(昨日からの続き)
そんなわけで皮膚科に連れて行った。「ひいちゃん」は元気だから、逆に病気をもらってこないかと心配で、本当は行きたくなかったのだが、イボの正体を明らかにしなければならないので仕方がない。
先生は見るなり『水イボですね』と言った。一目で判るところをみると、よくあるものらしい。
『潰れなければうつらないんですが、つぶれた時に触るとうつったり、増えたりします。風邪なんかに比べたら感染力はすごく低いのに、幼稚園や保育園では神経質に気にするんですよね~』と教えてくれた。
「ひいちゃん」の服とおむつを剝がし診察用のベッドにうつぶせに寝かせると、先生はおもむろに背中とおしりのその"水イボ"の数を数えた。
『8つかな。できている子はもっといっぱいありますよ。どうしますか? ちょっと痛いけど取っちゃいますか?』
そ、そんな気楽に痛いけど取っちゃうかなんて聞かれても、痛いのはアタシじゃないんだから決められません。と、考えているうちにうつぶせの「ひいちゃん」の両手と両足を抑えさせるために、先生は看護師を2人呼びつけた。どうやら親であるアタシの返事も聞かないで取ることになったらしい。
先生はピンセットの先端にミニミニドーナッツがついた道具(二股の挟む部分の先端にドーナッツのようなリングがついたようなもの)を取り出し、『痛いけどすぐに終わるからね~』と言いながら、おしりのイボからつまんでは千切り取り、つまんでは千切り取りし始めた。取ったところから血が点となって滲んでくるが、抑えていた看護師がひとつにひとつづつ四角い絆創膏を貼っていった。
「ひいちゃん」は痛かったのだろうが、あっと言う間のことだったのか、見えない場所だっただけに何が起こったのか判らなかったのか、泣くこともなくおとなしくしていた。アタシはただ見ていて可哀想で可哀想で、千切られてどこかに葬られた水イボを恨んだ。
『乾いてカサブタになれば、うつることもないですから』
先生はひと仕事終えた達成感と、泣くだろうと思っていた子供が泣かずにすんだ安心感を漂わせながらそう言った。
そのドーナッツピンセットがあれば、アタシにも処置は出来そうだったと思いながら「ひいちゃん」を抱きかかえて病院を後にした。
幼稚園もこれでまんぞくなのだろう。
頑張ったね、「ひいちゃん」。
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