伝えるネットねこレポート

「水俣」を子どもたちに伝えるネットワークのブログ。
首都圏窓口の田嶋いづみ(相模原市在住)が担当してます。

水俣病原因企業チッソにひとこと

2010-10-30 19:29:55 | 水俣レポート
水俣病原因企業チッソにひとこと、のチャンス

  うわぁ、液晶生産で世界の5本の指に入る大企業・チッソに直接メールしちゃった・・・!

  11月2日までだけど、みんなもメールしようっ!



水俣病の原因企業であるチッソは、水俣病被害の救済に決着をつけ、あわよくば加害企業の看板を降ろすことができないかと目論んでいる分社化のための「分社化事業計画」を策定。環境大臣の認可を得る前手続きとして、突然「11月2日までに意見を」というパブリックコメント募集を社のHPで始めました。

 「11月2日までに意見を」 パブリックコメント募集

    
思うのですが、地球に海はひとつしかなくて、チッソは、捨ててしまったメチル水銀の回収なんかしてないのです。だから、水俣病事件の決着なんて、地球がなくなるまで終わらない。まだまだ、被害者の掘り起こしだってできていないのです。分社化は、去年の7月に、政権交代のどさくさにまぎれて成立した「水俣病被害者救済特措法」にあるもので、だから、世間では「水俣病加害者救済法」と言われたりしています。

それにして、パブリックコメントの公募って、ほかの官庁、自治体なんかの案件でもそうですが、どうして、こう、突然にそっと、まるで、知られたくないかのように行われるのでしょうか。祭日がらみや、年末年始がらみとかが多い気がするのは、たまたま、私の体験がそうだったから?それにしたって、ほんとなら、会社の偉い人が現地へ赴き、患者や地域住民の意見を聞くべきところを、パソコンでの意見集約で、「世論の納得を得た」とするって、どうなんだろう。

でも、まぁ。せっかくの機会なので、(前にチッソ水俣工場の見学に行ったときなんか、いろいろと手続きがあった挙句、子会社の人にしか説明してもらえなかったもんね)、メールしてみました。HPには「意見はもらっても返事しません」ってあったので、ついでに、こんな内容でメールしたということを知ってもらうために本文を以下にコピーします。

「どうして毒だってわかってたのに、海に捨てたの?」というのは、子どもたちからいちばん出る質問。メールしながら、そっか、チッソに直接訊いてみればいい、と気づきました。今まで、そんなこと、一度も気づかなかった・・・。


―――――――――以下、パブリックコメント応募本文――――――――――

チッソ株式会社 御中

私たちは、市民の立場で、水俣病事件の学びが、全てのいのちに関わる学びと受け止め、だからこそ、自分たちの街のともにくらしていく仲間と学びを深め、私たちの街に生かそうとしているグループです。
その立場から、今般、貴社HP上におきまして「事業再編計画(案)の概要」を拝見し、ひとこと、ご意見を申し上げます。



●事業会社の分社化は、これまでの「必死の努力」の成果をこわします。

冒頭、貴社は「当社は、患者の皆様に対する補償責任の完遂を経営の至上命題に掲げ、必死の努力を重ねてまいりました」と、述べられております。
加害の重さ、深さを自覚されているなら、「必死」にならなければなりません。
しかし、加害の当事者であるなら、自らの「必死」さを、公言してはなりません。
「必死の努力」を評価するのは、被害を受けた側にあるからです。また、傷ついたいのち、失われたいのち、に対し、「ここまででよい」という「必死の努力」の終焉はありません。
「努力」は永劫にわたってなされることによって「必死」になりうると考えます。



●事業会社は、子どもたちの問いに答えられるでしょうか。

私たちは、主に、子どもたちとともに水俣病事件に向き合い、学びを深めていく活動をしております。
子どもたちとともに学びに向き合って、10年以上、その数は10000人にものぼります。
子どもたちとのやりとりこそが、その学びを深めてくれると実感していますが、子どもたちから寄せられるいちばん多い問いは「なぜ、毒とわかっていたのに海に捨てたのか?」です。

私たちは、つたないながら、子どもたちと出会うたびに、この問いを自分に繰り返してきました。
まだ、答え切れません。
それこそ「必死」に、答えを探さなければならないと考えています。
二度と再び、このような公害病を起こさないための答えだからです。
子どもたちには、人間が起こした病気だから、人間だけが止められる、と伝えています。

貴社は、この答えをお持ちのはずです。教えてください。
事業会社は、この答えを実現されたどのようなシステムをお持ちですか。
技術的なこと、人的要因のこと、企業理念にわたるまで、多様なお答えがあると存じます。
子どもたちに伝えられる答えを渇望しております。

これは、今般の「事業会社の概要」の冒頭に書かれるべきことと思います。
「5)環境保全」として、「環境への化学物質・廃棄物等の排出量削減に取り組み、事業活動による環境負荷の低減に努め」るとありましたが、その答えとは思えないのです。
「努め」ていなかったから、水俣病は起きたのですか?


●「チッソ」でありつづけることこそ、貴社の企業の誇りを実現します。

市立水俣病資料館はこの10月に入場者数70万人を迎えられました。
水俣病という病名を引き受け、正面から向き合うことによって、希望を耕し、未来を拡げた水俣市民のみなさんに深い敬意を覚えずにはいられません。

貴社後藤俊吉会長は、分社化を「水俣病の桎梏からの解放」と謳いあげられて環境省から注意を受けたと聞き及びました。
「水俣病の桎梏」は、加害企業となった貴社にとって起死回生の「桎梏」だと思えます。
私たちは、子どもたちと水俣病事件に向き合うとき、キーワードを「希望」としています。
同様に、貴社は、「必死の努力」によって、この「桎梏」から、企業理念をたたきあげるべきです。
あるいは、その理念をすでに手にされているなら、「チッソ」の名でこそ引き継ぐべきではないでしょうか。

すでに、環境問題は「ただひとつの地球」という姿として課題となっていることは、自明です。
そうしたなかにあって、従来の経済至上の企業経営は過去のものとなります。
いわゆるCSRだけでなく、社会的価値の付加によって企業活動が保証されていく時代を迎え、貴社のありかたが向後100年を超える人間の経済活動のさきがけとなりうるのではないでしょうか。

貴社が「桎梏」と捉えているのならなおさら、正面から深く向き合うことを期待します。

私たちは、子どもたちと難しければ難しいほど、逃げたいなら逃げたいほど、正面から向き合わなければ解決は見えてこないね、と語り合っております。
水俣病被害地出身で、だからこそ、地元で水俣病を教えたい、と教職をめざしている若者たちとも出会うようになりました。
あの加害企業である「チッソ」で働くことを誇りとする若者が集まることは、貴社の未来を培うはずです。

水俣の人たちが水俣を誇りとし、未来を展望していることを、いまだ、他の地域の人間は知りません。
実際に、水俣の子どもたちが、ただ水俣にくらすというだけで心無い言葉を投げつけられることがあることも知っています。そのことに、私は市民として責任を感じないではいられません。
貴社は、そのことになおさらに責任を感じていらっしゃるでしょうか。貴社の加害が、なおも、差別を生み出していることに暗澹たる思いと拝察します。

私は、市民の責任において、あるいは、子どもたちの未来に対し責任ある大人として、水俣病事件の事実を知り、水俣のひとたちの気持ちに人間的想像力を寄せ、差別をなくすことに、くらしの場から努力していくことをお約束したく存じます。
貴社とともに、その列に加わることができるなら、さらに喜びとします。


以上。長々しくなりましたが、意見公募に応え、送信させていただきます。

なお、個別の回答をされない、とのことですが、意見を整理され、HP上はもちろん、HP以外でも、ご回答ならびにご見解を開示されるようお願い申し上げます。

2010年10月30日

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