【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
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借入金の使途と経理処理

2021-12-18 20:01:00 | 経理業務(帳簿の作成)
借入金をするようになると経営者の利益計算の感覚が混乱します。利益は「収益-費用」として計算しますが、借入金のないうちは「収益は入金」に「費用は出金」に一致します。それが、借入金をするようになると、「負債」という収益や費用とは直接的に関連しない要素が加わってくるからです。

◆借入金で調達した資金を何に使ったか(資金を使うまでは利益に影響しない)

借入金をすれば資金(通常は預金)が増えます。利益に影響が出るのはこの資金を使ったときです。

借入金で得た資金の使途は様々で、運転資金に使った(仕入、人件費、家賃など)、設備投資をした(減価償却費)、研究開発に使った(主に人件費)、別の借入金の返済に充てた(いわゆる借換え)、資金を手元に置いている(不時への備え)といった具合です。この借入金の使途とその経理処理を正確に認識しておかないと利益計算に混乱が生じます。

資金を使ったからといって、その額が直ちに費用となるわけではありません。減価償却費として複数の年度にわたって費用となる、在庫として翌事業年度以降に繰り越される、土地は資産計上されたまま(費用とはならない)など様々なケースがあります。

◆借入金による資金調達そのものは利益に影響しない

借入金という勘定科目は、借入金で資金を得たという「一瞬」しか「仕訳」として登場しません。しかも、借入金は負債ですので、「収益-費用」という利益計算とは一切関係しません。借入金をしても、借入金という負債が増えて現金預金という資産が増えるだけですので利益には影響しません。利益に影響がでるのは資金(現金預金)を使ってからです。

◆借入金の返済も利益に影響しない

次に借入金という勘定科目が動く(減る)のは返済したときです。これも負債の減少ですので利益計算に影響しません。借入金の返済というのは企業にとって資金の負担が大変大きいですが利益計算には影響しないのです。利益計算に影響しているのは上記のとおり、借入金で得た資金を使ったという局面です。つまり、利益への影響は返済に先行しているということです。ただし、資金の使い方によっては返済が費用に先行する、場合によっては返済のみが生じるというケースもあります。

◆利息は資金調達のコストとして利益に影響する

通常の借入金(会社代表者やグループ会社からの借入金以外)は一定の利息を支払う必要があります。利息というのは借入金で資金を調達するためのコストですので利益計算(収益-費用)における費用になります。

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★借入金の経理処理は意外と簡単

上記のとおり借入金の経理処理は意外と簡単です。借入金という勘定科目は借りたときと返済をしたときしか動きません。借入金の残高は返済が終了するまで貸借対照表の負債の部に計上されています。この借入金の経理処理を認識していれば利益計算が混乱することはありません。

借入金で得た資金を使った場合の経理処理は、資金の調達源が資本金(株主からの出資)であろうが手持ちの資金(利益からの蓄積)であろうが同じです。これと借入金の経理処理を切り離して考えないと利益計算に対する感覚は混乱してしまいます。

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