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”統一王者”田口登場,南アの元アイドルと激突 - 大田区総合ダブル世界戦直前プレビュー -

2018年05月20日 | Preview
■5月20日/大田区総合体育館/WBA・IBF2団体統一世界L・フライ級タイトルマッチ12回戦
統一王者 田口良一(ワタナベ) VS 元WBAミニマム級王者/位 へッキー・バドラー(南ア)



南アフリカの軽量級アイドル(だった),バドラーが遂に初来日。ミラン・メリンド(比)との統一戦を見事勝ち残り、井岡一翔(引退)に次ぐ2団体統一王者となった田口にアタックする。

ミニマム級の王座を失った後、2016年10月の再起戦に合わせて階級アップ。108ポンドへの参戦に打って出たバドラーは、昨年2月に2つ目のチューンナップをこなし、9月にフィリピン遠征を敢行。八重樫東(大橋)を衝撃の初回KOに下し、108ポンドのIBF王座を奪取した強豪メリンドに挑戦したが、最終回にダウンを奪われ判定負け。

ジャッジのスコアは1-2で割れたが、バドラーに2ポイントのアドバンテージを与えたのは、南アから同行した同胞の審判だった。日本から派遣された原田武夫は、7ポイントの大差でメリンドを支持。ネバダから呼ばれたグレン・トゥロウブリッジも、3ポイント差で王者。
※原田はホームの王者陣営に忖度し過ぎており、妥当と思われるのトゥロウブリッジ。

メリンドも背は低いが、フライ級を主戦場に戦っていた。王座奪取の為に階級を下げ(戻し)、八重樫を鮮やかな左フックの一撃でし止めて載冠。基本的な体力&パワーの差が懸念されたが、バドラーの仕上がりは極めて良好。メリンドを相手に接近したラウンドを多く作り、想像以上の大善戦と評していい。


105ポンドで人気を博した荒ぶる突貫ファイターは、慎重に出はいりを繰り返しながら、「打っては離れ,離れては打つ」正攻法のボクサーファイターに変貌。敵地に赴き、実力者メリンドと渡り合う為に選択した、より現実的な戦い方とも言えるし、心身ともに激しい打撃戦に耐えられなくなったとも言える。まとまりが良くなった分、せわしないラッシュ戦法への対応に追われる心配は少なく、往時の突破力は無い。

170センチ近い長身の田口との体格差、キツいプレッシャーに押し負ける格好で王座を失ったメリンドに、ダウンを喫して敗れたバドラー。105ポンドの政権後半には、突貫ファイトによる疲労と消耗が顕著になっていたが、減量も限界に達していたようだ。3ポンドの余裕を得て、バドラーのフィジカルはリフレッシュしたとの印象。

メリンドを間に置いた単純な三段論法を持ち出すのは、いささか早計に過ぎる。メリンドはもともと圧力に弱く、体力勝負の長期戦が苦手。好戦的なスタイルとの相性がとにかく悪い。最盛期(2010~2014年頃)のバドラーなら、イケイケのインファイトで押し切れたかも・・・。


この階級では反則と言ってもいいサイズを武器に、ひたすら前進を繰り返して白兵戦を仕掛け、我慢比べの打ち合い勝負に引きずり込む。外見から想像するのは、長いリーチを活かしてジャブを突き、距離をキープしながらのアウトボクシングだが、田口の持ち味はそこにはない。自らも被弾を覚悟の上で、徹底的にプレッシャーをかけて行く。

まさかこのスタイルで、田口がここまで防衛(V7)を続けるとは・・・。相性のいいメリンドには、かなりの確率で勝てるだろうとは思ったが、スコアは僅小差になると考えていた。スタミナがキツくなる後半~終盤にかけて、右の強打をヒットし続けて圧倒する姿に、素直に感嘆した。

海外の主要なブックメイカーの直前オッズは、概ね1-6で田口が大差のリード。メリンド戦の内容と結果が影響しているのは確かだが、体格差のアドバンテージも無視はできないといったところか。

最大の不安は、田口のダメージと勤続疲労。心身への負担が大きい戦い方だけに、消耗が肉体的な限界を超えた途端、突然糸が切れたマペットのようにガクンと倒れるリスクは常に内在する。減量も楽な筈はなく、防衛疲れの顕在化が怖い。

105ポンド末期のバドラーなら、問題なく蹴散らしてしまうだろう。しかし減量苦から開放された南アの元アイドルは、それなりに息を吹き返している。メリンド戦のコンディションとメンタル・タフネスを前提に、王者田口が6-4で有利。中差の3-0判定(挑戦者の状態次第で中盤以降のストップも有り)と見立てておこう。


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□前日計量と予備検診

<1>王者 田口(31歳)/前日計量:108ポンド(48.9キロ)
戦績:31戦27勝(12KO)2敗2分け
アマ通算:2戦2勝 (2KO・RSC)
身長:167.5センチ
リーチ:170センチ
首周:35センチ
胸囲:88センチ
視力:左1.0/右0.8
好戦的な右ボクサーファイター

<2>挑戦者 バドラー(30歳)/前日計量:108ポンド(48.9キロ)
戦績:34戦31勝(10KO)3敗
元WBA世界ミニマム級王者(V5)
※V6戦前にスーパー王者昇格,バイロン・ロハス(ニカラグァ)に敗れて王座転落
身長:159.5センチ
リーチ:166.5センチ
首周:36センチ
胸囲:81センチ
視力:左右とも1.5
好戦的な右ボクサーファイター




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□オフィシャル

主審:サム・ウィリアムズ(米/ミシガン州)

副審:
マイク・フィッツジェラルド(米/ウィスコンシン州)
ネヴィル・ホッツ(南アフリカ)
中村勝彦(日/JBC)

立会人(スーパーバイザー):
WBA:安河内剛(日/JBC)
IBF:ベン・ケイティ(豪/IBF Asia担当役員)

前日計量を無事に終えた後、審判の人選を巡りルールミーティングで紛糾。バドラーの同胞である南アフリカ人が、ジャッジの中に加わっていた為、渡辺会長がJBCに対して猛抗議を行い、メキシコのアルフレド・ポランコを外して、急遽中村審判が加わることになったというもの。

このお粗末極まる騒動に対して、渡辺会長のファイン・プレイであるかのごとく報じる記事も目にしたが、事実はまったく逆だ。一般的に複数団体の統一戦に派遣される審判は、タイトルマッチを承認する認定団体間でそれぞれが面子を推薦し合い、すり合わせを行う。
※王国アメリカだけは例外(別格)で、原則として開催地を所管する州コミッションから審判を選ぶ。

人選がどんなに遅れても、2週間ぐらい前には開催地のコミッションを通じて、興行を主催するプロモーターと両陣営に通知される筈だ。ジムの会長がプロモーターとマネージャーを兼ねる、世界に例を見ない独自の方式を採る我が国では、JBCに通告された時点で会長さんも知っていなくてはおかしい。

なぜなら、審判団を含むリング・オフィシャルを接待しないプロモーターは皆無だから。彼らの渡航と滞在費用を事実上負担しているのは、結果的に興行を主催するプロモーターなのである。航空券からホテル&送迎の手配は勿論、食事のお世話から試合前後の観光を含め、文字通りの上げ膳据え膳状態が当たり前ということも・・・(審判の買収は、古今東西プロ・アマの別を問わず,ありとあらゆるスポーツに巣食う根深く構造的な課題ではある)。

かつて内藤大助が亀田興毅の挑戦を受けた時、来日した審判団を亀田陣営が送迎していたことを知った宮田会長(内藤の所属ジム)が激怒し、JBC事務局に抗議したと伝えられたことがあったが、事はそれぐらいデリケートな問題なのだ。

プロモーターのみならずリングで相まみえる両陣営が、認定団体による審判の人選に直接口を挟むことは絶対に許されない(八百長の防止)が、示された審判団の面子に対して意見(文句)を言うことはできる。

大橋秀行会長から、JPBA(日本プロボクシング協会)のトップを引き継いだ渡辺会長が、審判の人選を本番前日まで本当に知らなかったとしたら一大事だ。にわかには信じ難い張特大のボーンヘッドであり、JBCの現場を取り仕切る安河内事務局長も、いったい何をやっていたのか?という話なのだ。有体に言って狂っている。


※関連記事
<1>あすダブル世界戦 田口良一防衛戦でジャッジ変更
5月19日・Boxing News
http://boxingnews.jp/news/58156/

<2>田口陣営異議…ジャッジが挑戦者と同じ南アフリカ人
5月19日/ニッカンスポーツ
https://www.nikkansports.com/battle/news/201805190000501.html

<3>田口陣営、対戦相手と同じ南アフリカ人ジャッジに異議「頭おかしいんじゃないか?!」
5月19日/スポーツ報知
http://www.hochi.co.jp/sports/boxing/20180519-OHT1T50127.html


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■ダブル・メイン
<1>IBF世界ミニ・フライ(ミニマム)級タイトルマッチ12回戦
王者 京口紘人(ワタナベ) VS IBF10位 ヴィンス・パラス(比)



日比の若き俊英対決。昨年大晦日の初防衛戦で、カルロス・ブイトラゴ(ニカラグァ)を圧倒。しぶといベテランにほとんど何もさせず、8回TKOに下したのは立派の一言。3度目となる世界戦。弱冠19歳の挑戦者を迎えて、王者には余裕の笑みが絶えない。

13連勝(11KO)の勢いに乗り、初来日を果たしたパラスは、本格派の右ボクサーファイター。戦績が示す通り左右ともにパンチがあり、フィリピン伝統の柔らかいボディワークを操りながら、鋭い踏み込みもろとも上下に打ち分けるコンビネーションで的確に崩して行く。右ストレート,フックから返す左も強く、ボディブローもかなりの威力。

ボクシングが練れているのは、むしろ19歳のパラスの方で、体格差を活かした圧力が思うようにかからないと、想像以上に手を焼かされそう。相手を呑んでかかることも重要ではあるが、ランキング以上の好選手と見て間違いなく、油断すると痛い目に遭う。

判定勝負を前提に、丁寧な組み立てで慎重に立ち上がった方がいい。順当なら、京口の小~中差判定勝ち。王者の出方次第では、波乱の可能性も有り。


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□前日計量と予備検診

<1>王者 京口(24歳)/前日計量:105ポンド(47.6キロ)
戦績:9戦全勝(7KO)
アマ通算:66戦52勝(8RSC・KO)14敗
大阪府立伯太高校→大商大(ボクシング部主将)
2014年国体優勝
2014年台北カップ準優勝
※階級:L・フライ級
身長:161.8センチ
リーチ:164.5センチ
首周:36センチ
胸囲:93センチ
視力:左0.4/右0.5
右ボクサーファイター

<2>挑戦者 パラス(19歳)/前日計量:105ポンド(47.6キロ)
戦績:13戦全勝(11KO)
身長:158.8センチ
リーチ:164センチ
首周:34センチ
胸囲:82センチ
視力:左1.0/右2.0
右ボクサーファイター




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□オフィシャル

主審:ベンジー・エステべス・Jr.(米/ニューヨーク州)

副審:
マイク・フィッツジェラルド(米/ウィスコンシン州)
ネヴィル・ホッツ(南アフリカ)
アルフレド・ポランコ(メキシコ)

立会人(スーパーバイザー):ベン・ケイティ(豪/IBF Asia担当役員)