私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

挫かれた台湾の希望:Taiwan News紙社説

2008年03月26日 | 台湾
なじみの店で「そういえば、台湾は中国と合併するようですね・・・・」と水を向けられ、思わず焼酎を吹きそうになったのですが、先の選挙結果と国連加盟を問うReferendumの不成立が、かように「台湾は国際社会への展望よりも中国を選択した」というメッセージに映るのであれば、何とも遺憾なことです。
年度末のカタストロフィに向けて真っ逆さまの我が国を想えば、他国を案じる余裕はありませんが、Taiwan News紙の社説は、何だか昨年の参院選のオマージュのようでもあります。その結果こそ〝ねじれ〟が生じた日本とは逆になったとはいえ・・・・

◆Editorial:Taiwan's hopes shattered(Taiwan News)

國民党前主席を台湾総統に選出した昨日の有権者の決定は尊重されねばならない。かくして8年間の民主進歩党政権は終焉を迎え、従前の専制的な政党に権力の座が戻ることになる。それにしても、今回の結果が2300万人の台湾人にもたらすのは、馬氏が公約した「平和と繁栄」などではなく、経済の低迷や政治の不安定、社会不安といった悲劇の舞台であろう。

馬氏の選出は、希望の始まりや「理想」の実現への歩み、平和の推進を意味するものではなく、台湾の草の根民主主義や人民自決運動が「挫いた希望」のなれの果ての現実である。

退任する陳水扁総統が率いた民主進歩党政府が、この結果に重い責任を負っているのは疑う余地がない。55年に及んだ専制的かつ一党独裁支配のKMTに取って代わった陳政権だが、全ての公約を達成し得ず、変化を望む国民の高い期待に応えることが出来なかった。

しかしながら、DPP政権が経済建設や金融改革、政治改革、社会福祉の面で目覚しい業績がなかったわけではない点には留意すべきである。

DPP政権下で台湾経済がいかに「破壊」されたかというKMTのプロパガンダを鵜呑みにした多くの有権者らが、高速鉄道や雪山トンネル、高雄MRTを快適に利用して反対票を投じに行ったのは皮肉なものである。これらのプロジェクトを監督したのはDPP政権だが、その効率性や安全性、そして計画の一貫性はKMT政権時代の比ではなかったはずだ。

DPP政権の最大の欠点は、腐敗が見られた点であるが、それにしても実際のところは、50年に及んだKMT支配下に於ける為政者や、とりわけ、党-国体制下での組織的腐敗に比べれば些細なものである。にもかかわらず、多くの国民がメディアにそそのかされ、DPPの相対的に僅少な落ち度とKMTの顕著な腐敗的体質を二重基準で見たのは明らかだ。

実際、KMTが総統の権限を通じた「一党独大」を再び手にするに至ったことは、立法院における4分の3を超える圧倒的優位性も相まって、台湾の民主主義と人権をおそらく取り返しが付かないほど蝕むであろう。

KMTは自浄作用や党改革、もしくは創造的変革や大胆な方針を掲げて「台湾への凱旋」を果たしたわけではない。同党がこの8年でやったことといえば、立法院における多勢を振りかざし、DPP政府の政策に反対する「焦土作戦」という名の政治的恫喝、自らが影響力を持つメディアを通じた中傷とごまかし、50年に及ぶ組織的汚職で不当に得た党資産をふんだんにばら撒く大規模かつあからさまな買収行為である。

富や組織、メディアへの影響力を支配し、「潤沢な」財政基盤を持つという甚だしく不平等なKMTの構造的優位さは健在であり、それが遺憾なく発揮され
た場面が土曜日の総統選であった。

馬氏が語らなかったこと。

馬氏は、専制的な中華人民共和国(KMTの旧敵である中国共産党に依然として支配されている)との関係緊密化と市場統合を通じた「繁栄と平和」を公約したが、実質的な「民主主義」についてこれまで言及しなかったのは重大である。

台湾の民主主義への展望は陰っているが、「平和と繁栄」への青写真はそれ以上にぼんやりと映る。

DPP政権より思うがままの施政は出来るであろうが、資本との癒着構造や時代遅れの経済的ビジョンしか持たないKMTが、グローバリゼーションと中国の台頭に伴って今日の台湾が直面している問題を解決できる見込みは高いとはいえず、国民の生活水準や社会的・政治的不平等さは悪化するだけであろう。

連戦氏の下で二度の総統選に敗れたKMTは、かつて激しい内戦を繰り広げたCCPとの関係を修復し、PRC首相やCCPの胡錦濤国家主席との会談も含む「政党間対話」に乗り出すことで、台湾の民意が選んだDPP政権にあからさまに対抗した。

馬氏は、経済と貿易面での結合に関する北京との対話をあてにしており、それが「和平協定」や国際空間における台湾の「生存の術」に有利に働くと考えている。

DPPの参加を阻み、台湾の民主的な動きを圧迫するKMTの「欠陥政策」にCCPの胡錦濤国家主席がさらなる「利用価値」を見出すのかどうか、また対PRC面で、KMT新政権が、馬氏の脆い政策の実現の見込みを揺るがされるような緊迫する局面に見舞われるのではないかという疑念が残る。

将来、台湾の有権者や諸外国の民主主義指導者らが、KMTの一党独裁体制への回帰に警告を発しなかったことを悔いる場面がやって来ないことを望みたいものであるし、民主主義への展望が著しく後退した台湾が「第二の香港」、ましてや「第二のチベット」にならぬよう切に願う。

そして、DPPがその歩みを止めることなく今回の挫折を乗り越え、進歩的な社会・市民運動と連携し、台湾の民主主義と進歩のための強靭な中核勢力として再建を遂げるとともに、台湾の中枢をなす民主主義の自治の復権に向けて「捲土重来」を期すことを望むものである。


   


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