■7月19日/MGMナショナル・ハーバー,メリーランド州オクソンヒル/IBF世界ライト級挑戦者決定12回戦
IBF4位 テオフィモ・ロペス(米) VS IBF3位 中谷正義(井岡)
2014年1月の載冠(プロ7戦目/角海老の加藤善孝に2-0の判定勝ち)以来、5年半の長きに渡ってOPBF王座を保持し、連続11回の防衛を更新中の中谷が、IBF王座への挑戦権を懸けて、次代を担うであろうトップスター候補の1人,ロペスと激突。
ランキングでは上位の中谷だが、前評判は当然ロペス。オッズの開き方も、馬鹿々々しくなるほどの凄まじさ。
□主要ブックメイカーのオッズ
<1>Bovada
ロペス:-3000(約1.03倍)
中谷:+1100(12倍)
<2>5dimes
ロペス:-3400(約1.03倍)
中谷:+1700(18倍)
<3>SportBet
ロペス:-3145(約1.03倍)
中谷:+1955(20.55倍)
<4>ウィリアム・ヒル
ロペス:1/50(1.02倍)
中谷:12/1(13倍)
ドロー:25/1(26倍)
簡単な来歴と、曲折を経て実現したオリンピックへの参戦に関する経緯などは、以下の過去記事で触れているので繰り返さないが、”絶対王者”ロマチェンコとの対戦が具体化へと動き出しそうなロペスは、トップランクが抱えるピカ一の中量級プロスペクトと表していいだろう。
※過去記事
<1>テオフィモ・ロペス,連勝の波に乗るシャクール,復帰途上のディアスらが競演 - クロフォード VS カーン アンダーカードショートプレビュー -
4月20日
https://blog.goo.ne.jp/trazowolf2016/e/19e32fdaad6dff74df9919594b1c08c9
<2>ガーナの旋風ドグボェ再登場/トップランクが誇る中量級プロスペクトもビッグアップルに集合 - ロマチェンコ VS ペドラサ アンダーカード・プレビュー -
2018年12月9日
https://blog.goo.ne.jp/trazowolf2016/e/1415c1e50ca3fbced35aa45e663414be
サイズには恵まれなかったが、抜群の切れ味と瞬発的な機動性に優れ、スピード,パワー,テクニックが高い水準で融合した正統派のボクサーファイターとして、次世代のエースと期待される逸材だ。
適時出はいりを繰り返しながら、ジャブと左フック(上下)を起点に切り崩しを図り、右の強打をまぶしたコンビネーションで積極的に攻め込む好戦的なスタイルをベースに、ディフェンスは俊敏な足捌きが中心だが、L字の構えとボディワークも器用に操り、ロープ際の攻防や接近戦にも相応の適性を感じさせる。
とにかくパンチがシャープで、今のところはカウンターを効かせてダウンを奪い、ある程度の連打をまとめてストップを呼び込む、無難な戦い方でまったく問題がない。流れの中で軸足をサウスポーに切り替えて、得意の左フックを叩き込む芸当も難なくこなす。
※御大アラム(中央)が、ロマチェンコ転級後(?)の135ポンドの中軸を期待するオスカル・バルデス(左)とテオフィモ(右)
プロ入り後の最大の戦果は、今年2月にテキサスで行われたディエゴ・マグダレーノ戦。一時は近未来の世界王者と目されながら、プエルトリコの激闘男,ロッキー・マルティネスによもやの1-2判定で敗れた初黒星(2013年4月)の後、2015年10月に実現したWBO王座への挑戦で、テリー・フラナガン(英)に2回TKO負け(アウェイのマンチェスター遠征)。
マグダレーノは丸々1年休んで再起し、3連勝(1KO)の復調途上にあったが、破竹の勢いで勝ち進むロペスの敵ではなかった。善戦健闘で粘る元プロスペクトを7回KOに屠ると、4月には欧州王座を返上して初渡米した旧ユーゴ(コソボ)出身のエディス・タトリ(フィンランド)を5回KOで一蹴。
「ロマチェンコを倒したい。その為の準備は出来ているし、自信も手応えもある。しかし、今はナカタニに集中しないと。彼の経験とこれまでの実績は侮れない。そして充分な敬意も表するけれど、僕のアビリティと才能は彼の経験を凌駕する。」
とても21歳とは思えない余裕のコメント。ボクシングに限らず、スポーツや芸術の世界に早熟の天才はけっして珍しくないが、揺るぎないプライドと自信を示すロペスにとって、現在の中谷は「その他大勢」のアンダードッグに過ぎない。
「(無敗対決とは言っても)日本のファンも含めて、誰も僕が勝つとは思ってないでしょう。ロペスの楽勝だって、みんなそう考えると思う。確かにロペスは強いけど、弱点のないボクサーはいないし、同じ階級で戦う同じ人間ですから。」
「若くて勢いに乗っいる分、僕をナメて雑に出て来れば、きっとKOのチャンスもある。アメリカで戦う機会なんて、そうそうあるもんじゃない。絶対に逃がしません。」
圧倒的な不利を承知で、勇躍敵地に乗り込む中谷の意気や良し。サイズのアドバンテージを活かし、下から踏み込んで来るロペスに得意の右が当たってくれれば・・・・との淡い期待(失礼)もまったく無い訳ではないけれど、パワーだけでなく、スピードと柔軟性にもかなりの差を認めなくてはならず、厳しい展開と結果を想定するのがセオリー。
中谷も頭と体をほとんど振らない現代流で、ボディワークのヴォリュームの少なさが、致命的な被弾に直結する公算が大。開始間もない時間帯での即決という、最悪のシナリオも覚悟すべき状況。
※左から:井岡弘樹前会長(元2階級制覇王者),中谷,井岡一法現会長兼チーフ・トレーナー
下から突き上げる格好になるロペスのジャブと、飛び込みざまの左フックにどこまで反応し切れるか。左を警戒していると、大きく重いけれども、同時にシャープな右のオーバーハンドが襲う。
ワシントンD.C.に近く、ニュージャージーと隣接するメリーランドは、ロペスのホーム(N.Y.ブルックリン出身)と呼んで差支えがなく、ポトマック河畔のカジノ付きホテルの特設会場には、ロペスの背中を押す応援で溢れ返る。
中谷の奮戦を願うのみ。
◎ロペス(21歳)/前日計量:134ポンド1/4
戦績:13戦全勝(11KO)
アマ通算:150勝20敗
2016年リオ五輪ライト級初戦敗退
※ホンジュラス(両親の母国)代表
2016年リオ五輪米大陸予選準優勝
2015年リオ五輪米国最終予選優勝
2015年ナショナル・ゴールデン・グローブス優勝
2015年ユース全米選手権ベスト8
2014年ナショナル・ゴールデン・グローブス2回戦敗退
2014年ユース全米選手権3位
※階級:ライト級
身長:173センチ,リーチ:174センチ
右ボクサーファイター
◎中谷(30歳)/前日計量:135ポンド1/4
OPBF同級王者(V11)
戦績:18戦全勝(12KO)
アマ通算:60戦45勝(30RSC・KO)15敗
高校時代:インターハイ,国体ベスト8
興國高→近畿大
※名門近大が部員の不祥事で一旦廃部となった後は日本拳法部に入部
身長:182センチ,リーチ:180センチ
右ボクサーファイター
幼い頃から父のテオフィモ・シニア(ボクシングの経験者らしい)の指導を受け、五輪代表選手に登り詰めたロペスは、プロ転向後もチームを維持継続。
ニューヨークを中心に16店舗のチェーン展開に成功したバー(tavern)のオーナーで、プロ・バスケットボール・チームのGM(最年少)を経て、数多くのNBAプレイヤーを手掛けたスポーツ・マネージメント会社(Split-T Management)の社長でもあるデヴィッド・マックウォーターと手を携え、世界の頂を目指す。
公開練習では父が構えるミット目掛け、重量感に満ちた,それでいて胸のすくようなスピーディなパンチを、小気味のいい音とともに叩き込んでいた。
プロボクサーの高齢化が進み、アラ・フォーはおろかアラ・フィフも珍しくない昨今だが、やはりボクシングは若者のスポーツなのだと、ロペスやカルロス・バルデラス,ライアン・ガルシアらの活きのいいファイトを見ていて、あらためて実感させられる。
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□リング・オフィシャル:未発表