中島ブラザーズ ”弟”の「外で遊ぼう!」

近頃は日本海で、ヒラマサを追ってばかり。よって磯釣りや渓流釣りは休止状態ですが…。

ヒラマサの完全フカセ釣り 「やり取りを科学する ~その2」

2018-04-21 12:30:00 | 船釣りタックル&仕掛、戦略他
 ~その1からの続き。

■中間距離まで■

 “ファーストランの戦い”にこちらが勝つと、ヒラマサは再びの反抗に備えて体力をチャージするのか、一旦はおとなしくなる事が多い。中間距離では、竿と道糸の角度を保持したままで、リールのアクセルレバーは巻き上げトルクが出易い60%程度に絞ってやるが、ここでも常に巻上げ状態は注視しておかなくてはならない。
 グレ釣りでも竿ブレさせずにリールをゴリ巻きしてやれば、多少の良型サイズであっても素直に巻き上げに付いてくる事が知られるが、電動リールのメリットを生かして定速で巻き上げていると、大きく暴れないヒラマサが多いので、船下の水深分までを巻き取る頃までは「相手に対して大きな刺激は与えずに、プレッシャーをかけ続ける」事を意識しておくとイイだろう。
 但し例外があって、逃げ込み易い根や海溝が近くにある場合だ。ヒラマサは目標を見つけると猛ダッシュを再開する習性があるので、もしそうなった場合は、ファーストラン時と同様の対処をする。

●潮流の速さもあって中間距離では素直だった、玄達の118cm('14初夏)●


 船下付近までは仮に一息つけていたとしても、それまでの遊泳層から大きく持ち上げようとすると、大型であればあるほど豹変し、キツイ抵抗が始まるので、心して臨まねばならない。
 このあたりまで来るとヒラマサとの距離や竿と道糸の角度の変化から、竿の角度は最初の「のけぞり状態」から徐々に水平方向へと下がってきているが、真下までに達する頃にはボクの場合は、竿の曲がり具合を確認しつつ、水平より少し上程度に保持する事が多い。立てた事によって船体との距離がとれず、そこで船ズレが起きたり、スクリューや舵への絡みを防ぐためだ。

■船下の攻防からフィニッシュまで■

 何とか相手を浮上させ、船下の水深分-10mまでこぎつけたら、焦らずゆっくりと時間を掛けてヒラマサのパワ-を更に削いでいくやり取りが求められる。そのため、ここから先はリールのアクセルレバーは更に絞って40%程度としている。
 「なぜ-10mか?」だが、今までの経験では、(絶対ではないが)ここまで来ると大型に走られても簡単に根に突っ込まれない間合いが取れるからだ。
 そしてここからは道糸の距離が縮まってクッション吸収性が落ちている事と、ここまでのやり取りの中で傷ついているかもしれないハリスをいたわって、徐々にドラグを緩めて行くのだが、緩めすぎて道糸が出過ぎてしまう事に備えて、右手の親指でスプールを押さえる「サミング」も併用してゆく。

 残る距離が10mを切る頃に、電動巻上げを止めて、手巻きにする。ただし、この時点では更に道糸のクッション吸収性が落ちているため、ハンドルを回してもほとんど空転する程にドラグを緩めているので普通では巻き取れない状態だ。従ってボクの場合は次の要領で更に距離を詰める。
 まず、左手で竿のフォアグリップを握り、右手はリールの直後を握りつつ親指でリールのスプールを押さえながら、一旦腰を落とす。ここから竿の角度をあまり変えないようにしながら、スクワットの如く足を伸ばすのに合わせて竿を持ち上げて、ピークに達したら腰を落としつつ、同時の右手でハンドルを握って道糸を巻き取ってゆくといった流れだ。
 そしてこれを繰り返すが、このスクワット・ポンピング(?)は、普通のポンピングと違って竿と道糸の角度が保てるうえ、船際との距離が取れて安心だから取り入れている。

 ここまでは下へ下へと突っ込む事が多かったヒラマサだが、船体周りに近づくと、横方向に疾走する事もある。そんな時には「魚の走る方向に竿を振りながらリールに道糸を巻き込み、相手の鼻先を持ち上げてやる」テクニックを使うのだ。そうなるとヒラマサは反転して逆方向に走るので「次は逆を突いてやる」という手順を踏めば徐々に距離が詰まってゆく。この巻上げは、魚体に対してハリスが負け気味の場合に、特に有効な手段になる。もし「難しい」と思った場合は、ヒラマサよりも横走りする事の多いブリ族で練習すると竿の操作感が掴み易いのでお勧めする。(失敗してロストしても痛みが少ないのも利点だ。)
 出来ればこの操作をする際、周りの釣り人に声を掛けて自身がヒラマサの動きに合わせて釣り座を移動すると良いのだが、それを電動リールで行うにはボクのように軽量&ハイパワーのリチウム電池を使う方が移動しやすい。もし船内電源を使用している場合は、この区間だけコードを外して手巻きにするのも一手だと思う。

●魚の動きに合わせて頻繁に船上を移動させられた、鷹巣沖の98cm('15初秋)●


 ボクが乗る船ではサルカンが海面から出て相手が弱っている事が確認できれば、船長がハリスを掴んでの手手繰り(てたぐり)区間に移行する。
 ここでは、不意に逆襲され、船長が道糸やハリスから手を離す事に備えて、竿を水平方向になるべく突き出した状態でポジショニングし、リールのクラッチをオフにして、右手の親指でスプールを押さえながら身構える事にしている。
 船長との意思疎通のため、「危なかったらいつでも手を離して。」と声を掛けておき、実際に船長が手を離してヒラマサの疾走が再開した場合は、サミングする親指の、押さえの強弱で道糸の出具合を調節する。(そうしないとバックラッシュする。)その際、ヒラマサに、船の反対方向に走られてしまったら、海中に竿の半分以上を突っ込んで対応する。
 相手が大きければ大きいほど、何度もリセットされて「数十m先からやり直し」なんて事もよくあるし、そういったヤツほど逆に時間を掛けて弱らせなければならないので、心して掛からねばならないが、最終的には魚の弱り具合を確認できたらネットインとなる。


 ここまで解説した「ボク流の、やり取りの実際」だが、これらの操作が最大限に生かされるのは、玄達瀬のメーターを優に越えるサイズを10~12号ハリスを使って挑んだり、秋のパワー溢れるメーター前後を8~10号ハリスを使用して挑む場面になる。ただし、これだけ気を使っても「根ズレ」や「ブチ切れ」でハリスを飛ばしてしまう事があるのだ。(ボクの腕前がヘボなのかもしれないが…。)
 一方、春の白石グリではここまでやらなくても、もっと言えば電動リールに任せっきりで獲れてしまう事すらある(周囲を見回しての確認)ので、ピンと来ない人が居るかも知れない。だが、そんな人であっても、いずれは壁にブチ当たる日が来るだろう。(なければラッキーだが…。)
 ボク自身の経験では、これらのやり取りを実践出来るようになって以降、「だた踏ん張って巻いていた」頃よりも、単純に根ズレだけが原因のバラシは激減しているので、迷いが出た人に対しては、長々と述べてきた内容がスキルアップのヒントになると自負している。

■ゲット率を上げるために■

 今週まで3回にわたって「ボクの、ヒラマサ釣りの基本姿勢と要領」について書いてきたつもりだが、要は、完全フカセにおいては太ハリスと言われる号数であっても、魚に対しては負け気味である中、「いかにタックルを操作すれば獲れる確率が上がるのか」について、ボク流に述べたつもりだ。
 だが、玄達瀬であっても、130cmクラスのヒラマサを相手に「ダイワ500番サイズのリールに7号道糸&8号ハリスで、数十m走られた末に、何とか獲った。」という記事が釣果欄に載る事がある。こんな記事を読むと、「その釣り人の腕前がボクよりも上」だという事を認めざるを得ないが、それよりも前に「この上ない幸運が巡って来た」事が獲れた最大の要素だと解釈している。これは、同じタックル・セッティングでのアプローチによって、獲れた分をはるかに上回る数の大型ヒラマサがバラシでサヨナラしているという、裏の事実をボクは知っているからだ。
 「ただ走るだけで、根や海溝に入る気が無いヒラマサが、どれだけの割合で居るのか?」の問いに答えられる人であれば、私の解釈に共感してもらえると思うが…。

 釣法ネタを書いていると、「釣りには絶対は無い」と、グレ釣り名人の小里哲也さんが言っていたのをよく思い出す。釣りには様々なアプローチがあって、それで成功している釣り人も居るし、ボクの方法も改良の余地があるかも知れず、絶対ではない。
 だが、少なくともそれぞれ自分なりに「手にする魚を増やすために『獲る確率が高い方法』を選択をしている」という点では同じだと思う。

 「どうにもならないヤツに出会ったがために、次回はどうにかしてやろうと苦心惨憺しつつ挑んでも、結局返り討ちに遭う」
これが完全フカセでのヒラマサ釣りの真髄であり、だからこそ面白い。
 ここまでの記事が少しでも皆さんの参考になって、釣果の歩留まりが向上してくれれば幸いだ。


 今週までは“脳内フィッシング・ネタ”続きだったが、明日は白石グリでの実戦がようやく始まる。悶々とした時間が長かっただけに、明日はスクワット・ポンピングを痩せるほどに繰り返したいモノだが、果たして結果は…。




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