私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

一中市場は第二のチベットに通ず:DPP謝長廷候補

2008年03月18日 | 台湾

「先進国最多の支局数を中国国内に展開」等と自画自賛するNHKですが、図らずも今回のチベット報道でそれが無用の長物に過ぎないことが顕になりました。同じ国営放送でも、HP上で情報提供も呼びかけるBBCと比べたらまさに月とスッポン。新華社電を垂れ流すだけなら複数の支局は不要ですし、経営合理化にまずメスを入れるべき点はここではないでしょうか?

◆Taiwan takes to streets in huge rallies(Taipei Times)
◆Taiwan could be a second Tibet: Hsieh(Taipei Times)

ネットTVで台湾の「超級星期天」(スーパーサンデー)の様子を垣間見たのですが、「最後のお願いにやって参りました!」といった塩梅の日本の選挙風景とはまるで別物ですね。国父記念館付近では両陣営のデモ隊がニアミスする場面もあったようですが、KMTの立法委員ら4人が謝氏の選対本部に乱入した12日あたりから俄然選挙戦が面白くなってきたような・・・・

<If such a market were to be established, Hsieh said "men would not be able to find a job," "women would not be able to find a husband" and "soldiers would do their military service in Heilongjiang" in China. Hsieh urged the public to unite to "protect your rice bowls by opposing the `one China' market" and "check power by opposing one-party rule.">
(『一つの中国』市場が確立されたら、「男性は職を見つけられず」「女性は伴侶を見つけられず」そして「軍隊は黒龍江省で兵役を務めることになります」と謝氏は述べ、「反一中市場で、食い扶持を守る」ための団結を促すとともに、「一党独大に反対し、権力を監視しよう」と訴えた)

 民進党の選挙集会に登場した黒い木馬=16日午後、台北市の国父記念館、宮城英二撮影
「一中市場」の実現を公約に掲げる馬氏は、台湾に災禍をもたらす「トロイの木馬」だという痛烈な皮肉ですね。国父記念館でのパフォーマンス中、「一中市場何てことになったら、日本みたいに毒餃子も入ってくるぞ!」といった寸劇も演じられたようで、我々としても苦笑してしまいますが・・・・
外電等は総じて「両岸共同市場等の対中融和策を訴える馬氏と、台湾主体意識を訴える謝氏」といった報道内容ですが、「一中市場」という馬氏の対中政策への信任投票的な色彩も帯びているとすれば、攻守が逆転した印象も受けます。
写真や断片的なニュース映像で見る限り、若者の姿は圧倒的にDPP陣営の方が多いようですね。

<"I want to know what he means. China has 1.3 billion people and Taiwan has 23 million. How can they make a joint decision?" he said. "If Taiwan's future is jointly decided by both sides of the Strait, we will end up like Tibet. We must stop Ma's ridiculous proposition.">
(「馬氏の真意は何なのか。中国には13億の民がいます、そして台湾の人口は2300万人です。どうして共同の決定が出来ましょうか?」と謝氏。「台湾の前途は海峡の両岸の人々が決定すると言うのなら、台湾の行き着く先はチベットです。馬氏の馬鹿げた提案を阻止せねばなりません」)

<Hsieh said that if Taiwan and China were to establish a "common market," there could be an influx of Chinese nationals, adding that Beijing could later send troops to crack down on Taiwanese if they resisted the Chinese.>

 
(仮に台湾と中国が「共同市場」を設立したら、中国人の流入に加え、後から軍隊もやってくる。そして、抵抗する台湾人を弾圧するだろうと謝氏は述べた)

期せずしてチベットの抵抗運動が、選挙戦終盤での馬氏への逆風=謝氏への追い風となりましたね。陳総統も、「中国と平和協定を結べば台湾海峡の平和が確保できると主張する人もいるが、チベットの流血の事態からわれわれが理解できるのは、平和協定があるからといって、いったい何になるのかということである。中国は1951年にチベットと平和協定を結んだが、8年後の1959年3月10日に、武力でチベットを鎮圧した。49年後の3月、再び軍や警察が平和的なデモを武力で鎮圧した」と馬氏への批判をにじませていましたが、台湾の戒厳令下の弾圧を直接体験した世代の中には、胸がうずくような思いを新たにした人も多かったのではないでしょうか。
行政院大陸委員会の調査では、無条件な対中規制緩和へ賛意を示す割合はそう多くなかったように思うのですが、それも含め<台湾主体性>の意識が総統選をどう左右するのか興味深いところです。

<One supporter from the US, who gave his last name as Herbert and has lived here for seven years with his Taiwanese wife, said that he backed Hsieh although he could not vote. "If he loses, I'm going to go back to America. I believe Taiwan will become part of China," he said. "I want to stay here for the rest of my life.">
(米国出身のハーバード氏も支持者の一人。台湾人の妻と台湾で暮らして七年になる。選挙権はないものの、謝氏を支持すると言う。「謝氏が敗れたら米国に戻るつもりです。台湾は中国の一部になってしまうでしょうからね。私はこれからも台湾で暮らしたい」)

これと似た話を先日耳にしました。「政権交代という事態になったら、台湾から書類等の一切合財を持って日本に戻ってくる(=日本への帰化を進める)」という内容でしたが、謝氏の勝利を信じるというDPP支持者の話に、何とも言えない悲壮感も感じ、しばし二の句が接げませんでしたね・・・・
「最悪謝氏が敗れるとしても、48対52の得票率といった際どい結果になるのではないでしょうか?勝利を収めた馬氏も、(KMTの本土派勢力や)半数近い民意をないがしろにする極端なことはそうできないと思いますけどね・・・・」と述べたのですが、実際仮に馬総統誕生という事態になったとしても、任期中に巷間言われるほどの対中融和は進展しないと思います(「一つの中国=中華民國」を前提に北京と対話等と真顔で言っている時点でどうかと・・・・)し、その審判は再び四年後に下されるわけです。

今現時点での〝風向き〟を窺う術はありませんが、〝ハナ差〟写真判定もあり得る台湾総統選のゴール前は興味津々ですね。日曜日のJRA重賞(スプリングS/阪神大賞典)の予想を早々に仕上げ、台北からの〝実況〟を注視したいものです。


中国はジャーナリストにとって世界最大の監獄 国境なき記者団  



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4 コメント

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今年は傍観 (edaats)
2008-03-18 20:04:20
ここ3回の総統選は友人たちと前日夜遅くまで台北で応援していたのですが、今回は日本から応援です。
謝先生のTVコマーシャル見たらガックリきてしまいました。
民進党としてを本当に台湾を支えていくつもりなのか・・・・
台湾のオチャラケといえばそうかもしれませんが。
でも頑張って欲しいものです。

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尤も! (Pote)
2008-03-18 22:23:24
私が考えていたことと相違なしでございました。
あまりに相違なしなので、リンク便乗させていただいてしまいました。

しかし無理に挙げておかせて戴きますれば、

> <One supporter from the US, ...

このハーバード殿のお考えは、私には当てはまらないものでした。
私はこの地が中国になっても戦場と化しても、万が一外人部隊として徴用されても日本に行くことはなさそうです。
まぁだからといってハーバード殿がおかしい、というわけではもちろんありませんです。

どうも私「一中市場」については、ライオンとかワニとか猛獣の口を開けさせておいて「ほらワタシが押さえているから大丈夫だよ、ささ、手を入れてごらん。」という感じに見えてしまったり。先般広州に行った際にも、7年前と何も変わっていないように見えたもので。

> ハナ差〟写真判定もあり得る台湾総統選のゴール前は興味津々ですね。

これは私も楽しみでございます。
金曜に買出ししておいて、盛り上がる怪しいおっさんたちを自宅ベランダから高みの見物したいな、などと思っております。
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4年前はと言うと・・・・ (tsubamerailstar)
2008-03-19 00:44:35
>edaats様

>ここ3回の総統選は友人たちと前日夜遅くまで台北で応援していたのですが

そうなんですか!流石です!
さて、4年前はと言いますと、3月13日の九州新幹線開業で台湾のたの字も頭になく。(爆)
その一週間前後の新聞は今でも取ってありますが、「陳総統、狙撃さる」は鹿児島の南日本新聞でも一面でした。

・・・・「朴大統領の韓国みたいやな」と当時思った記憶があります。(汗)
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〝馬券的〟には難しいですね・・・・ (tsubamerailstar)
2008-03-19 00:51:38
>Pote様

両岸の現状維持協定みたいな構想は10年くらい前のクリントン政権時代に米側は否定的な見方をしていたんですよね。
ま、安全保障面では軍産複合体としての米国の思惑も色々見え隠れしますが、三通面は開放の段階と規模が問題でしょうか。繊維製品でWTOへセーフード手前まで行きましたが、こういったマイナス面というのかな、そこら辺のマネジメントが肝要なんだろうと思います。

>金曜に買出ししておいて、盛り上がる怪しいおっさんたちを自宅ベランダから高みの見物したいな、などと思っております。

いい写真を期待しております!安全な(?)範囲で近所の取材でも。(爆)

私はやっぱETTVで宇さんかな。(笑)

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