余里上組自然石道祖神①
一覧表のとおり、余里には道祖神が14箇所あげられている。そのうち文字碑2基、単身像というものが1基あるだけで、あとはすべて自然石である。
余里は武石川と下武石で合流する余里川を遡ったところにある谷あいである。周囲の峰はそれほど高くはなく、山間地ではあるものの、日当たりの良い地域といえる。「一里花桃の里」と言われ、川沿いを上っていく道沿いには花桃の木が目立つ。そして「一里」と称しているように、延々と花桃の植えられた光景が奥まで続く。その最も奥の集落は現在余里三班と言われているが、かつては上組といわれていたようだ。まず余里川右岸、奥から3軒目家の裏手、道に向かって石垣を組んだ上にそれらしいものが祀られていた。このあたりには石があちこちにごろごろしていて、どれが道祖神か見分けがつかないものだが、この祭祀空間は「道祖神だろう」と想定できた。主たる石は三つだが、周囲にそれより小さめの石も転がっていて、どれが道祖神かははっきりしない。草むらの中にある石もそこそこ大きいから、それも道祖神なのかもしれない。
余里上組自然石道祖神②
家の裏手にある道祖神から川沿いを下ること100メートルほどのところ。用水路の脇に自然石が立っていた。ひとつだけであり、一つの石だけが立っているから道祖神とはわからない。このあたりの道祖神は複数個の自然石が祀られていることが多いから、このケースは珍しい。さすがにわたしにはこれを道祖神と判断するのは難しかった。地元の方に「道祖神」と言われて確認できたほど。まさにごつごつした石であるが、写真を見てもわかる通り、周囲にも石が転がっているが、それらは道祖神ではないようだ。
余里上組自然石道祖神③
余里川を左岸側に渡って、反対側の家が並んでいる空間への三叉路に、やはり石垣があってその上に祭祀空間らしき場所がある。草が生い茂っていて、それら草を取り除いてみたが、小さな石もあって、ここもどこまでが道祖神なのかはっきりしない。「石垣」と表現したが、これもまたそれらしく並べてあるから石垣としたが、これらも転がっていれば道祖神に見える。その上に散在している道祖神は、主たるごつごつした石が四つ、あるいは五つあるだろうか。そしてそれ以外の小さな石も転がっている。転がっている、ではなく、祀られていると言われればそうとも見える。前者からの距離は50メートルちょっとと、「近い」。
余里上組自然石道祖神④
この三叉路から余里川を下ること、120メートルほどのところ、左手道端の石垣の上に、同様に祭祀空間らしきものが見える。ごつごつした主たるそれらしい石は四つだろうか。いずれにしてもこの奥まった地域の100メートルから200メートルもない範囲の4箇所に自然石の道祖神が祀られている。近くの家で聞いたところ、余里川から拾ってきたものという。すべて自然石で、いわゆる碑形式のものはひとつもない。もちろんそれでいて「道祖神」と称しており、「道祖神はどこですか」と聞くとすぐに案内してくれる。これほど狭い範囲に何か所も道祖神が祀られているというところに驚く。
余里上組の集落
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