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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

兵庫県和田山町へ(昭和63年の記憶①)

2025-06-20 23:50:26 | つぶやき

 昭和63年4月30日は、遥北石造文化同好会の第5回例会だった。兵庫県朝来郡和田山町宮の円明寺を訪れるという内容だったが、その報告を『遥北通信』61号(昭和63年5月15日発行)にしているが、参加者について記載がない。記憶ではこの例会、結果的に参加者はわたし一人だったと思う。円明寺まで、当時は生家に暮らしていたから距離にして370キロほどあった。高速道を利用して5時間近くかかるという遠さである。当時のネガフィルムにはほぼ円明寺のものしか写っていないので、円明寺の守屋貞治仏だけを目的に向かったと思う。

 さて、本題の貞治仏については後述するとして、寺を後にした帰路で近在で何枚か寺以外の写真を撮っている。それが下記の写真である。1枚目は道標であり、左側に「左たんばみち」右側に「右やなせみち」と記されているもの。もちろんどこにあったものか位置は不明である。2枚目は鯉のぼりのあがる民家の写真を撮ったもので、この写真についてはわたしのホームページで紹介している。3枚目も同じく民家を撮ったものでかやぶき屋根だったことに魅かれて撮ったものと思う。いずれも白黒のため実際のイメージにはほど遠いかもしれないが、和田山町の農村の一コマだったと思う。

 

 

 和田山町は平成の合併によって朝来市になっている。その朝来市の文化財に指定されているのが守屋貞治の延命地蔵菩薩である。下記に文化財一覧にある指定説明を引用した。


石造延命地蔵菩薩像

朝来市和田山町宮

文政年間(1818~1830)頃 延命地蔵。
製作者である石工・守屋貞治 信州高遠 人で、名工として知られていた。貞治 信州上諏訪 臨済宗温泉寺 住職・願王和尚に師事し、和尚が同じく弟子であった円明寺 光隣和尚を訪ねてきていることから、そ 縁で貞治が造像にあたったも である。大きな蓮台 上、円光背を放ちながら錫杖と宝珠を持つこ 像 、但馬内 石造像 なかでも規模が大きくすぐれたも  一つである。なお、顔面に 、右目下から鼻にかけて、斜めに走る傷がある。石自体 もつ内部組織 粗い部分が、浮き出たも であるが、不思議なことに、願主 光隣和尚にも同じところにシミがあったという。和尚 、傷を消そうと苦心している貞治を慰め「シミ取り地蔵」と名づけて供養したそうである。今でも、アザやシミを取り除いてくれるお地蔵様として、近隣 人々 信仰を集めている。

 

昭和63年4月30日撮影

 

高遠町誌編纂委員会が発行した『石佛師守屋貞治』(昭和52年)にはこの石仏について次のように記されている。

 両側に芝を植えた石階をのぼると、二層の山門正面に「東河法窟」と願王筆の扁額がかかっている。山門を入るすぐ左側に、方二間瓦葺入母屋造りの美しい地蔵堂があり、中に貞治仏の延命地蔵大菩薩が坐す。面長で眼じりの長くつりあがったたくましい御相で、将に貞治円熟期の作。此の種の貞治仏には美男の相が多いが、これは手、足、骨格ともにガッしりした剛健なお姿である。
 右頬、鼻のつけねに傷がある。此の傷について貞治は、顔の中心部であるし、これを消すのに苦慮したが、願主光隣和尚は、「わしの頬にもシミがある。それは気にせんでもよい」と言われたとか。
 石材は一個の青石の丸彫りであるが、此の石の内部に組織のあらい処があり、他にも右掌にのせている宝珠の内側に傷が認められる。こんなことから此の地蔵尊は別名アザ取り地蔵とも呼ばれ、顔のアザやシミなどを取り除いてくれる地蔵様として信仰されている。六角台座の正面に「摩詞薩」向って右に「無仏世中金環」左に「聾動南北西東」末尾に「願王全提」と書印が押されている。その上に反花、六角の敷茄子と積み上げ、三重の蓮華座上に左膝を立てて坐す。
 地蔵堂の床下には十個程の巨石が並べられ、四周の石は床柱の礎石となり、床の中央には特に巨岩を据えて、その石が床面まで露出して、基壇以上がどっしりと据えられている。天井には棟札が打ちつけられている。

 天保五甲午春 三月十五日
 皇風永扇 帝道■(しんにゅうに「段」)昌 大工竹田幾右門
 大地蔵尊堂一宇建立 木挽宮村繁三郎 現住比丘眼光隣代
 仏日増輝 法輪常轉

 天保五年の三月、此の地蔵堂が建築された。この地蔵尊を納める為である。三面は引戸になって居り、丹念な彫刻を施してある。貞治作の大地蔵尊を納めるにふさわしい立派なお堂である。

というもの。現地の石材を探して彫られたものなのだろうが、たまたま鼻の脇にアザがあって苦慮したという。文政年代貞治50歳代に彫られたもので、願王和尚に連れられて円明寺を訪れ3か月滞在したという。

続く

 


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