「国家統一綱領」「国家統一委員会」は15年程前に李登輝前総統が設立したもので、「自由・民主。均富が中国大陸で達成された暁には統一を考えてやってもいいよ」といった内容だったかと思います。まぁ、お体裁的にしつらえたものだったのでしょうが、むじな@台湾よろず批評ブログ様(超特選ブログ)によると、これが思わぬ波紋を呼んでいることに関して、当時の〝中華民國総統〟も「廃止すべし」という見解を述べられているようです。
「国家統一綱領」(国家統一委員会)の〝現状維持〟は陳総統が就任時に打ち出した「公約」の一つですが、「どうも胡散臭いな・・・・」と先日記しました(記事)ら、DPPの内情に大変明るいむじな@台湾よろず批評ブログ様(超特選ブログ)より、「陳総統の〝四不一没有〟の公約は、国務省がAIT(在台米国協会)経由で押し付けたもの」というコメントも頂戴しました。
<陳水扁「国家統一委員会廃止」に反対する米国の傲慢と偏見>(むじな@台湾よろず批評ブログ記事)にはその間の内情が詳細に記されており、必見です。
◆Letters: US' Taiwan policy is unjust(Taipei Times)
「委員会」と称しているからには、何名かの委員がいて、会が召集されたことも過去にはあるのでしょうが、台湾英字紙(日本語訳)によりますと、これにはわずか31US$の年間予算しか割り当てられていないのだそうです。31$の予算で出来ることといえば、「国家統一委員会の委員の皆様におかれましては、時下益々ご清祥のこととお慶び申しあげます。さて、民國95年の新年を迎えるにあたり云々・・・・」といった手紙を出すことくらいしか思いつきません。これでは会を開こうにも全家便利商店(ファミリーマート)でペットボトルのお茶を買うのが精一杯で、〝交通費〟は支給出来そうにないですね。一年に一度位は当の本人に自分が委員だったことを思い出してもらうための手紙を出す必要がある(とりわけ台湾ですし・・・・)という判断なのでしょうか?
<The US employs a policy of maintaining the status quo across the Taiwan Strait and opposing any unilateral change in the relationship between Taiwan and China. This policy is lopsided.
(合衆国は、台湾海峡の現状維持と、台中関係の如何なる一方的な現状変更にも反対する政策を掲げているが、この方針は釣合いが取れているものとは言い難い)
<US officials should express surprise at the failure of Taiwan's legislature to pass the arms procurement bill, rather than at President Chen Shui-bian's (陳水扁) suggestion to abolish the National Unification Council and unification guidelines. >
(合衆国当局が驚きを表明すべき対象は、国家統一委員会と国家統一綱領の廃止を示唆した陳水扁総統ではなく、武器の獲得予算の法案を通過させない台湾議会の怠慢さに対してであろう)
合衆国の〝台湾海峡あいまい関与政策〟に対しては、昨秋米議会諮問機関からも批判の声はあがっていました(記事)が、民主主義国家の台湾側を一方的に押さえ込もうとする合衆国の姿勢は理不尽かつ不公平であるとする同紙の寄稿は正論そのものです。
「のび太奴隷化促進法」を制定して攻撃を企てようとする〝軍国主義者〟のジャイアンにはお目こぼしで、のび太に対して一方的に「ジャイアンを刺激する行為はよせ!平和と現状維持が一番だぞ」と説教する行為が公正か否かについては物心ついた子供でも判断できるでしょう。
ニクソン大統領の訪中から8年の間に「台湾関係法」という国内法を制定した合衆国の方が、後先も考えず性急な切捨て方式を取った日本よりはるかに思慮に富んだ対応だったことは間違いないと思いますが、ワシントンが防衛面での後ろ盾でもあるが故に、台北が「動きにくい」状況の一因ともなっているややこしい面も多分にある訳です。04年の住民投票への合衆国(日本)の介入が「合衆国(日本)の支持を得られない陳総統」ということで、立法院選挙に響いた面も多分にあったでしょう。中台のバランスを崩し、台湾海峡を不安定なものにしている元凶は、中共の軍拡だけではないということです。
「四不一没有」がメリケンの押し売りであれば、なるほど全ての辻褄が合います。04年の〝Taiwan does not enjoy the sovereignty of a nation.〟(国務省HP)というパウエル国務長官の暴言の真意も「台湾は合衆国の意向に逆らえるほどの国家主権を有しているわけではない」といったものだったのでしょうが、そこまでたかをくくっていていいのやら・・・・昨年の三月下旬の「反国家分裂法」に反対するデモには、日米両国の国旗を掲げて参加していた人々もいたという報道を目にいたしました。これがそのうち「打倒美帝」のプラカードを掲げた反米デモに転じないとも限りません。
<As a Taiwanese saying goes, "A spoiled pig will destroy your stove and a spoiled child will not be filial." The US should not spoil China in exchange for China's cooperation in fighting terror and controlling North Korea's nuclear program. Instead, the US should appreciate and encourage Taiwan for trying to reinforce its status quo, including rectifying its official name and deploying the mechanism of the popular vote as a free, democratic country like the US.>
(台湾の諺に「甘やかされたブタは囲炉裏を壊し、甘やかされた子供は親孝行しない」というものがある。合衆国はテロとの闘いや北朝鮮の核開発計画の問題に対する中国への見返りとばかりに中国を甘やかすべきではない。それよりむしろ、合衆国は(「一つの中国」という)政策の軌道修正や、合衆国のような自由民主主義国家と同様の住民投票が行えるような態勢作り(への支援)を通じて、台湾が民主主義国家としての現状を増進させようとする試みに賞賛と激励を送るべきではなかろうか)
ニクソン訪中の立役者となった当時のキッシンジャー大統領補佐官の著書には控えめに記されていたものの、ベトナムからの撤収と対ソ連での戦略的な協調関係の構築という難題を同時に解決した同氏は稀代の策士だな、という気はいたしました。米中の交渉における最大の難関が台湾の扱いだったと著書にも記されていましたが、この難関を合衆国は、
<The United States acknowledges that all Chinese on either side of the Tiwan Straight maintain there is but one China and that Taiwan is a part of China.>
(合衆国は、台湾海峡の両岸全ての中国人が中国はただ一つであり、台湾は中国の一部であると主張していることを知りおく)
という曖昧な見解ですり抜け、上海コミュケに至りました。これが今日まで続く合衆国の〝あいまい関与〟政策の原点とも言えますが、私自身何故〝両岸全ての人々〟でなく、〝両岸全ての中国人〟となっているのだろうかと以前から疑問に思っていました。
<The reason was the view that some, perhaps a majority, of the people on Taiwan might not agree if ever they were permitted to say so.>
(「人々」という表現を用いた場合、これに同意しない台湾の人々(恐らく大多数であろうが)が出てくる恐れがあるという国務省筋の見解がその理由であった)
AIT前代表のベルロッチ氏の寄稿(記事)を読んで、なるほど「両岸全ての中国人」というのは国府と中共の面々であったかとその疑問が氷解したのですが、当時の合衆国は〝中国人〟と〝台湾人〟の存在を明確に区別した上で確信犯的な声明を発表していたことになります。
それから30余年を経た今日、合衆国の〝あいまい関与〟と中共の一党独裁は相変わらずですが、台湾は国府の一党独裁体制から民主主義の複数政党制へと移行し、国府でないリベラル政党が現在の政権与党の座にあるのは衆知の通りです。
国府でも、中共の面々でもない〝台湾人〟の人民自決の精神を尊重する責務が合衆国にはあるのではないでしょうか。
※写真・・・・淡水から台湾海峡方面を望む
以前にコメント&TBいただいておりました皆様、お返事は16日以降になってしまうかと存じます。大変申し訳ございません!
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ハマースの大勝というパレスチナの民主的選択を認めようとしない米国にそれを求めても仕方がない。
米国には、ベネズエラや韓国などと同じ制裁と教訓を与える必要があるでしょう。
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きょうの台湾日報に李登輝が「廃止に賛成している」といっていると台連立法委員が伝えた、との報道が載っています。
http://taiwandaily.com.tw/news.asp?News_no=16591&News_class_no=01&Up_date=2006/02/10
扁廢國統會黃適卓:李登輝非常支持 不排除扁李會就國家發展政策進行對話廢統保障台灣主權獨立蘇進強建議拿掉「四不一沒有」
国防部は否定しているようだし、聯合報報道というところが臭いのですが、それを差し引いても、さもありなんといったところでしょう。
もう米国なんか無視して核開発あたりを考えないといかんかもね。
そして攻撃目標は中国だけでなく、米国も加える(わ)。
http://udn.com/NEWS/NATIONAL/NATS1/3158355.shtml
氏周刊:阻台買潛艦 美海軍開天價
コメント&ご紹介有難うございました!
今の韓国のそれと同じ程度にメリケンにも気を遣わせるようにしむけたいものですね。(笑)
廃止がいかんというなら「新・国家統一綱領」と称して、フィリピンとか米国パラオ等などのバージョンをたくさん作り、茶化してやるのも面白いかどうかと思ったりもした次第ですが。(汗)
14日のKMTの広告は真意がよく解らないのですが、DPP側が「台湾の将来を決めるのは国民で、独立も選択肢の一つとしてアリというのなら、当然国家統一綱領の廃止にも反対しないよな?」と踏み絵を踏ませたのは見事でした!