期は約4年間、総工費350億円をかけて2006年6月14日に竣工した。企画展用展示室(2,000㎡)が2室、公募展用展示室(1,000㎡)が10室、天井高は5mある。建築デザインもさすが黒川紀章が設計したものと感心する。アトリウムの空間は外部との連続性が保てる構造、これだけガラスを使っているがガラスのルーバーとペアガラスの組合せで紫外線を完全にシャット、太陽熱もカットする省エネ設計となっているそうだ。また設計にあたって主目的が公募展なので、作品の搬入搬出の経路、順番待ちのトラックの停駐車ルート、審査員が快適に審査できるようにバックヤードが工夫されているそうだ。

 


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