Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

あなたなら、どうする

2019-03-17 23:11:23 | ひとから学ぶ

 先日のこと、阿南町新野の現場に入った。さすがに我が家から出ても新野までというと遠い。休む間もなく歩き回っていたが、さすがに午後ともなれば口が乾く。道端の自販機を探してお茶を買おうとした。いくつか並んでいた自販機のひとつに120円を入れて買おうとしたが、別の自販機に目がとまり、よくあるケースだが、「こっちの方がいいか…」と思い買おうとしていたものをやめてつり銭の穴から一旦投入したお金を取り出した。「・・・やけに多いな」。数えると120円が360円になっていた。

 そういえばわたしが自販機の並んでいる場所に車を止めようとしたら、先客がいて、車を「どこに止めようか」と少し躊躇した。すぐに先客は発車していったが、先客はわたしと同じような身なりの、いわゆる現場仕事に来ているような風体の2人だった。ここでこの3倍返しのつり銭をいただくのは、もし先ほどの先客が戻ってきてつり銭がなかったら、「あいつが持っていった」と思われるのも嫌だったので、わたしが投入した分だけを取り出して、残りはつり銭の穴に戻したというわけだ。もちろん先客がつり銭を取り忘れた本人とは断定できないし、自販機は4台ほど並んでいたから、どの自販機で購入していたかもはっきりしない。

 近くの現場を済ましたあとに、それでもと思いもう一度その自販機に立ち寄ってみると、先ほどの240円は姿を消していた。道端の比較的目立つ自販機だから、利用客も多いのだろう、それほど長い時間がたっていたわけではないが、お金は消えていた。もちろんつり銭を取り忘れた人が戻ってきて持ち去ったとも考えられるが、「儲けた」と思って持ち去る人もいるだろう。そもそももう一度舞い戻ったわたしにも卑しい期待があったかもしれない。

 そんなことを思いその場を立ち去ったわけだが、しばらく走ると女の子が手にペットボトルを持って歩いていた。ふと通り過ぎる際に顔を見ると、ずいぶんにこやかに、そして軽やかに一人で歩いていた。「もしや」と先ほどの自販機の物語の続きに仕立て上げてしまったが、それはわたしの思いすごしだとは思う。でもそんな物語が成立したら「面白い」と思うとともに、思わず車を止めて彼女の様子をうかがいたくなってしまった。それほど女の子の表情は嬉しそうだった。


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