goo blog サービス終了のお知らせ 

ネットオヤジのぼやき録

ボクシングとクラシック音楽を中心に

狂犬のように追いかけ、ゴリラのように殴る・・・一世一代の檜舞台に臨む亀海喜寛 - 悔い無き闘いを/コット VS 亀海 ショートプレビュー -

2017年08月27日 | Preview

■8月26日/スタブハブ・センター,カリフォルニア州カーソン/WBO世界J・ミドル級王座決定12回戦
4階級制覇王者/WBO1位 ミゲル・コット(プエルトリコ) VS WBO5位 亀海喜寛(帝拳)



まさかこんな形で、亀海の世界戦が決まるとは・・・。

率直に現状を語れば、2015年11月のカネロ・アルバレス戦以来、およそ1年9ヶ月ぶりにカムバックするプエルトリコのレジェンド,ミゲル・コットの復活祭を盛り上げる為に厳選された生贄に他ならず、亀海の勝機はゼロに等しい。

ファイナル・プレス・カンファレンスにおいて、興行を取り仕切る総帥オスカー・デラ・ホーヤから、”鋼鉄のハート=コラソン・デ・アセロ(Corazon De Acero / Heart of the steel)”と紹介を受けたエピソードを、国内スポーツ紙のWeb版でも伝えているが、米本土における亀海のイメージは、”Japanese Warrior”という表現にすべて集約されている。

すなわち、被弾を恐れずひたすら前進し、強打を振るう勇敢かつ獰猛なファイター。”技術的には拙いが・・・”という注釈が込みであることも、正直に話さなければならない。当て逃げ安全運転が大手を振ってまかり通る現在、もはや絶滅危惧種と言っても過言ではない、一時代前のブル・ファイトを体言するジャパニーズ・サムライ。


S・フライ級の大場浩平(スペースK→真正/引退)とともに、日本人には珍しいL字ガードの使い手として名を馳せ、独特のムーヴィング・センスと防御勘で相手のパンチを殺しながら、タイミング抜群の右カウンターで倒す。

140ポンドのS・ライト級で頭角を現し、OPBF,日本王者として将来を嘱望されていた頃の亀海を知る者としては、素直に喜べない評価ではあるものの、加齢と増量の影響もあって、若き140パウンダー当時と同じボクシングはもはや維持しようがない。

2011年10月に初渡米。西岡利晃 VS ラファエル・マルケス戦の前座で、アルバカーキのローカル選手を6回TKOに屠った亀海は、以降ウェルター級への定住を表明すると同時に、主戦場を米本土へと移した。

そして2014年の暮れ、さらに154ポンドのS・ウェルター級へとアップ。昨年9月、ヘスス・ソト・カラスとの再戦までの6年間に14戦をこなしているが、そのうち8戦を米国で戦って、結果は3勝(3KO)3敗2分け。

勝った試合はすべてKOしているとは言え、勝率は4割を割り込む。日本のボクサーが上ること自体が難しい中量級で米本土のリングに踏み止まり、ゴールデン・ボーイ・プロモーションズ(以下GBP)との直接契約(共同プロモート/石田順裕に続く2人目の快挙)を実現しただけでも賞賛に値するとは思うが、厳しい数字と言わねばならない。

常識的に考えれば、とても世界タイトル挑戦が許される戦果とは言えず、上位に進出したWBOの世界ランキングも、コット戦が具体化したことによる副産物と見るのが妥当。







ご本尊のミゲル・コットは、ホセ・トレス,カルロス・オルチス,ウィルフレド・ゴメス,ウィルフレド・ベニテス,ティト・トリニダード等々、伝説的なボクサーを多数輩出してきたプエルトリコを代表する王者の1人。

あらためて申すまでもないけれど、同国初の4階級制覇を達成しており、引退を表明した場合、最短(ラスト・ファイトから丸5年経過)での殿堂入りを確実視されている。紛うことなきビッグネーム、正真正銘の大物だ。

繰り返しになって恐縮だが、長期休養を終えて実戦復帰を迎えたコットに、豪快なノックアウトで白星を献上する為だけに選ばれた、典型的なアンダードッグの役回り。

長年応援してきたファンや、ご家族を含む後援者の皆様には大変申し訳ないと思うけれど、オファーを受けた亀海自身が他の誰よりも承知している。そして勝ち目があろうがなかろうが、この機を逃す選択肢は亀海にはない。人生を一変させ得るビッグ・チャンスとは、そもそもそういうものなのだろう。

現地で受けたインタビューの中で、「世界タイトル挑戦云々ではなく、ミゲル・コットと戦う現実が何よりも重要。」と答えている。

「(世界王座が乱立する今)ただ、チャンピオンになるだけなら、やり方は色々あると思う。でも、誰に勝ったのかということは常に問われる。」


亀海が今回のチャンスを得たのは、因縁の相手ヘスス・ソト・カラスをTKOした、昨年9月の勝利が大きくモノを言っていることも事実ではあるものの、「技術的には拙いが、真正面から打撃戦を挑む勇敢なファイター」との評価(現実)が、一度は離反したGBPと再び手を組み、キャリアの最終章を飾るべく動き出したコットと彼の陣営の目に止まったと、そう見るのが正しいのではないか。

米国における亀海の戦績が、世界タイトルのコンテンダーに相応しいものでないことは誰が見ても明らかで、とりわけ痛かったのは、ローカルランカー・クラスのホルヘ・シルバ(メキシコ)と引き分けた渡米第2戦(2012年10月)と、元コンテンダー,アルフォンソ・ゴメス(米/メキシコ)に喫した完敗(2015年3月/10回0-3判定)である。

S・ライト級のWBA暫定王者だったジョハン・ペレス(ベネズエラ)、フェザー級からウェルター級まで階級を上げて、メイウェザー挑戦に辿り着いたロバート・ゲレロ(米)に負けたのは仕方がない。現代の邦人ウェルター級で、この2人と戦って格好になるのは、おそらく亀海だけだろう。

しかし、シルバとゴメスには勝っておきたかった。いや、勝たなければならない相手だった。本来ならば、取りこぼしが許されないレベルに勝ち切れない。これが分厚い選手層を誇る本場の中量級と、慢性的な人材難に喘ぐOPBF圏との違い、明らかなレベル格差の証明・現実なのだと痛感させられる。

だがしかし・・・。


コット戦実現を強力にプッシュしてくれたのも、ゴメス戦の完敗があったればこそ・・・と言えなくもない。「負けたから挑戦できた?」といぶかしがるファンもおられるかもしれないが、多団体時代の恩恵,いや、象徴(弊害)とも言うべき事態が亀海にも訪れたとの見方も成り立つから困ってしまう。

基本的な攻防の技術の差を如何なく発揮し、亀海を大差の判定に下したアルフォンソ・ゴメスは、コットとも対戦していたのである。両雄がぶつかったのは、今から9年前の2008年4月。

ニューヨークと並ぶ東部の要所アトランティックシティで、WBA王座を保持していたコットに、ランキング9位のゴメスが挑戦して5回TKO負け。以下に試合映像をご紹介するが、コットもゴメスも27歳と若く元気いっぱいだった。


□試合映像
<1>2008年4月12日/ボードウォーク・ホール,ニュージャージー州アトランティックシティ/WBA世界ウェルター級タイトルマッチ12回戦
王者 ミゲル・コット TKO5R WBA9位 アルフォンソ・ゴメス
https://www.youtube.com/watch?v=iezZiSXNB3Y

<2>2015年3月20日/ファンタジー・スプリングス・カジノ,カリフォルニア州インディオ/150ポンド契約10回戦
アルフォンソ・ゴメス 判定10R(3-0) 亀海喜寛
https://www.youtube.com/watch?v=ePcOUBOmyfs

<3>2011年9月17日/ステープルズ・センター,ロサンゼルス/WBC世界S・ウェルター級タイトルマッチ12回戦
王者 カネロ・アルバレス TKO6R アルフォンソ・ゴメス
http://www.dailymotion.com/video/x2k215x

<4>2012年7月28日/カリフォルニア州サンノゼ/NABO(WBO直轄の北米)ウェルター級王座決定10回戦
ショーン・ポーター 判定10R(3-0) アルフォンソ・ゴメス
http://www.dailymotion.com/video/x2k8gjq


気が向くとサウスポーにスイッチしながら、余裕綽々で戦うコットの技術とパワーを前にゴメスは為す術なし。コット以上にゴメスの攻撃を正面から受け止めたカネロも、最後は圧倒的な力の差を見せつけている。

IBF王座に就く以前のポーターは、目(防御勘)の良さとアジリティを存分に発揮。小兵の不利をカバーして余りある敏捷な動きで、着実にポイントメイク。無理に倒しには行かず、上手にラウンドをまとめ切った。

コット,カネロ,ポーターらのトップクラスに、中堅の上位に位置し続けるゴメスは歯が立たない。特に全盛の勢いを維持していたコットは、さしたる苦労もなく、ワンサイドの展開に持ち込み中盤までにフィニッシュ。彼らの間に厳然と存在する力量の違いは、そのまま北米大陸と東洋(OPBF)圏のレベル格差を、露骨なまでに証明してもいる。


亀海のプレッシャーに慣れたゴメスは、敢えて後退しながら亀海の前進を待ち、軽いけれども速さに注力したワンツー主体のコンビネーションで、ジャパニーズ・ウォリアーのガードの真ん中を叩く作戦に切り替えた。

ロバート・ゲレロやソト・カラスのように、バチバチのしばき合いに応じるかのごとく見せかけ、実際には上手にリスクヘッジしながらラウンドをまとめて行く。

ホープやプロスペクトの踏み台も兼ねた、典型的な中堅どころにすっかり落ち着き、それでもなお本場の中量級で生き残る技術と駆け引きを、亀海は突破することができなかった。

これもまたまた繰り返しで恐縮だが、デラ・ホーヤとの再共闘でラスト・ツアーを開始するコットにとって、攻防のキメが粗く勇猛かつクリーンな亀海は、打ってつけの相手に違いない。




ところが、直前の賭け率はと言うと、これが意外に接近している。

□スポーツブックのオッズ
<1>BOVADA
コット:-550(約1.18倍)
亀海:+375(4.75倍)

<2>5dimes
コット:-525(約1.19倍)
亀海:+320(4.2倍)

<3>シーザースパレス
コット:-500(1.2倍)
亀海:+400(5倍)

<4>ウィリアム・ヒル
コット:2/9(約1.22倍)
亀海:16/5(4.2倍)
ドロー:22/1(23倍)

<5>Sky Sports
コット:2/9(約1.22倍)
亀海:3/1(4倍)
ドロー:25/1(26倍)


コットの年齢(36歳)と、2年近いブランクを懸念してのものだろうか。年齢(トシ)の話をすれば、34歳の亀海も充分にオールド・タイマーではある。公開練習の映像を見ると、コットは実にいいボクシングをしていた。上体と足が良く動き、サイドへ回り込むタイミングを入念にチェック。重量感に溢れた左ボディを、そのまま上に返す得意のダブルは健在。



フレディ・ローチの思惑が、真正面からのガチンコ勝負回避にあることは明白で、亀海の望む打ち合いに付き合う気はなさそうだ。シャープなジャブとフットワークで亀海を突き放し、リズムを崩した亀海が立ち止まる瞬間を逃さず、鋭く踏み込んで上下を叩く(必殺の左フックを軸にした組み立て)。

亀海には、ほとんど対抗する術がないとも思えるが、田中繊大トレーナーに打開策はあるのか。残念なことに、亀海の公開練習は映像がアップされていない為、具体的な手がかりは何もない。そこを敢えて突っ込み、無理にでも展開を想像を巡らせ、亀海の良いイメージを可能な限り膨らませると・・・。


コット攻略の大きなポイントは、右フックだと思う。メイウェザーに大善戦しながら、稀代の省エネ・安全運転キングに敗れた試合で、コットは序盤からメイウェザーの右フックを貰い続けた。マルガリート,パッキャオ,カネロも同様で、彼らも思いのほか右を良く当てている。勝てなかったが、シェーン・モズリー,ザブ・ジュダーの2人も、いいタイミングでコットに右を入れていた。

しっかり顎を引き、顔面をすっぽりガードの中に落とし込み、深めのセミクラウチングを基本を崩さないコットだが、ガードの外側から襲ってくる右フック、打ち下ろし気味に肩越しから突いてくる右ストレートに案外弱い。

打撃戦の土俵にはできるだけ乗らず、亀海の接近を容易に許してくれないであろうコットだが、フットワークをフルラウンズ使い切るだけのタフネスを期待するのは難しく、必ずインファイトの場面は訪れる。

その時亀海が充分過ぎるほど打たれていれば、逆転の1発を願うのは絶望的な状況と言わなければならないが、反撃の力を残していてくれれば、右で苦境を切り拓く可能性が皆無とまでは言い切れない。


打倒コットのカギは、右にあり。悔い無き健闘の成就を祈るとともに、亀海の今後に幸多からんことを・・・。


◎コット(36歳)/前日計量:153ポンド1/2
元WBO J・ウェルター級(V6),WBAウェルター級(V4),WBOウェルター級(V1),WBA S・ウェルター級(V2),WBCミドル級(V1)王者
戦績:45戦40勝(33KO)5敗
アマ通算:125勝23敗
2000年シドニー五輪L・ウェルター級代表(初戦敗退)
1999年世界選手権(米/ヒューストン)L・ウェルター級代表(初戦敗退)
1998年ジュニア世界選手権(亜/ブエノスアイレス)ライト級銀メダル
身長,リーチとも170センチ
右ボクサーファイター

◎亀海(34歳)/前日計量:153ポンド3/4
元OPBFウェルター級(V1),日本S・ライト級(V1)王者
戦績:32戦27勝(24KO)3敗2分け
アマ通算:69戦57勝(31KO・RSC)12敗
札幌商業高→帝京大
2004年全日本選手権優勝(L・ウェルター級)
2004年国体優勝(L・ウェルター級)
2000年インターハイ優勝(ライト級)
身長:175センチ,リーチ:180センチ
右ボクサーファイター





●●●●●●●●●●●●●●●●●●

■主なアンダーカード

<1>WBC世界S・バンタム級タイトルマッチ12回戦
王者 レイ・バルガス(メキシコ) VS WBC3位 ロニー・リオス(米)



ナチョ・ベリスタイン最後(?)の愛弟子レイ・バルガスが、2月に獲得したWBC王座の初防衛戦に臨む。長身痩躯から繰り出す、鋭く重い強打で当たるを幸い倒しまくり、無傷の29連勝をマーク。

長谷川穂積の後継王座を争った2月の決定戦では、英国のギャヴィン・マクドネル(ジェイミーとは双子の兄弟)にしぶとく粘られ、終盤ガス欠気味となってナチョを心配させた。2-0のマジョリティ・ディシジョンは、バルガスにいささか気の毒な判定だったとも思うが、ギャヴィンのタフネスにも驚いた。

挑戦者リオスは、北京五輪の代表権を逃してプロ入りしたトップアマ出身組み。プロ入り当初はフェザー級~S・フェザー級で上位進出を目指していたが、2014年10月、中堅メキシカンのロビンソン・カステリャノス(ガンボアに一泡吹かせた大物食い)によもやのTKO負け。

その後はフェザー級に落ち着き、地道に復調。しかし、126ポンドでの世界奪取は厳しいと感じたのか、昨年暮れの試合を123ポンド1/2で調整。S・バンタムへの階級ダウンを睨み、フェザー級との両面待ちに切り替えていた。

昨年プロ入りした8歳年少の弟アレクシス・ロチャ(今回前座に出場予定)も預かるヘクター・ロペス(チーフ・トレーナー)は、手塩にかけてきたリオスの成長に手応えを掴んでいる模様。

「この3年間、ロニーはハードワーク漬けの毎日に耐えてきた。心身ともに充実し、世界タイトルへの準備は万端だ。バルガスは確かに手強いチャンピオンだが、つけ入る隙はある。」

5月のテストマッチ(ダニエル・ノリエガに4回TKO勝ち)の内容と結果を評価され、バルガスへの挑戦が首尾よくまとまった。不利の前評判を覆し、ナチョの愛弟子にどこまで迫れるか。


◎バルガス(26歳)/前日計量:121ポンド1/2
戦績:29戦全勝(22KO)
身長:175センチ,リーチ:179センチ
右ボクサーファイター

◎リオス(27歳)/前日計量:122ポンド
戦績:29戦28勝(13KO)1敗
2008年北京五輪代表候補
2007~08年全米選手権優勝(バンタム級)
2007年ナショナル・ゴールデン・グローブス優勝(バンタム級)
身長:170センチ,リーチ:180センチ
右ボクサーファイター


○○○○○○○○○○○○○○○○○○
<2>フェザー級10回戦
ジョエト・ゴンサレス(米) VS デイヴィ・フリオ・バッサ(コロンビア)



総帥デラ・ホーヤに憧れてボクシングを始めたジョエト(Joet)・ゴンサレスは、1歳年少の実弟ジョウス(Jousce/5戦全勝全KO/S・フェザー級)とともに、ゴールデン・ボーイのプロモートで世界を目指す兄弟ボクサーとして、ロサンゼルスを中心とした西海岸で注目を集めつつある有望株。

兄弟揃って父から手解きを受け、2人一緒に通えるジムを探したが、弟ジョウスの年齢を問題視され、2年待ってようやく入門が叶ったという。ジョエトは12歳、ジョウスは11歳だった。

きびきびとした動きから、キレのあるパンチを思い切り良く放つ正攻法。デラ・ホーヤがロサンゼルスのベラスコ・シアターで仕掛ける定期興行「L.A.Fight Club」で名前を売り、ここまでは順調な歩みを進めている。

コロンビアのバッサは、WBC12位の触れ込みで2015年9月に来日し、尾川堅一(帝拳)に10回TKOで敗れた元ランカー(一応)。主戦場はS・フェザーで、ライト級での調整も経験済み。今回はフェザー級リミット近くまで絞らされており、どこまで動けるのかは未知数。

パワーパンチャー型の弟に比べて、攻防のキメに青臭さが残り、線の細さも垣間見える反面、シャープネスとモビリティは魅力的。中盤~終盤にかけて、ジョエトがTKOを呼び込めるかどうか。


◎ゴンサレス(23歳)/前日計量:125ポンド1/4
戦績:16戦全勝(8KO)
身長:168センチ,リーチ:173センチ
右ボクサーファイター

◎バッサ(36歳)/前日計量:125ポンド1/4
戦績:22戦19勝(11KO)2敗分け1NC
身体データ:不明
左ボクサーファイター


○○○○○○○○○○○○○○○○○○
<3>S・バンタム級8回戦
エミリオ・サンチェス(米) VS ダニー・フローレス(メキシコ)



ロンドン五輪のメダルを目指していたサンチェスは、紛れもなくエリート・クラスのアマ出身組み。デラ・ホーヤから誘いの手が伸びると、プロ転向を即断。2013年1月に4回戦でデビューすると、キレと伸びのあるパンチで快進撃。将来のチャンピオン候補と目される、軽量級のプロスペクトの1人。

促成栽培を良しとしないGBPらしく、ここまで10回戦の経験は無し。パワーもさることながら、下がりながらカウンターを合わせる当て勘にも優れており、デラ・ホーヤが入れ込みたくなるのもよくわかる。攻撃力だけなら、既に世界で勝負するだけの力はあるが、ディフェンスや駆け引きを含む総合力を鍛える為にも、陣営は先を急がせることなく、手堅いマッチメイクをしばし継続する模様。

連敗中のメキシカンを、どんな風にし止めるのか。年内には、ローカルタイトルを狙わせる方針との事だが、日本のジムならすぐにでも世界戦の交渉に入るのでは・・・。


◎サンチェス(23歳)/前日計量:121ポンド1/2
戦績:14戦全勝(9KO)
アマ通算:76戦(勝敗不明)
2012年ロンドン五輪米国最終予選出場
2011年全米選手権3位
2011年カリフォルニア州ゴールデン・グローブス優勝
身長:168センチ
好戦的な右ボクサーファイター

◎フローレス(27歳)/前日計量:121ポンド1/4
戦績:25戦15勝(8KO)9敗1分け
身体データ不明


○○○○○○○○○○○○○○○○○○
<4>S・ライト級6回戦
ヘナロ・ガメス(米) VS エデュアルド・R・レイジェス(メキシコ)


※左から:共同プロモーターのロベルト・ガルシア,ヘナロ・ガメス,実の父でトレーナー兼マネージャーでもあるルイス・ガメス


サンディエゴ出身のガメスも、サンチェス同様五輪代表候補からプロに転じたエリート選手。メキシコにルーツを持ち、年齢からは想像しづらい練れた身のこなしに加えて、フェイントやインサイドワークにも上手さを見せる。強烈な左フックの上下は重く、右ストレートの破壊力にも目立った不足はなし。

下積みのレベルでは、そう簡単に押し負ける場面も無いと思われるが、唯一判定まで行った今年2月の6回戦では、タフで勇敢な負け越しメキシカンの猛アタックを受け、思わずムキになって打ち返してしまい、年齢相応のオボこい姿もを露呈。

基本的なスタイルは好戦的ではあっても、本来は「打たせずに打つ」万能型のボクサーファイター。受けに回った時の捌き方や、攻守の切り替えを見極める勘にも、なかなかいいセンスを発揮する。

7歳の頃から実父ルイスの指導を受け、今も良好な関係を続ける親子鷹。リオ五輪代表の座をのがや否や、間髪入れずにデラ・ホーヤ御自ら出馬。積極的なスカウト活動を展開し、無事獲得に成功した。

プロ入りに際して、名トレーナーの誉れも高いロベルト・ガルシアがチームに加わり、父のルイスをバックアップする形でプロのノウハウを伝授。普段は黒子に徹しながら、必要に応じて前に出なければならない難しい役どころをソツなくこなしており、流石の一言。

「L.A.Fight Club」の中軸を担う若手には、本当にいい選手が揃っている。対戦相手にも相応のアンダードッグを選び、お手軽なKO一辺倒ではなく、充実したマッチメイクで内容が伴ったカードを数多く提供中。我が国とは根本的に選手層の厚みが異なる為、単純な比較は土台無理で意味がないけれど、正直に羨ましいと思う。




◎ガメス(22歳)/前日計量:139ポンド3/4
戦績:5戦全勝(4KO)
アマ通算:100勝6敗
リオ五輪米国最終予選出場
2015年全米選手権2位
2014年全米選手権優勝
2013年全米選手権2位
※階級:ライト級
身長:168センチ,リーチ:170センチ
右ボクサーファイター

◎レイジェス(26歳)/前日計量:137ポンド1/4
戦績:18戦8勝(6KO)10敗
身長:170センチ,リーチ:177センチ


○○○○○○○○○○○○○○○○○○
セミでバルガスに挑戦するロニー・リオスの弟アレクシス・ロチャ(20歳/8戦全勝5KO)、S・フェザー級のティノ・ナーヴァ(22歳/6戦全勝1KO)、インディオにルーツを持つ22歳のバンタム級,ハビエル・パディーリャ(3戦全勝全KO)らが登場予定。