私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

復古的な政権交代劇:Taipei Times紙社説

2008年03月25日 | 台湾

英国のマスコミは、総じて平和裏に行われた台湾総統選を賞賛していますが、BBCが馬氏の省籍問題についても言及しているのが目を引きます。「香港ルーツというハンディキャップを乗り越えた馬氏」は、台湾の民主主義に新たな礎を築くことが出来るのか、それとも──二度目の政権交代が台湾の民主主義の深化に寄与することを願っております。
選挙結果を受けたTaipei Times紙の社説ですが、タイトルが、〝Out with the old, in with the new〟ではなく、〝in with the older〟となっているところが何とも・・・・ですね。

◆EDITORIAL: Out with the old, in with the older

台湾の有権者が政権交代を促すのは今回がわずかに二度目だが、中國國民党(KMT)が総統の座を再び奪還することとなる。KMTの馬英九候補は、約17%の得票差で民主進歩党(DPP)の謝長廷候補を破った。

馬氏は今回の総統選の本命であり、一時は世論調査で25%もの差をつけ謝氏をリードしていた。 DPPの施政に対する大衆の失望とそれに伴う1月の立法院選での敗退で、同党の士気は蝕まれた。両候補の資質が狭小であったにも関わらず、この傾向は世論調査の数字にもあらわれた。

選挙戦最終盤での重要争点は「一中市場」とチベットに於ける中国の圧制の問題であった。DPPは中国人労働者の流入と粗悪な中国製品の輸入がもたらす恐れのある脅威に焦点を当て、得点を稼ごうとしたようだが、そうした危機感を煽る戦術は、同党が期待したような影響を最終的に及ぼすには至らなかった。

より直接的に言えば、有権者はDPPの戦術に背を向け、2000年の総統選時の約60-40という汎藍/汎緑の勢力分布に戻ったということである。つまり、DPPが2004年の総統選でKMTから奪った10%の得票率が元に戻った格好だ。

チベットに於ける中国の圧制という惨たらしい現実は、中国の温家宝首相がチベットや台湾に向けて発する厳しい警告の言葉とも相まって、選挙前のDPP陣営には最高の贈り物であった。しかし、12日間に及んだチベットでの不穏な状況も、この8年間の同党の施政に対する国民の不満を補うまでには至らなかった。

馬氏の舵取りは、退任する陳水扁総統よりたやすいものとなろう。陳氏はこの8年を通じ、立法院で多数を占める野党の妨害に終始悩まされ続けた。KMTが立法院の多数を占めている以上、馬氏が長年来温め続けてきた理想の多くを政策に反映させるのは造作もない。しかし、ここに好機と危険が潜んでいる。

野党としてのDPPには、馬氏の執政の勢いを止める力はほとんど残されていない。権力のチェック・アンド・バランス(抑制均衡)の強化に腐心する国にとって、一党独大の優位性は脅威となる。DPPは党と国の間に立って権力の腐食の監視に取り組まねばならない。

KMTには両岸関係をより細心に取り扱うことが求められよう。両岸関係は改善されねばならないが、「一つの中国」原則を持ち出すのは依然として危険をはらんでいる。

それには多くの理由があるが、現時点では以下の例で十分であろう:ダライラマ氏はチベットの独立より真の自治を要求していることを再三表明しているにも関わらず、中国は力を振りかざし、冷酷に状況に対処している。

馬氏は、この苛酷な現実を銘記すべきである。台湾の長期的な展望が、目先の経済利益の犠牲となってはならないし、中国の方針に従うことが平和な未来を保証してくれるわけでもない。

執政にあたって、馬氏は漸次的に疲弊した米台関係の修復と日本との協力促進を開始し、中国の脅威を減じるよう努めるべきである。何百ものミサイルが台湾を脅かしており、台湾の総統がその数が増えるのを傍観することは許されない。

馬氏は、この8年に及ぶKMTのボイコットによって生じた防衛予算の欠損を補うことにも直ちに取り掛からねばならない。両岸交渉を有意義に支えるのは、確固たる力なのである。


   



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