私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

台湾紙、朝日の台湾新幹線報道に反発

2006年04月28日 | 台湾

26日に陳唐山・総統府秘書長(前外交部長)がしれっと来日して早稲田大で講演をしていた模様(台湾週報)ですが、断交以来最良とされる日台関係と、国交があるにも関わらず「竹取物語」で非難の応酬が続く日韓関係の好対照ぶりは何とも皮肉なものですね。韓国政府の要人が日本の大学で講演などという場面はおよそ想定できない昨今ですが、陳秘書長は単に早稲田の講演のためだけに来日したのでしょうか・・・・

◆台湾新幹線、全線開通来年はじめに再延期(朝日)
◆THSRC hires foreigners to drive trains(Taipei Times)
◆朝日新聞:高鐵通車 延至明年 電氣工程、人才培育大幅落後 暗諷「台灣新幹線」 問題多(世界日報)
◆交通部:台湾高速鉄道、10月の全線開通を目標に(RTI)

<Taiwan High Speed Railway Corp (THSRC) has hired 35 to 40 foreign drivers to operate the nation's first bullet train when service starts in October, a move that prompted a sarcastic article in the Asahi Shimbun, a Japanese daily, yesterday. "Taiwan's Shinkansen, which was constructed by a Japanese corporation, will have to be operated by Frenchmen," the report said.>
(台湾高速鉄路公司(THSRC)は、10月に予定されている台湾初の弾丸列車の開業時点で35~40人の外国人運転士に頼ることになりそうだという皮肉が交じりの記事が日本の日刊紙の朝日新聞に昨日掲載された。同紙では「日本企業が建設した台湾新幹線をフランス人が運転することになりそうだ」と報道されている)

記事の冒頭に〝JAPANESE CRITICISM〟(日本の批判)とあります(日本語訳)が、工事の進捗や運転士養成の遅れ、資金繰りの不安等など台湾新幹線(THSR)の前途に横たわる問題点を指摘した朝日新聞の記事に対して、台湾各紙が反発しているようです。
朝日は数年前陳水扁総統を揶揄した漫画を掲載したり、台北支局を「中国の一部」として扱ったりするなどして顰蹙を買った前科があるようで、台湾のマスコミ各社のマークが厳しい面もあるのかもしれません。だがちょっと待って欲しい。朝日は以前も日欧混在システムが生んだ「船頭多くして船山に登る」とでも言うべき内部体制の問題点や架線泥棒事件についても報じていましたが、今回の指摘も正鵠を射ていると思います。(朝日って鉄に詳しい記者が多い印象が・・・・)

朝日の記事では台湾新幹線の板橋暫定開業が東北新幹線の大宮暫定開業になぞらえられていますが、両者の決定的な違いは設備面です。大宮のホームが三面六線(元々上越新幹線はここから分岐して新宿に乗り入れる予定だったためにこのような豪華な造りなのですが)であるのに対し、板橋は一面二線×2(地下ホームで階が違う)で元々ここでの折り返しを想定した造りになっていないため「収益計画の前提になっている本数の半分程度にとどまる見通し」を余儀なくされます。ただでさえ一年開業が遅れているわけで、その間の金利負担分も加味するとかなりの負担になるでしょう。
台北から7キロの板橋まではMRT板南線を利用して乗り換えることになりそう(東京から7キロだと〝板橋区〟の手前の北区上中里辺りか?)ですが、東北新幹線も大宮暫定開業時点では上野直通の在来特急が残されたように、板橋暫定開業がハンデとなる面は否めません。(本当に来年初頭に台北まで延伸できればそこ3ヶ月の問題なのですが・・・・)
さらに、高架が連続する彰化から嘉義に至る42km余りの区間(眺望はよさそうです)や云林懸の一部は、開業以降も地盤沈下の問題が深刻化してくる可能性が高いと思います。ドイツ方式のポイントやフランス製ATCのトラブル、開業後の騒音や振動の苦情(700系新幹線は日本の環境基準では時速285km運転が限界)などなど他にも不安の種は尽きないのですが、RTIの記事にもあるように、そもそも板橋暫定開業(つまり台北までの10月全線開業ギブアップ)が何故日本で繰り返し先行して報道されているのかという点が肝かと思います。米国やシンガポールではCMを流しても、渡航客の34%を占める日本はまるで無視というTHSRが、今さら「日台親善」でいち早く日本の皆様にいち早く情報を・・・・というのはちょっと考えずらいですね。
昨年10月、開業の一年延期が発表された際に、THSRC側が日本連合に賠償を請求する意向(記事)であると報じられた(元は「経済日報」だったかな)ことがありました。この時は謝長廷・前行政院長も慌てて否定していましたが、今回の日本側への先行リークはずばりこの伏線でしょう。
THSRCは昨年のこの時期も「05年10月開業は400%大丈夫」等ととんでもない〝大本営発表〟をしていましたが、今年10月の板橋暫定開業も微妙な段階というのが実情なのかもしれません。

「日本の新幹線が海外に嫁ぐ」というのは鉄ヲタ的ロマンをかき立てられますし、運転台からの試運転の風景はそれこそ東北新幹線の車窓を彷彿とさせるようで色々興味は尽きないのですが、台北101を建てたのが熊谷組でそのエレベーターが東芝製だからといって殊更日本が強調されているわけでないのと同様、台湾新幹線も外国との純粋な商取引の一つに過ぎないのも事実です。日本としては海外初の新幹線、しかもフル・パッケージでない「木に竹を接ぐ」ような辛苦の経験を次に活かせばそれでよいと思います。私としてはTHSRCの体制に翻弄されながらも、昨年に続いて旧正月の休みを返上して黙々と働いていた日本勢にエールを贈りたいですね!

連休中は久々に博多~東京間を新幹線で移動しようかと思っておりますが、新幹線のサービスそれ自体は二階建て食堂車や個室が付いていた頃の「ひかり」が個人的には懐かしく思い出されます。(高速化による時間短縮と乗り心地の向上には目を見張りますが)今日の新幹線は座席だらけで、東海道区間などは特にビジネスライクな雰囲気ですが、労働力人口も逓減していく中、かつてのような「ゆとり」と「うるおい」を再考する余地もあろうかと思います。
今日、明日から長期休暇に入られる方も多いかと存じますが、皆様どうぞよい休日を!

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5 コメント

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Unknown (猫鉄道員。)
2006-04-30 09:53:51
日本の新幹線は車両だけじゃなくて信号システムなども含めて全体で一つのシステムですから、欧州版と混ぜちゃうのは全く望ましい使い方ではありませんよね。操作ミスなどで事故を起こしてくれるなよと心から願います。



>新幹線のサービスそれ自体は二階建て食堂車や個室が付いていた頃の「ひかり」が個人的には懐かしく思い出されます。



全く同感です!100系の二階建てグリーン車は快適そのものでした。見晴らしはもちろんのこと、付随車だからモーター音や振動も小さかったですよね。食堂車ではえらく豪華なコース料理があった記憶がある。東京―博多間の移動だったら他には寝台特急「さくら」のA寝台がお気に入りでした。個室じゃないけどやたらと寝台の幅が広いやつで寝心地抜群だったなあ。みんななくなってしまって残念な限りです。ゆとり教育は勘弁ですが、ゆとり列車は大歓迎ですよ。
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会議ばっかりだったなあ (tw_dot_com)
2006-05-09 00:21:17
ご無沙汰です。以前台湾新幹線からみの仕事をしたことがありますが、日本連合は何かといえば台湾高鐵の欧州人に呼び出されて会議会議でした。なんか不毛だなと思ったのを思い出しました。
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食堂車復活しないかなぁ・・・・ (tsubamerailstar)
2006-05-10 23:04:38
>猫研究員様



>欧州版と混ぜちゃうのは全く望ましい使い方ではありませんよね。操作ミスなどで事故を起こしてくれるなよと心から願います。



大体の鉄ヲタは「日欧のベストミックス」でなく、「船頭多くして船山に登る」になる懸念を抱いておりましたが、困ったものです。



>全く同感です!100系の二階建てグリーン車は快適そのものでした。見晴らしはもちろんのこと、付随車だからモーター音や振動も小さかったですよね。食堂車ではえらく豪華なコース料理があった記憶がある。



昔親父に「2Fのグリーン席から下々を見下ろしてみたい」と申しましたら、「自分で稼いでからにしなさい」と怒られた記憶があります。それでしばらくは金権屋でのぞみの人民席より100系のグリーン車という感じでした。

「グランドひかり」の1万円のコース料理もバブル時代ならではですねぇ。懐かしいです。



>東京―博多間の移動だったら他には寝台特急「さくら」のA寝台がお気に入りでした。個室じゃないけどやたらと寝台の幅が広いやつで寝心地抜群だったなあ。



開放式A寝台ですね! 私も銀河で乗ったことがありますが、フカフカの羽毛布団は中々でした。しかし今日的にはあれで1万位というのは高いかもですね。



>tw_dot_com様



こちらこそご無沙汰しております。私は連休中でボケております。(爆)

とはいいつつも今年も10月末は万難を排して台湾徘徊を目論むと思います。885系特急「タロコ」号も長崎本線みたいに田んぼに突っ込んだりとかしないのを願っております。東部幹線も晴れた時に一度乗ってみたいです。
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Unknown (猫研究員。)
2006-05-11 23:34:58
割と最近、讀賣も朝日と同趣旨の報道をしていました。鉄道関連は、朝日に軍配でしょうね。あと、ダイヤ改正だったら毎日もなかなかです。



私は、「九州往復割引きっぷ」「東京往復割引きっぷ」で安価にて2階建てグリーン車に乗ってました。昔は「グリーン切符」って名前だったかな。さすがに1万円コースは食べたことないですが…(笑)新幹線には食堂車つないでほしいですよ、ホントに。



そうです、開放A寝台です!あれって開放B寝台車一両の定員(30~34名)とあまり変わらない28名乗りなので、1万円もするのはおかしいんですよね。片側をとっぱらって通路にして個室化すればいいのにと思いながら乗ったものです。現存するのは銀河と日本海3・2だけですかね。

そういえば、最近、寝台列車乗ってないなぁ。
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親類宅で讀賣の記事見ました! (tsubamerailstar)
2006-05-15 00:26:02
>猫研究員様



>割と最近、讀賣も朝日と同趣旨の報道をしていました。



これ、北海道の親類宅で記事切り取ってきました。これまた的確な報道でしたね。



>さすがに1万円コースは食べたことないですが…(笑)新幹線には食堂車つないでほしいですよ、ホントに。



私も野望を実現する前になくなっちまいました。(涙)

民営化直後のJR西の「ウエストひかり」は手持ちの0系を改造して着席できるカフェテリアを作ったり「新幹線名画劇場」という映画館までやったりと意欲的でしたね。21世紀的な鉄道ならではの空間という点を見直して欲しいものです。



>そういえば、最近、寝台列車乗ってないなぁ。



九州新幹線全通で富士&はやぶさは引退の予定みたいです。

観光地としての九州がかつてのようなプレゼンスがあれば「北斗星」「カシオペア」みたいな豪華路線も出来たんでしょうが、残念なことです。

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