【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
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社長借入金の減少(返済だけではない)

2022-01-20 18:30:00 | 経理業務(帳簿の作成)
社長借入金(役員借入金ともいう)は返済をする、つまり会社の資金を社長個人に移動させることにより減少します。これは金融機関からの借入金と同じです。しかし、中小零細企業ではこれとは違う原因によって社長借入金が減少することがあります。

◆会社が受け取る家賃と相殺する

例えば、会社名義のマンションに社長が住んでいるとします。このような場合には会社は社長から家賃を受け取ることができます。

社長借入金がある場合、この家賃の受取りという「貸し」と、社長借入金という「借り」を相殺することができます。家賃は入金、社長借入金の返済は出金ですので、入出金という手続を省略するのです。

◆会社が負担している個人的出費と相殺する

これも上記の家賃と同じ理屈です。会社が何らかの社長の個人的出費(交通費や飲食代など)を負担している場合、この「貸し」と社長借入金という「借り」を相殺するのです。

ただし、社長の個人的出費を会社が負担するということは、たとえ後に精算するといっても経営上は好ましくはありませんので、この方法はやむを得ない場合に限定しなければなりません。

◆債務免除(収益が生じるので法人税に注意)

これを知っている人は少ないと思います。社長借入金という債務を免除してもらうのです(社長の側からすれば債権放棄)。この債務免除を受けると、社長借入金が減って同額の収益(利益のプラス要素)が生じます。わかりにくいかもしれませんが、返済義務がなくなるということは借入額相当の資金をもらったということですから収益になるのは当然です。

この債務免除を受ける理由は次のふたつです。ひとつは借入金(負債)が多いと決算書の見栄えが悪い場合です。借入金が多いと自己資本比率、流動比率などの重要な財務指標が悪化します。もうひとつは相続税対策です。社長借入金は社長個人からすれば会社に対する貸付金という財産であることから相続財産になります。社長借入金の返済ができそうにない場合、社長個人としては返済されそうにない貸付金が相続財産として相続税の課税対象となってはたまったものではありません。

◆親族への贈与?

ここまでくると、もっとわかりにくいです。社長借入金は、社長からすれば会社に対する貸付金ですので財産ということになります。財産ですので、現金や不動産同様、贈与することができます。

「私の親族は会社には関わっていないので(株主や役員ではないので)」という人がいますが、借入金の相手先は誰でもなることができますので、会社と無関係の親族でもかまいません。

◆会社の財産による代物弁済

金銭で社長借入金の返済をするのではなく、金銭以外の会社財産(不動産や車両など)を社長名義に変更することをもって返済をするという方法です。この方法は金融機関からの借入金においても会社の財産が担保提供されている場合には行われます。いわゆる代物弁済です。

この方法は課税関係が複雑です。代物弁済は譲渡ですので、譲渡益が生じる場合には利益に影響し利益の額によっては法人税が課税されます。また、譲渡した資産によっては消費税も課税されます。さらには、返済した社長借入金の額を超える価値がある会社財産を提供した場合には、その超える部分が社長の給与として社長に所得税が課税されるだけでなく、損金不算入となって法人税の課税所得が増えます。このように課税関係が大変複雑ですので、この方法は特別な事情がある場合を除いて避けなければなりません。

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