私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

台湾人は自ら将来を決定する、台湾英字紙社説

2006年03月13日 | 台湾
まさに「針小棒大」に騒がれた感のあるNUCと統一綱領の問題ですが、その元凶となった合衆国側も流石にバツが悪いのか「大山鳴動して鼠一匹」という方向で幕引きを図りたい意向のように思えます。(そもそも合衆国の新旧NSCアジア上級部長は異口同音に、「大した影響ない」と鷹揚に構えていましたし、訪台したアーミテージ前国務副長官も同様の見解を示しています。「曖昧なところは曖昧なままに煙を巻く」という腹芸が出来なかった国務省のエレリー副報道官が〝A級戦犯〟だと個人的には思いますが・・・・)
合衆国側は、ファロン太平洋司令長官が台湾関与への再確約とその自衛能力の強化を訴える趣旨の演説を議会で行う一方、ヒル国務次官補が中台双方の指導者による対話の促進を促していました(ワシントンと台北の見解の相違についてノーコメント)が、そこら辺の〝空気〟を読まずに台湾の野党は昨日デモを強行したのやら・・・・(報道は未確認なのですが、どうせ「陳総統の行動は国際社会の無用な緊張を引き起こすものだ」とか何とか言ったのでしょう)
NUCと統一綱領の騒動に関しては、Taipei Times紙が5日に社説を掲載していました。結びの一文に同紙一流の皮肉が効いていますね。
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◆Editorial: Taiwanese will decide for themselves(Taipei Times)

社説:台湾人は自ら将来を決定する

2006年3月05日日曜日,Page 8

国家統一綱領と国家統一委員会(NUC)に対して台湾政府はいったいどのような措置を取れば正しかったのであろうか?この件について若干の混乱と論争が先週見受けられた。政府と陳水扁総統が綱領の「適用を終了」し、委員会の「運用を停止」するという公式見解を表明した点は疑う余地がない。しかしなから、故意であるか否かに関わらず、メディアや一般大衆の間では単に「廃止」する措置として言及された。一見しただけでは悪意とは取れないこの解釈の相違は、統独問題に過敏な神経を尖らせる合衆国政府の懸念を引き起こすには充分であった。

「廃止」と「運用と適用の終了」の間に如何なる違いが存在するにせよ、それらはせいぜい概念上のことにすぎない。綱領とNUCの廃止は両者の消滅を意味するもので、統一は台湾の民意ではなくなったという意見があるやもしれないが、それついてはNUCや綱領が実体を欠いていた点を指摘する必要があろう。つい最近に至るまで、両者の存在は恐らく人々の知るところではなかったろうし、両者の存在が統一への歩みを助長するものであったろうか?勿論そうではない。

ここ数年の台湾が統一寄りだったか否かに関わらず、それは綱領やNCUの存在とは無関係で、台湾の人々の民意がほぼ唯一の決定要素であった。民意の動向を決定付ける要素としては多くのものが挙げられる。その範囲は、文化・政治面でのアイデンティティ(認同)から急速な対中ビジネスの拡大、中国の経済的な台頭、台湾人と外省人のエスニック間の対立など広範に及んでいる。

仮に綱領とNUCが正式に「廃止」されたとしても、統一は一つの選択肢足りうる-少なくとも台湾人は選択肢の一つとして残すことを志向するであろう。現在「適用を終了」し「運用が停止」されている(いつから「運用」と「適用」がなされていたのかという疑義はあるが)ということ以外に、NUCと綱領が依然として存在し続けていることがわかった今、「廃止された」ものと誤解されていた時点よりも統一という響きはもっともらしく響いているものであろうか?より適切に言えば、適用と運用が終了された前後を比較して、台湾が中国と統一する公算に明らかな相違が認められたであろうか? その答えは明白に過ぎる。

合衆国側は「現状維持」を望むが故に後者(「凍結」)が本当であると断固主張するのだと結論付けた評論家もある。台湾が保っている貴重な「現状」の正確な有り様もまた、様々な解釈と論議の的となっている。台湾は必要条件を満たしており、独立国家であると常識的な見解を述べる者もいれば、台湾は常に中国の一部であると譲らない者もある。しかし、仮に現在の台湾が独立国家でも中国の一部でもないとすれば、独立か統一の何れかに近づいていくものであろうか?「現状」が何であるかというコンセンサスに達しさえすることが不可能なように思えるし、まして統一見解など存在し得ない。

結局のところ、2008年に総統に選ばれる者は誰であれ統独問題により決定的な姿勢が求められるであろう。このところの動向を眺める限り、中国国民党(KMT)主席であり、台北市長でもある馬英九氏が総統に選ばれた暁には(もし、仮にそういう事態になったとすれば)、就任後の初仕事はNUCと綱領の復活ということになりそうである。
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5 コメント

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新入り(本題には関係なし) (大介)
2006-03-13 20:17:01
 こんばんわ。今日から読まさせていただきます。いつも不思議に思っている国民党の考え方など知りたいな、と思っています。



 実家には故・蒋介石総統の絵皿があります。あれが家にきた頃の国民党は「中華民国で中国統一する」だと思っていましたが、いつのまに「中華人民共和国で…」になっている? てな低次元なことですが・・・。

 
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台湾人の心理って? (toorisugari)
2006-03-14 00:47:42
うーん,やっぱわかんらんのです!

いや,台湾人のアイデンティティって,結局なんなの?片や台湾人を自称しておきながら,片や中国人を自称しているような気がしてなりません.そりゃ,内戦分離した国民党が中国人と叫ぶのはわかりますよ.一方,多くの外省人と呼ばれる人達は自分たちは台湾人だと思っているというのも聞いています.現状維持が一番無難な選択肢であるのも理解できます.それでも,最近の入ってくる様子は,特に自己主張はせずに,ゆっくりと大陸に近づこうとしているような感さえあります.

別に台湾が反日でもいいでんすが,あんまり反日やってると,いざ大陸からの圧迫をうけたときに,日米安保が対処しにくくなるのも分かっているはず.それでも,反日で眉中する連戦やら,尖閣を前面に出す馬英九やら.なーんか,嫌な空気が漂っている気がしてなりません.

で,ようやく本題なのですが,実は台湾人って,そんなに台湾に執着していないのではないでしょうか?人それぞれでしょうが,全体としては,独立にそんなに執着せず,統一にもあまり拒否感を持っていないような気がしてならないのですが...

と,憶測ばかり書いてすみません.もしよろしければ,台湾人の気持ちみたいなのを教えていただけると嬉しいです.

長文失礼しました.
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旅行者としては?ですが・・・・ (tsubamerailstar)
2006-03-14 19:44:39
>大介様、toorisugari様



私自身単なるpasserbyに過ぎず、よく解らないので申し訳ないのですが、「日本紙の報道や日本人の感覚と現地のそれとでは随分なギャップがあるようだ」ということは最近解ってきたような。(笑)

例えば、toorisugari様が仰っている「独立」という単語一つにしても、一年位前から「台湾ってどこにも従属してないでしょ?」と何の事だか解らなかったのですが、どうも「台湾独立!」と声高に叫んでいる〝日本人〟は「打倒中華民国体制」ということでメリケンの英国からの独立戦争とか、フランス革命や明治維新のようなイメージで言っているようです。(従って、「北京五輪までが独立する最後のチャンス」とか「北京五輪に合わせて台湾は独立宣言する」といった根拠のない話をする人も)

ただ、「どこにも従属していない」という台湾の「現状」は00年にDPPに政権交代して以降深化していると思いますし、そういう中で「どこにも従属していない台湾の現状」に執着している人は圧倒多数ではないのでしょうか。あの馬英九KMT党首ですら、3月2日にエレリー副報道官が陳水編〝総統〟と呼ばなかったことに対して米国側に抗議し、アーミテージ氏にも噛み付いていたくらいですから・・・・

この社説が言っているように「万が一」08年の総統選でKMTが政権奪還するにせよ、藍色陣営52vs緑色陣営48みたいな僅差での決着でしょうし、そうなると48%の民意を無視した勝手な真似は出来ない(そもそも半大統領制みたいな中途半端な体制では総統の権限がそんなに強いわけではないようです)でしょう。

04年の総統選では在台の外国人記者はほとんど「連戦KMT」で予定稿を書いていたそうですし、00年の総統選での劇的な政権交代をずばり予想していた記者も少なかったそうです。

小泉首相は「選挙はやってみないと判らない」とか言っていましたが、台湾の総統選って、JRAで言うところの福島か小倉のGⅢハンデ戦みたいに波乱含みですね。総統選に至る以前に00年の総統選前みたいにKMTが割れることもあるかもしれませんし、どうなるんでしょうか・・・・



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馬英Qのデモ (平凡会社員)
2006-03-14 23:15:08
>台湾の野党は昨日デモを強行した



数千人規模だったそうですね。(主席が先頭に立って行ったデモにしては、ショボイと言うか、微妙な人数ですね…)

当初十万人を動員する!と言っていたように思うんですが…

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だ、そうですね! (tsubamerailstar)
2006-03-15 00:07:17
>平凡会社員様



むじな様のところでロイターも日本のみの報道ということでショボ過ぎると思いましたが、目標対比1%を笑う反面、こいつは昨年の26日の「反国家分裂法反対デモ」(だったかな?)も過小評価してましたね。AFPの写真見てこれまた一桁違うようなと思った記憶があります。



タオルのダンピング問題に関しては目をつぶっているようですが、台北タイムズ紙は「こいつが言うところの民意というのは、中国の連中もカウントしてるんじゃね?」みたいな指摘してまして、あ、鋭いなと思いました。

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