上海日本商工クラブと社会貢献

 

上海日本商工クラブ　2008年希望工程事業

昨年上海を訪ねたときに、上海日本商工クラブの社会貢献委員長をされている森敏氏と会った。森氏は日本を代表する電機メーカーの上海での企業集団の代表で、上海のビジネス環境を聞かせていただくのが目的だったが、会食をご馳走になったとき彼が上海日本商工クラブで関わっている希望工程事業のことを聞いて感動した。昨日出張で日本に戻られて活動をまとめた資料など頂き、ご了解を得たので紹介することにした。（写真：小学校建設現場を視察する森敏氏）

上海日本商工クラブは２００７年から希望工程事業に取り組み、安徽省六安市に小学校２校建設援助、２００８年にも安徽省利辛県に２校の建設援助を行った。利辛県は安徽省西北部に位置し、面積1950平方ｋｍ・人口147万人の農村部で中国政府の貧困基準である一人当たりの年収500元を下回る貧しい農村地域。1965年に貧困地域に指定されたが今もなお厳しい生活は改善されていない。森さんたちはこの利辛県の馬店孜鎮と胡集鎮に小学校２校の建設援助することにした。馬店孜鎮は人口７万人の農村、文字の読み書きも出来ない人も多くいる。道路は乗用車が通れる道は少なく、子供たちの楽しみは犬と遊 ぶかどろ遊びくらい、親たちは子供が教育を受けて一人前になって欲しいと願っている。チャン・イーモウ監督の「あの子を探して」をご覧になった方はその情景通りである。馬店孜鎮の瀋営小学校は1960年に建設されたが老朽化進み建てかえる費用が無かった。上海日本商工クラブはこの小学校の建替え援助をすることになった。2008年8月5日工事状況を視察するために上海日本商工クラブ・森敏社会貢献委員長をはじめとする視察団が瀋営小学校の建設現場を訪ねた。四川省の 地震のあともあったので、厳格な品質検査も行うために日本の建築会社の専門家も同行した。50年の保障期間以上の品質で工事されていることを確認した。このとき森社会貢献委員長は今回の視察の目的として、「2007年より２校づつ建てていく目標で、今年も２校建設、希望工程で建てられる小学校、安全・品質・工程が重視されて進められているかの視点で監査」とコメントした。

このあと一校はもう一つの建設現場である胡集鎮の陳営小学校を訪ねた。胡集鎮には衛生的にも問題がある学校が多くこの小学校もその一つだ。こちらは着工も早く、工事も順調で１ヵ月後には竣工する状況だった。出迎えてくれた人の中にこの小学校の校長先生だった陳建架さん（写真）、昨年６０歳で定年退職だったが新しい校舎が出来るまで子供たちを見守っていたいということで学校で仕事を続けている。

利辛県馬店孜鎮上海日本商工会・沈営希望小学校

2008年10月18日、馬店孜鎮の瀋営小学校の新校舎の開校式典が行われた。右が新校舎、左が旧校舎。式典で上海日本商工クラブ宮口丈人理事長は「新しい校舎で学ぶ子供たちを心豊かに育み、そしてこの地域の発展に繋がることを祈っている。」、子供たちには「大きくなったら中国と日本が 仲良くなって一緒に素晴らしい国になるよう力を発揮して下さい」と話した。写真右が宮口理事長、中央が森社会貢献委員長。新しい小学校の正式名称は「利辛県馬店孜鎮上海日本商工会・沈営希望小学」と名付けられ、写真は除幕式。式典後新しい校舎を見学したが、教室の中にはマルチメディア教室として将来テレビやパソコンなども設備されると聞いてこの学校の将来に夢が膨らむ。

利辛県胡集鎮上海日本商工会陳営希望小学校

先に紹介した陳建架校長も笑顔で出迎えてくれた陳営希望小学校。上海日本商工クラブの30万元の援助で2008年5月に建設が始まり、9月から290名の生徒達は通学している。宮口理事長は「上海日本商工クラブの援助で建てられた学校で学んだことがきっかけとなって日中友好のために頑張ってくれる子供が一人でも二人でも出てくれたらありがたい」とコメントした。子供たちの夢は、「教師なりたい」、「科学者に」、「宇宙飛行士に」、「オリンピックに出たい」といっぱいだ。

森さんは大変真面目な方で、国内で一緒に仕事をしたときは営業の責任者だったが、顧客との打ち合わせでは自社の設計者たちが同行していても技術のハードネゴでは森さんが仕切っていた。ときどき夕飯をいっしょにしたが、９時ごろ別れると彼は事務所に戻って仕事をしていたようだ。上海で再会したとき、この希望工程事業を語ってくれたが、その目は大きなビジネスと取り組んでいるように輝いていた。