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ネットオヤジのぼやき録

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カネロが2ヶ月のスパンでDAZNに継続登場 - トルコの雄イルディリムとS・ミドル級統一王座の防衛戦 -

2021年02月28日 | Preview

■2月27日/ハードロック・スタジアム,フロリダ州マイアミ/WBA・WBC統一世界S・ミドル級タイトルマッチ12回戦
統一王者 カネロ・アルバレス(メキシコ) VS WBC2位 アヴニ・イルディリム(トルコ)


※主催プロモーターのエディ・ハーンを真ん中にポーズを取るカネロ(左)とイルディリウム(右)

昨年12月19日、テキサスのアストロ・ドームでカラム・スミスを破り、WBAとWBCのS・ミドル級王座統一を果たしたばかりのカネロが、僅か2ヶ月のスパンでフロリダに見参。

NFLマイアミ・ドルフィンスの本拠地として知られるハードロック・スタジアム(1987年落成/最大:約78,000~80,000席)に、およそ65,000人を収容する規模で会場の設営を行い、制限いっぱいの20%を集客する予定だという。

計画通りにチケットを完売すれば、観客動員は13,000人。密閉されない広大な空間に、密集を避けた上で、現代ボクシング興行のメッカ,MGMグランド(ラスベガス)のメイン・アリーナに匹敵する売上げが見込める。

今回の挑戦者では、1件75ドル以上の価格設定でPPVを売るのは厳しいと思うけれど、幸いにも中継はDAZNだから問題はなし。


カネロのように、屋内施設に最低でも1万人規模の集客が可能なトップ・スターの場合、巨大なサッカ-やアメフトのスタジアムを使う手法は、苦境を強いられているボクシング興行にとって福音になるかもしれない。

例えば、井上尚弥とジョンリエル・カシメロ,ナルディーヌ・ウバーリとの統一戦や、4階級制覇を懸けた世界戦なら、使い慣れた大田区総合体育館に4千~5千人規模を集めて赤字覚悟の勝負に打って出るより、日産スタジアム(現在の横浜国際総合競技場/最大約72,000名収容=国内最大規模)に2万5千人規模の会場を設営して、チケットをセールス(完売)する方がいい。

「芝が傷むから」との理由で断られたら、30,000万人超を収容可能なハマスタ(横浜スタジアム)に15,000人を集めるか、ほぼ同じ規模の千葉マリンスタジアムという手もある。

あくまで「集客力のあるトップ・ボクサーと人気選手」にのみ許される手法であり、日本国内でやるとなれば、雨の心配が少なく暑さの問題もない春と秋限定になるだろうが、大橋会長は屋外施設の利用を真剣に考えても良いのでは・・・。


さて、直前の賭け率だが、想像通りと言うか何と言うか、とんでもないことになっている。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>Bovada
カネロ:-5000(1.02倍)
イルディリム:+1400(15倍)

<2>5dimes
カネロ:-5000(1.02倍)
イルディリム:+3000(31倍)

<3>シーザースパレス
カネロ:-7000(約1.01倍)
イルディリム:+2000(21倍)

<4>ウィリアム・ヒル
カネロ:1/50(1.02倍)
イルディリム:14/1(15倍)
ドロー:33/1(34倍)

<5>Sky Sports
カネロのKO勝ち:1/20(1.05倍)
カネロの判定勝ち:8/1(9倍)
イルディリム:12/1(13倍)
ドロー:33/1(34倍)


万馬券どころの数字ではなくなってしまったけれど、トルコから呼ばれた挑戦者イルディリム(ユルドゥルム,イルドゥルム,イユリディン等々例によってカタカナ表記は様々)は、一応WBCから指名挑戦権を認められており、130戦超のキャリアと世界選手権出場を誇るトップアマ出身者で、プロでも23戦して21勝(12KO)2敗の好戦績を残す。
※WBA:9位/WBCのロジカル・コンテンダーとなった為IBFとWBOはランク外

WBCランキングを上昇するきっかけとなったインターナショナル王座は、2017年5月に元コンテンダーのマルコ・アントニオ・ペリバンを破って獲得した後、2018年9月までにV3を達成しており、初防衛戦の相手はベテランの中堅デレク・エドワーズだった。

プロ転向後の最大の戦果は、初の10回戦で大差の3-0判定をモノにしたグレン・ジョンソン(6戦目で実現した初渡米)だが、対戦時の年齢は45歳。ロイ・ジョーンズをノックアウトしてL・ヘビー級で一時代を築いた達人に、昔日の輝きと技巧は望むべくもない。無名のトルコ人に完敗した元王者は、この試合を最後にようやくグローブを脱ぐ。


確かにKOの数は物足りないし、2度の敗北も、クリス・ユーバンク・Jr.(2017年10月/シュトゥットガルトで3回KO負け/マイナー団体のIBO王座戦)と、一昨年2月に空位のWBC王座を懸けて戦い、バッティングによる不運な10回負傷判定(1-2)に退いたアンソニー・ディレル戦(傷を負ったのはディレル)”物足りなさ感”に一層の拍車がかかってしまう。

とりわけディレル戦の後、武漢ウィルス禍の煽りを食らう格好で、丸々2年に及んでしまったブランクも、凄まじいオッズの開きを生じた要因に間違いはないものの、ガードを固めて前に出る好戦的なスタイルが、「カネロには持って来い(良くも悪くも噛み合う)」と見られている。

元々はキックボクシングをやっていたというイルディリムは、10代前半でボクシングに鞍替え。

アマ時代からプロ向きのスタイルとの評価を得ていたとのことで、ユリオルキス・ガンボア,オドラニエル・ソリスの金メダリスト2人を亡命(ヤン・バルテルミーも合流/金メダリスト3人を獲得)させるべく画策し、無事ドイツでのプロデビューに漕ぎ着けた同胞のプロモーター,アーメット・ウーナー(アフメット・オナー)のスカウトに応じて、2014年3月にプロ転向。


※アーメット・ウーナー(左)とイルディリウム


ドイツ式のコンパクトなガードに頭を包み込み、しっかり顎を引いて圧力をかける戦術は、頑健なフィジカルと重そうなパンチを活かすのが目的と思われたが、開始早々ユーバンクの右ショートアッパーでガードのど真ん中を割られてグラつき、クロスレンジでのフックの打ち合いの最中、ユーバンクの左フックが相打ちのカウンターとなって直撃。

意識を飛ばしてストップされるシーンは、当然のことながら繰り返しスローVTRで流された上、動画配信サイトにもアップ。打たれ脆さを露呈する事態に陥った。

180センチ超の上背に比してリーチが短く、足を使わずプレスに勝機を託すスタイルは、本人の志向もさることながら、アマ時代を含めた豊富な経験で培ったものと思われる。


ジョエル・ディアス(ティム・ブラッドリーをデビューから支えたベテラン・コーチ)の指導を受けてから、ガードを楽に構えるようになり、以前よりもジャブがスムーズに出て、パンチの威力も増した。


※左から:アントニオ・ディアス(ジョエルの実弟/元プロボクサー)/イルディリム/ジョエル・ディアス(ヘッド・トレーナー)


※参考映像:ディアスとイルディリムのトレーニング風景
CANELO OPPONENT AVNI YILDIRIM FIRST LOOK AT TRAINING CAMP; LINKS UP WITH TRAINER JOEL DIAZ
https://www.youtube.com/watch?v=4zhRRX5VH5c

※参考映像:カネロ戦への抱負を語るディアスとイルディリム
AVNI YILDIRIM & JOEL DIAZ ON CANELO CLASH - 'We'll SHOCK THE WORLD!'
https://www.youtube.com/watch?v=8R57W1XkBtM


しかし、アメリカの伝統的なボディワークは容易に身に付かず、頭と肩を振らない現代流故に被弾の確率も自ずと増大。さらにイルディリムは、ゴロフキンとの2度の対戦に備えたカネロのキャンプに呼ばれて、”仮想GGG(スパーリング・パートナー)”を努めていた経緯がある。

カネロとエディ・レイノソ(長年のパートナー/トレーナー兼マネージャー)は、「イルディリムはそこまで簡単な選手じゃない。」とリップサービスに抜かりはないが、「ジェームズ・カークランド以来のお客さん」との本音が見え隠れするのは止むを得ない。


※ゴロフキンとの再戦に備えたカネロのトレーニング・キャンプに参加したイルディム(2018年夏)

順当なら中盤までにカネロがし止めるだろうが、改善されたジャブでどこまでP4Pキングを突き崩し食い下がれるか。そしてステップの不足をカバーする為には、ボディワークの習得が必須。ブランクの間にどこまで進境できたのか。


◎カネロ(30歳)/前日計量:167ポンド1/2
現WBA S・ミドル級正規(V1),現WBC S・ミドル級(V0),前WBO L・ヘビー級(V0),前WBCミドル級(第2期:V1),前IBFミドル級(V1),WBAミドル級スーパー(V1),元WBC S・ウェルター級(V6/WBA王座吸収V0),元WBCミドル級(第1期:V1),元WBO J・ミドル級(V0)王者
戦績:57戦54勝(36KO)1敗2分け
アマ通算:不明
※20戦,44勝2敗など諸説有り
2005年ジュニア国内選手権優勝
2004年ジュニア国内選手権準優勝
身長:175センチ,リーチ:179センチ
右ボクサーファイター


◎イルディリム(29歳):前日計量:167ポンド1/2
戦績:23戦21勝(12KO)2敗
アマ通算:112勝20敗
2013年世界選手権(アルマトイ/カザフスタン)代表(2回戦敗退)
2013年地中海大会(メディテレイニアン・ゲームズ/トロス,トルコ)銅メダル
※階級:L・ヘビー級
トルコ国内選手権で5度の優勝(年度と階級不明)
身長:182センチ/リーチ:178センチ
右ボクサーファイター


※左から:マウリシオ・スレイマンWBC会長(まさにカネロの後見役そのもの),カネロ,エディ・ハーン,アーメット・ウーナー


※映像:前日計量(フル)
Canelo Alvarez vs Avni Yildirim & undercard weigh in
https://www.youtube.com/watch?v=faX1XNsnsXc


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■リング・オフィシャル:未発表

 

 

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■王者のドタキャンで延期のフライ級は急遽暫定王座戦に?

フリオ・セサール・マルティネス(メキシコ)にマックウィリアムズ・アローヨ(米)が挑むWBCフライ級タイトルマッチは、マルティネスが拳の負傷を理由にドタキャン。

当初は延期と発表されたが、元コンテンダーのアブラハム・ロドリゲス(メキシコ)がスクランブル発進。現在はノーランクのロドリゲスだが、WBCは暫定王座決定戦を承認する意向だという。