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ネットオヤジのぼやき録

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不惑目前のドネアが同胞のホープとWBC内の統一戦 - ドネア VS ガバーリョ 直前プレビュー -

2021年12月12日 | Preview

■12月11日/ディグニティ・ヘルス・スポーツパーク,カリフォルニア州カーソン/WBC世界バンタム級タイトルマッチ12回戦
正規王者 ノニト・ドネア(比) VS 暫定王者 レイマート・ガバーリョ(比)



在米専門サイトが「スーパー・サタデイ(Super Saturday)」と名付けた、嬉しくも慌しい週末がやって来た。

井上尚弥との激闘(2019年11月/さいたまスーパーアリーナ)を終えた後、パンデミックによる一時休止を挟み、今年5月の復帰戦(今回と同じ会場)でナルディーヌ・ウバーリ(仏)に驚愕の4回KO勝ち。

直前のオッズは、1-3と接近しつつも王者ウバーリ有利。せわしない出はいりで積極的に仕掛けるウバーリが上々の立ち上がりと見えたが、第3ラウンドに必殺の左フックが命中。

ウバーリの右の打ち終わり、引き手が戻り切らないうちに鋭く被せる得意のパンチが顎をかすめると、これが見事に効いた。本当に軽く合わせるだけのショートでも、王者の脚が止まる。

攻守ところを変えて王者をコーナーに詰めたドネアは、窮鼠猫を噛む格好で左フックを打ち返して来るウバーリに、狙い済ました左フックを一閃。文句無し,ドネアならではのカウンターを浴びて、バタリと前のめりに両手を着くウバーリ。


ここはすぐに立ち上がってエイト・カウントを聞いたが、甚大な被害は明らか。2分過ぎには、再びウバーリの右に左を引っ掛けるようにヒット。これでグラついたウバーリを、最初の時と同じコーナーに詰める。

そして今度は、左をアッパーに変えて振るうウバーリにまた左。ドンピシャのタイミングで、王者の顎を捉えた。これで決まったかに思われたが、王者も渾身の力を振り絞って何とか立ち上がり、ラウンド終了のゴングに駆け込む。

前評判通りウバーリに傾きかけていた流れを一撃で引っくり返したドネアは、続く第4ラウンド、ダメージの残る王者をロープに詰めてまたもや左。

為す術なくキャンバスに沈むウバーリを見て、主審ジャック・リースがカウントの途中で試合終了を宣言(カリフォルニア州の公式発表はTKOではなくKO)。


ウバーリの思い切りのいい踏み込みに戸惑い、左を合わせる間合いとタイミングを読み切れず、右ストレート中心に迎え撃つ態勢を余儀なくされて、どうなることかと先行きを案じたのも束の間、快心のカウンターで8年ぶりとなる緑のベルト(バンタム級)を確保。

「井上戦における望外の好調をそのまま再現」と表していいのかどうか、いささか迷うところではあるものの、あの煩いウバーリを合わせるだけの1発でガタガタにしてしまうのだから、ドネアの左はやはり恐ろしい。

レイチェル夫人が存在感を増したチームも、変わることがない晩酌の結束をアピール。夫人との交際・結婚に反対して一度はチームを追われた父(ノニト・シニア)も、本番のコーナーでしっかりした仕事を続けている。


※左から:レイチェル夫人(最近は実際にコーナーにも入る),ドネア,ノニト・シニア(本番のコーナーでは事実上のチーフ核)


※WBSS参戦時から継続する現在のチーム・ドネア/左から:レイチェル夫人,ドネア,マイケル・バゼル(長年ドネアのフィジカル強化を担当/WBSSのライアン・バーネット戦とWBC王座を奪還したウバーリ戦ではチーフも担当),ケニー・アダムス(作戦参謀・ヘッド格/史上最強の呼び声も高い1984年ロス,88年ソウル両五輪で米国代表を率いた伝説的なトレーナー)



※ロマチェンコ VS コミーに引けを取らない”ジェントル&フレンドリー”なファイナル・プレッサー

◎参考映像:ファイナル・プレス・カンファレンス
NONITO DONAIRE VS REYMART GABALLO - FULL FINAL PRESS CONFERENCE & FACE OFF VIDEO
Fight Hub TV


同じフィリピンの大先達に挑むガバーリョも、武漢ウィルス禍で丸々1年ぶりのリング・イン。昨年12月19日、コネチカットのインディアン・カジノに登場したガバーリョは、大いに物議を醸す判定ながらも、実力者エマニュエル・ロドリゲスを2-1のスプリットでかわし、番狂わせの暫定王座奪取。

別人のように消極的なロドリゲスの安全運転にアシストされての辛勝ではあったが、3年前(2018年3月)のWBA暫定王座に続く2度目の載冠を果たした。

◎参考映像:前日計量とフェイス・オフ
Nonito Donaire vs. Reymart Gaballo: Weigh-In | SHOWTIME CHAMPIONSHIP BOXING
SHOWTIME Sports(公式チャンネル)



正攻法のボクサーファイタースタイルで、ボクシングのまとまりがいい分、動きもサイズも小さく見えがちだが、背格好はドネアとほとんど変わらない。
※この後ドネアが十八番のリバウンドでどこまで大きくなるか・・・



サイズが合ってなおかつ小細工が少ないガバーリョは、ウバーリよりも手が合いやり易いと見る向きが多いのではないか・・・そんな具合(勝手)に想像していたが、スポーツブックのオッズは意外にも接近していた。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
ドネア:-400(1.25倍)
ガバーリョ:+300(4倍)

<2>5dimes
ドネア:-400(1.25倍)
ガバーリョ:+325(4.25倍)

<3>betway
ドネア:-400(1.25倍)
ガバーリョ:+275(3.75倍)

<4>ウィリアム・ヒル
ドネア:2/7(約1.29倍)
ガバーリョ:13/5(3.6倍)
ドロー:16/1(17倍)

<5>Sky Sports
ドネア:1/4(1.25倍)
ガバーリョ:11/4(3.75倍)
ドロー:20/1(21倍)


「いや、4倍なら十分な大差だろう。」

そんな声も聞こえてきそうだが、「ひょっとしたら、7~8倍の差が付くかも」と個人的に思っていたので、これでも差が無いとの印象を受ける。

ウバーリ戦と同等の仕上がりなら、ガバーリョの右を誘って左フックを合わせ、それで一巻の終わりとの展開も容易に想像できてはしまう。

ガバーリョ陣営もそこは流石に注意する筈で、無理に踏み込んでまで強め(長め)の右を打たず、遠目のミドルレンジを維持しつつ、左回りを徹底して歴戦の4冠王にタイミングを与えない・・・そうした作戦を採ることも想定の範囲内。

フロリダに拠点を持つベテランのキューバ人コーチ,オスミリ・フェルナンデスの対策は、再戦の可能性を残すチーム井上の参考にもなりそう。


とは言え、順当ならドネアの3-0判定勝ち。暫定チャンプがスタートから積極策に出た場合(ウバーリのように)、前半~中盤までにドネアがし止めるパターンも有り。

じっくり距離を見定めながら、脚とボディワークを止めずに出はいりを続けて、ドネアを引き出して先に打たせてはタッチを繰り返す。全盛のリゴンドウと同じ水準は望めないにしても、海千山千のキューバン・トレーナーなら、その辺りを上手く突いて来るかもしれない。


※写真左:オスミリ・”モロ”・フェルナンデス,ガバーリョ,ジム・クロード・マナンケゥイル(ジェネラル・サントスのプロモーター)
 写真右:ジム・クロード・マナンケゥイル(共同プロモーター),ガバーリョ,ショーン・ギボンズ(パッキャオが興したMPプロモーションズの新代表)


◎ドネア(39歳)/前日計量:117.2ポンド
5階級制覇王者/戦績:47戦41勝(27KO)6敗
現WBCバンタム級王者.元IBFフライ級(V3),元WBA S・フライ級暫定(V1),元WBC・WBO統一バンタム級(V1),元WBO J・フェザー(第1期:V3/第2期:V1),元WBAフェザー級スーパー(V0)王者
アマ通算:68勝8敗(2000年シドニー五輪代表候補)
2000年全米選手権優勝
1999年インターナショナル・ジュニア・オリンピック(メキシコシティ)金メダル
1999年ナショナル・ゴールデン・グローブス ベスト8
※階級:L・フライ級
身長:170.2センチ
リーチ:174センチ
首周:36センチ
胸囲:87.0センチ
視力:左1.0/右1.2
ナックル:左26.5/右27.5センチ
右ボクサーファイター(スイッチ・ヒッター)


◎ガバーリョ(25歳)/前日計量:117ポンド
現WBCバンタム級暫定王者(V0),元WBAバンタム級暫定王者(V0)
戦績:24戦全勝(20KO)
身長:168センチ,リーチ:173センチ
右ボクサーファイター


※左から:ドネア,リチャード・シェーファー(主催プロモーター/リングスター・スポーツ),ガバーリョ,オスミリ・フェルナンデス(ガバーリョのトレーナー)


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□オフィシャル

主審:レイ・コロナ(米/カリフォルニア州)

副審:
マックス・デルーカ(米/カリフォルニア州)
ルー・モレット(米/カリフォルニア州)
カレン・ホルダーフィールド(米/アーカンソー州)

立会人(スーパーバイザー):未発表


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■主なアンダーカード

国内S・バンタム級で長らくトップの座を維持してきた勅使河原弘晶(輪島→三迫)が、ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)への挑戦権を懸けて、フィリピンのマーロン・タパレスと激突。

地元カリフォルニア出身のブランドン・リー(22歳/23連勝21KO/アマ196勝5敗/181勝9敗説有り)は、韓国人の父とメキシコ人の母を持つS・ライト級の若きスター候補。

現在は南カリフォルニアのコーチェラ・バレーに居住しており、ジョエル・ディアスの指導を受けている。リオ五輪の代表を逃した後、2017年1月に4回戦でデビューしてから、パンデミックの間もリングに上がり続けてきた。

対戦相手のファン・ヘラルデス(31歳/16勝10KO1敗1分け)は、ラスベガスに拠点を置く元トップ・アマ(通算94戦/勝敗不明)。メイウェザー・プロモーションズの支配下選手の1人で、コーネリアス・ボザ・エドワーズ(元WBC J・ライト級王者)の薫陶を受けて成長したが、ラスベガスに移ってからは、メイウェザー・ジムで腕を振るうオーティス・ピンプルトンのサポートで戦っている。

クルーザー級のアンドリュー・タビッティ(17勝13KO1敗/アマ:32勝6敗)は、ユニエル・ドルティコスに喫した痛恨の初黒星(2019年6月/敵地ラトヴィアで10回KO負け)以来、実に2年半ぶりの実戦復帰。ミシガンから呼ばれた中堅選手が相手のチューンナップだが、一応10回戦を予定。

ロンドン五輪代表組み(カナダ)の1人,カスティオ・クレイトン(18勝12KO1分け)も、IBFの暫定王座を獲り損ねた昨年10月のセルゲイ・リピネッツ戦(1-0のマジョリティ・ドロー)以来、1年2ヶ月ぶりの再起戦。ハワイ生まれの負け越し中堅選手との10回戦で、無難なリスタートを目論む。