勤務先、それも比較的規模の大きい会社の経理業務を任された場合には、何が記帳の対象で、それらをどのようにして帳簿に記録していくかが明確です。しかし、自ら会社を設立した場合にはこの点が明らかではありません。
◆記帳のスタートは出資金を記録すること
記帳のスタートは設立に際して出資した資金を記録することです。出資が100として仕訳は次のとおりです。
≪借方≫預金100≪貸方≫資本金100
この預金100が、会社が使える資金です。会社はこの資金で販売する商品を仕入れ、事務所や倉庫を借り、人を雇うのです。この資金の動きを記帳しなければなりません。
◆経営者の立場(会社から給料をもらう)
経営者(代表取締役)は会社から給料(役員報酬)をもらいます。会社から経営者への支払いはこれのみです。もし、これ以外の支払いが経営者に対してなされた場合には、それは給料ではなく貸付金です。貸付金ですので、経営者はそれを返金しなければなりません。当然、利息も支払う必要があります。
◆株主の立場(会社から配当をもらう)
株主は出資の対価として配当金をもらいます。会社から株主への支払いはこれのみです。株主は配当以外の支払いを要求することはできません。
◆中小企業における経営者と株主の特殊性(会社に対する影響力が大きい)
会社の資金は、「株主からの出資」「製品・商品などへの投下」「販売代金として回収」「回収した資金の再投下」というサイクルを繰り返します。規模の大きい上場企業では、このサイクルを記録する帳簿に経営者や株主が登場することはほとんどありません。しかし、「大株主=経営者」である中小企業では、株主や経営者が頻繁に帳簿に登場します。
◆経営者からの臨時の資金調達
中小企業の場合には、会社が資金に窮した際には経営者が自らの資金を貸付金(会社からすれば借入金)として提供しなければなりません。そして、資金に余裕が生じた際に経営者に返済します。これは中小企業の宿命です。中小企業では、株主からの追加出資(増資)や取引銀行からの全面的なバックアップは望めないからです。
◆経営者との不動産などの賃貸借
「会社所有の不動産を経営者に自宅として貸す」「経営者所有の不動産を会社に事務所や倉庫として貸す」、このような賃貸借取引が経営者の「会社に対する支配力」が強い中小企業では生じます。
◆簿外の取引
「経営者からの臨時の資金調達」「経営者との不動産などの賃貸借」はいずれも会社の資金が動きますので記帳漏れになることはありません。しかし、会社の資金の動きには表れない取引があった場合、その取引は帳簿には表れない、いわゆる「簿外の取引」となってしまいます。その典型は、経営者のポケットマネーによる会社の費用の支払いです(交際費や交通費で発生することが多いです)。
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★企業実体の公準
会計の書物では必ず「公準」について説明されています。公準とは「会計の前提」のことで、「企業実体」「継続企業」「貨幣的測定(評価)」の3つです。企業実体の公準は、会計の対象は企業(会社)であり、企業(会社)の資金の動きを記録して決算を行うということです。
会計の書物では、企業実体の公準についていとも簡単に説明していますが、中小企業では「実体を把握」することがそう簡単ではありません。
★決算書は会社の立場で作成する
企業実体に関して、決算書は誰の立場で作成するのかということも理解・認識しておく必要があります。決算書は「会社の立場」で作成します。
「会社から経営者に給料を支払う」「会社から株主へ配当を支払う」「会社が株主から出資を受ける」「会社が経営者から資金を借りる」、このようにして経理処理をします。
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◆記帳のスタートは出資金を記録すること
記帳のスタートは設立に際して出資した資金を記録することです。出資が100として仕訳は次のとおりです。
≪借方≫預金100≪貸方≫資本金100
この預金100が、会社が使える資金です。会社はこの資金で販売する商品を仕入れ、事務所や倉庫を借り、人を雇うのです。この資金の動きを記帳しなければなりません。
◆経営者の立場(会社から給料をもらう)
経営者(代表取締役)は会社から給料(役員報酬)をもらいます。会社から経営者への支払いはこれのみです。もし、これ以外の支払いが経営者に対してなされた場合には、それは給料ではなく貸付金です。貸付金ですので、経営者はそれを返金しなければなりません。当然、利息も支払う必要があります。
◆株主の立場(会社から配当をもらう)
株主は出資の対価として配当金をもらいます。会社から株主への支払いはこれのみです。株主は配当以外の支払いを要求することはできません。
◆中小企業における経営者と株主の特殊性(会社に対する影響力が大きい)
会社の資金は、「株主からの出資」「製品・商品などへの投下」「販売代金として回収」「回収した資金の再投下」というサイクルを繰り返します。規模の大きい上場企業では、このサイクルを記録する帳簿に経営者や株主が登場することはほとんどありません。しかし、「大株主=経営者」である中小企業では、株主や経営者が頻繁に帳簿に登場します。
◆経営者からの臨時の資金調達
中小企業の場合には、会社が資金に窮した際には経営者が自らの資金を貸付金(会社からすれば借入金)として提供しなければなりません。そして、資金に余裕が生じた際に経営者に返済します。これは中小企業の宿命です。中小企業では、株主からの追加出資(増資)や取引銀行からの全面的なバックアップは望めないからです。
◆経営者との不動産などの賃貸借
「会社所有の不動産を経営者に自宅として貸す」「経営者所有の不動産を会社に事務所や倉庫として貸す」、このような賃貸借取引が経営者の「会社に対する支配力」が強い中小企業では生じます。
◆簿外の取引
「経営者からの臨時の資金調達」「経営者との不動産などの賃貸借」はいずれも会社の資金が動きますので記帳漏れになることはありません。しかし、会社の資金の動きには表れない取引があった場合、その取引は帳簿には表れない、いわゆる「簿外の取引」となってしまいます。その典型は、経営者のポケットマネーによる会社の費用の支払いです(交際費や交通費で発生することが多いです)。
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★企業実体の公準
会計の書物では必ず「公準」について説明されています。公準とは「会計の前提」のことで、「企業実体」「継続企業」「貨幣的測定(評価)」の3つです。企業実体の公準は、会計の対象は企業(会社)であり、企業(会社)の資金の動きを記録して決算を行うということです。
会計の書物では、企業実体の公準についていとも簡単に説明していますが、中小企業では「実体を把握」することがそう簡単ではありません。
★決算書は会社の立場で作成する
企業実体に関して、決算書は誰の立場で作成するのかということも理解・認識しておく必要があります。決算書は「会社の立場」で作成します。
「会社から経営者に給料を支払う」「会社から株主へ配当を支払う」「会社が株主から出資を受ける」「会社が経営者から資金を借りる」、このようにして経理処理をします。
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会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語 | |
田中 靖浩 | |
日本経済新聞出版社 |