ネットオヤジのぼやき録

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リアル・モンスターが幕を開ける国内PPVの成否やいかに? - 井上尚弥 VS A・ディパエン 直前プレビュー -

2021年12月14日 | Preview

■12月14日/両国国技館/WBA・IBF統一世界バンタム級タイトルマッチ12回戦
統一王者 井上尚弥(大橋) VS IBF6位 アラン・ディパエン(タイ)

在米専門サイトが「スーパー・サタデイ(Super Saturday)」と称した慌しい週末が終わり、いよいよ”リアル・モンスター”のお出ましである。

再戦への可能性が刻一刻と高まりつつあるドネアが、ボディでガバーリョを倒して快勝。8年ぶりに巻いた緑のベルトを防衛するとともに、自他共に満足の行く内容で健在ぶりをアピールしたかと思えば、ドネア以上に対戦への期待が寄せられていたカシメロは、前日計量をスッポかして緊急入院。

「減量がキツ過ぎて調整に失敗したらしい・・・。」

中東ドバイでの防衛戦は急遽中止となり、チャレンジャーのポール・バトラー(英/元IBF王者)には、同じくIBFの元王者ジョセフ・アグベコ(ガーナ/44歳!)が用意され、WBOが暫定王座決定戦を承認したと報じられるも、結局この代替カードも取り止め。


当初組まれていたカード(全10試合)にアグベコの名前は無く、WBOのバンタム級8位にランクインしているとは言え、カシメロへの挑戦を視野に入れて、わざわざガーナからドバイまで観戦にやって来るとも思えない。

手回しが良過ぎて感心するしかないが、仮に来場していたにしても、ウェイトも含めて試合ができる状態なのかどうかすらもわからず、リミットの118ポンドに程遠い体重だったとすれば、バトラー陣営が代替案を拒否したとの伝聞も充分に納得できる。

WBOは治療に当たった担当医の診断書提出を求めており、期限までに果たされなかった場合、ベルトをはく奪するとカシメロ陣営に通告済みとのこと。




「暫定?。冗談じゃない。」

正規王座じゃなければやらないと、威勢よくバトラーが啖呵を切ったと語る記事(インタビュー映像)もあったようだが、そんな贅沢を言ってる場合でも立場でもないだろうと、余計な一言が思わず口を突いて出てしまう。バトラーがそう言いたくなる気持ちも分かるし、正論ではあるのだが・・・。


例え体調不良や急病が原因でも、計量をスッポかした時点でチャンピオンの資格無しと考えるのが常識で、要らぬ温情裁定としか思えないが、リミットを作ることができなかった(それも相当のオーバー)現実を誤魔化し、体裁を取り繕ってベルトを手元に残す為の仮病だとしたら、これはもう本当に救いようがない。

「体調不良?。ギャラだろ。」

TGBプロモーションズのトム・ブラウン(カシメロをハンドリングするPBC側プロモーター)と、エディ・ハーン(マッチルーム・スポーツを率いる今や英国トップのプロモーター)&MTKグローバル(バトラーを傘下に収めるプロモーション&スポーツ・マネージメント企業)の交渉が不首尾に終わり、WBOは入札を指示。

ところが、TGBとマッチルームは何故か入札に参加せず、リチャード・シェーファーが新たに立ち上げたプロベラム(Probellum)なる名称の興行会社(メディァ戦略も専門にするらしい)が、なんと105,000ドルの安価(最低入札価格10万ドル+5千ドル)で落札。

リゴンドウ戦での18万ドル(17万5千ドル+5千ドルの勝利ボーナス)にも不満タラタラだったというカシメロだけに、それを遥かに下回る78,750ドル(入札金額の75%/バトラーは25%の26,250ドル)と聞かされ、あからさまな失望を浮かべて天を仰いだらしい。


ちなみにプロベラムなるプロモーションだが、代表を務めるのはシェーファー自身ではなく、WBOのお膝元プエルトリコのプロモーター,ピーター・リベラ。

「PR Best Boxing」という自前の興行会社を持ち、マックウィリアムズとマックジョーのアローヨ兄弟、ファンマ・ロペスらを抱えていた筈だが、武漢ウィルス禍の影響を受ける以前(2018~2019年頃)から活動が停滞していた。



経営難からどうにかして脱出するべく、WBOのパコ・バルカルセル会長に泣きついた(?)リベラに、シェーファーが直接(財政)的な支援を行うと同時に、TGBとマッチームも相乗りで救いの手を差し伸べたと見えなくもない構図ではある。


さらに、開催地のドバイでボクシング興行を手掛けるアフメド・サディキ(Ahmed Seddiqi/D4G Promotionsを主催)が、プロベラムの取締役として名を連ねているという。

MTKグローバルからも「中東地域におけるアドバイザー」の肩書きをいただくセディキは、ドバイのボクシング興行を仕切る顔役といったところ。シェーファー,MTKとくれば、ドイツを代表するプロモーター,カール・ザウアーラントともに、「WBSS(World Boxing Super Series)」を作った中心メンバー。

「ドバイは、ボクシングの新たなるメッカに成り得る。」

パンデミックで疲弊したアメリカから中東へ。アジア西端を代表するビジネス・センター足るべく、莫大なオイル・マネーを元手に、インフラや法体系の整備にまい進してきたドバイを、ニューヨークとラスベガスに次ぐボクシングの中心地にすると息巻くシェーファー。



だが、イスラム教国のUAE(アラブ首長国連邦)では、当たり前だがカジノを合法化することはできない。政府がお墨付きを与えた競馬と宝くじは例外で、地元の人たちも馬券とくじを購入できるとのこと。

ギャンブルとアルコールはイスラムの経典で禁忌とされており、「カジノ(ラスベガス)・ボクシング(タイソン,デラ・ホーヤ,メイウェザー)・PPV」の「週末錬金3点セット」をドバイで実現するのは非現実的・・・というのが一般的な認識・・・。


入札の裏側について、あれこれと茶飲み話を述べるのはこれぐらいにして、余りの安さに怒り心頭のカシメロである。

「こんなはした金で、ドバイくんだりまで行けるか!」

本音ではそう叫びたいに違いないWBOチャンプ。けれどもその一方で、軽量級では最高水準の高額を手に出来るであろう井上戦をフイにする気はさらさら無く、今ここでWBOのベルトを手放す訳にはいかない。

これはまったくの億速に過ぎないが、カシメロが10万ドル以下の薄給を辛抱するとは思えず、TGBとアル・ヘイモンも、ドバイへの出張手当てを別立てで支給する手筈だったと思う。あるいは、「井上戦が実現した場合の大幅な増額」で補償する手もある。


トラッシュトークを繰り返しているだけならまだしも、正面切ってヘイモンのグループと喧嘩をする蛮勇は、”ぶっ飛びキャラ”を煽り続けるカシメロにも無い筈。

WBOがカシメロのベルトをはく奪する可能性は極めて低いと、そう見るのが妥当な状況であり、「仮病説」の信憑性が増すのは理解できるけれど、トリを任された興行をバッくれて、バルカルセル会長とシェーファーの顔を平気で潰すとも思えない。

試合ができないほどだったのか否かは別にして、具合が悪かった(減量による極度の脱水と急激な消耗の可能性も含めて)のは本当ではないのか。

井上との統一戦が最大の焦点には違いないけれど、力のあるプロモーターと認定団体が、カシメロにそれだけのバリュー(商品価値)を認めていることの証左でもあり、お膝元のWBCとヘイモン一派から手厚い庇護を受けるルイス・ネリーと同様、”憎まれっ子世にはばかる”の典型と諦める以外に手は無し・・・。


長々とカシメロのトラブルに言及してしまったが、井上に相対する今度の挑戦者は、冷静かつ客観的に見てそれぐらい期待値が低い。

「ケンナコーン・GPP・ルアカイムック」というリングネームを使っていたと記憶するけれど、源氏名ではなく本名によるタイ人選手の呼称表記が定着しつつある昨今、何となく物足りない気がして一抹の寂しさも感じてしまう(オールド・ファンのつまらない愚痴と察してご容赦を)。

一応ムエタイ経験者で、国内スポーツ紙には「タイ式の強豪,猛者」と報じる記事も散見された。60戦(50勝10敗の自己申告)のキャリアを持っていると言うが、トシ(30歳)を考えると思わず眉にツバを付けたくなる。


本当に強いムエタイのファイターは、10代後半~20代前半にピークを迎えるのが常で、強過ぎて賭けが成立しづらくなり、国際式に転向するパターンが長らく定石とされてきた。

20代後半を超えてもなお、首都バンコクの二大殿堂(ラジャダムナンとルンピニー両スタジアム)で第一線を張る実力者もいるけれど、そうした本物の猛者たちの戦績は、ほぼ例外なく100戦を越えており、200戦,300戦超というツワモノも当然のように存在する。

ラジャとルンピニーのいずれかで、階級はともかくランキングに入っていたのであれば、それだけでも大したものだという話にはなるが、もしも二大殿堂のランカーだったのであれば、教えてくれと頼まなくても向こうから触れて回るに違いない。


IBFのローカル王座戦や、エカテリンブルグまで遠征して8ラウンズの判定を落とした敗戦、来日して荒川竜平を2回でストップした試合など、ネット上で幾つかの映像を確認できる。

アムナット・ルエンロンをハンドリングしたプロモーター,エカラット・”ジミー”・チャイチューチュアン(Ekkarat ”Jimmy” Chaichotchuang)と契約して国際式に転向。


※写真左:エカラットプロモーターとディパエン
 写真右/左から:エカラットプロモーター,アムナット,サンプソン・ルコヴィッツ(後方:カシメロのマネージャー/当時),カシメロ


プロモーターが自らの愛称を冠した興行会社(Jimmy Boxing Promotions)の支配下選手となり、2019年2月に国際式デビュー。

12月までの10ヶ月間に11試合をこなしており、ロシアと日本への遠征もこの間に行われた。パンデミックの影響を受けて、昨年は2試合(2月と12月)しかやっておらず、今年も3月に1戦したのみ。


しっかり顔をカバーするガードの位置と、ゆったりとしたリズムの取り方にムエタイの名残りを漂わせるものの、高いガードを上下に揺するタイ式独特の動きはほとんどやらない。

肘を内側に絞るコンパクトな構え方、ジャブ&ワンツーからセットアップしてボディへつなぐ一連の流れにも、国際式でしっかり訓練を積んだ跡が伺える。

国際式に慣れ過ぎて(?)しまい、ボクシングのまとまりがいい分、昭和に活躍した海千山千のタイ人たちのように、何をしでかすのかわからない怖さが無いところも、現代のムエタイ出身者たちに共通するマイナス・ポイント。


相手の出方に合わせて前後に動く反応も悪くないし、歩幅を抑え気味にしたステップワークも堂に入っていて、時折り見せるノーガードは「十分に安全」と思える距離を見定めた上の所作。

12勝11KOの戦績が示す通り、パンチは相応に重く威力はある。キレとスピードはそれほどでもないが、蹴り(後ろ)足の反動を存分に使って重心を前足に移し、体重を乗せて思い切り振って来る為、打ち終わりの処理が甘くなったり、真っ直ぐ下がると危ない(とりわけ右フックには要注意)。

パンチの見切り方とステップワークもそれなりにセンシブルで、国際式への適性を感じさせてくれるが、いずれにしても「ローカル・レベル(地域及び国内限定)では」の但し書きが付く。


ロシアでの敗戦映像を見ると、タジキスタン出身の中堅選手にフィジカルの強さと勢いで圧力を受け、序盤に左フックで顎の先端をヒットされてダウンを喫した後、追い回される展開を打開できない姿が目立つ。

首相撲からの肘と膝,相手を左右に振り回しながらの投げが許されるムエタイと、パンチ以外には許容範囲のクリンチ&ホールディングしか対応策が無い国際式の違いが、大きく影響しているのは間違いないだろう。

強打に自信を持っている割には、中間距離での打ち合いが少ない点も気になるところだが、これは現代のボクサーに総じて言えることで、インファイトの技術が押しなべてレベル・ダウンしているのは、ムエタイからの転向組みに限らない。


とにかく、井上とはスピード(手足・身体全体)が違い過ぎる。パンチがあると言っても井上の桁外れのパワーには当然及ばず、リアル・モンスターが本気になって脚を使ったらとても付いて行けない筈で、2ラウンズ程度なら必死になって対応できたとしても、長くは続かずあっという間に息切れしてしまう。

注意が必要なのは、クリンチで揉み合った際の裏技(不可抗力を装っての頭・肩・肘を使ったバッティングやサミング)と、離れ際の加撃ぐらいのものか。

腕を絡めて離れようとする相手の動きを止め、ガードできない状態を作りざま、「自分は悪くない」と言いたげな雰囲気を醸し出しつつ、すかさず右フックを打ち込むラフ・プレイは荒川戦でもやっていた。


タイ人とはこれまで3度の対戦経験があり、ファン・C・パジャーノに得意の密着戦術を許さず、芸術的なワンツーで瞬殺してしまった井上なら、組み付かれる前に左右のカウンターをチラつかせて寄せ付けないだろうし、ラフ&タフへの対応と準備に問題はないと信じるけれど、何しろディパエンには失うものが何もない。

「何をしでかすのか分からない怖さが無い」と上述しておきながら、こんな事を書くのはいささか気が引けるけれど、揉み合う中で足を引っ掛けながら体重を浴びせて強引に押し倒し、そのまま上から膝を落とすムエタイ流の荒業には、くれぐれも気を付けるべき。

赤穂亮を首相撲で散々振り回しながら、ローブローとバッティングをやり放題の挙句、肘を後頭部に落として試合を終わらせたプンルアンの悪行は、地元開催の利権(レフェリーの買収込み)をフル稼働させてもどうかと言うぐらいの極悪非道だが、頭の片隅にインプットしておく必要はある。


※来日したディパエン一行/左から:チーフ・トレーナー(名前はわからない),エカラットプロモーター(髪型と体型・背格好,眼鏡でほぼ間違いないと思う),ディパエン,アシスタント or マネージャー or 肉親(兄弟)?(名前・役割ともわからない)


プロボクシングの技術とルールの範疇でまともに戦ったら、早い時間帯で決着すると見立てるのが順当。想像通り、賭け率も大きな差が開いている。個人気には、5dimesの18倍を指示したい。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
井上:-5000(1.02倍)
ディパエン:+1200(13倍)

<2>5dimes
井上:-4300(約1.02倍)
ディパエン:+1750(18.5倍)

<3>betway
井上:-5000(1.02倍)
ディパエン:+1000(11倍)

<4>ウィリアム・ヒル
井上:1/50(1.02倍)
ディパエン:11/1(12倍)
ドロー:25/1(26倍)

<5>Sky Sports
井上:1/50(1.02倍)
ディパエン:10/1(11倍)
ドロー:33/1(34倍)


ディパエンの右(強振)を誘って深く前に突っ込ませ、オフ・バランスになったところに左右を打ち下ろすのは、今の井上にはさほど難しいことではない筈だが、タイ人の頭を強打して拳を傷める恐れがある。脇腹をフックかアッパーで抉るのが最善の選択。

高めのガード+アップライトが基本のムエタイ流を逆手に取り、遠目のミドルレンジから電光石火のステップインで飛び込み、右ストレートを鳩尾へ持って行くのもいい。

ダスマリナス(左右が違うけれど)のように、リードジャブに鋭く重い右を被せて怯えさせれば、瞬時にプレッシャーが効いて流れが決まる。

何はともあれ、余計な怪我と傷を負うことなく、来るべき(?)「ドネア 2」に備えて、心安らかに良い正月を迎えて欲しいと願うのみ。


※次はいよいよ3団体の統一戦/カシメロではなくドネアとのリマッチを推進?


◎井上(28歳)/前日計量:118ポンド(53.5キロ)
戦績:21戦全勝(18KO)
WBA(V4)・IBF(V3)2団体統一バンタム級王者.元WBO J・バンタム級(V7),元WBC L・フライ級(V1)王者
元OPBF(V0),元日本L・フライ級(V0)王者
戦績:16戦全勝(14KO)
アマ通算:81戦75勝(48KO・RSC) 6敗
2012年アジア選手権(アスタナ/ロンドン五輪予選)銀メダル
2011年全日本選手権優勝
2011年世界選手権(バクー)3回戦敗退
2011年インドネシア大統領杯金メダル
2010年全日本選手権準優勝
2010年世界ユース選手権(バクー)ベスト16
2010年アジアユース選手権(テヘラン)銅メダル
身長:164.5センチ,リーチ:171センチ
※ドネア戦の予備検診データ
右ボクサーパンチャー(スイッチヒッター)


◎ディパエン(30歳)/前日計量:117.5ポンド(53.3キロ)
戦績:14戦12勝(11KO)2敗
元IBFパン・パシフィックフライ級(V0),元タイ国S・フライ級(V0)王者
身長:162センチ
右ボクサーファイター


※どちらも良い仕上がりに見える


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■リング・オフィシャル:未発表

オミクロン株への対応策として、11月30日から外国人の新規入国が停止された為、審判団は全員日本人になるとのこと。

WBAとIBFが派遣する立会人(スーパーバイザー)の来日も当然無理なので、安河内JBC事務局長がその任に当たる(筈)。

首都バンコクで200ラウンズ近いスパーリングをこなし、2ヶ月に及ぶキャンプを張ったという挑戦者は、11月28日(入国規制の僅か2日前)に来日。横浜市内のホテルの1フロアを貸し切りにして、トレーニング環境も用意したというから、まさに大橋会長のお手柄。

前売りのチケットは7日に完売が報じられ、実数は未公表ながら、「当日の国技館(12,000人規模の収容)は満員に近い状況」になる見込みだという。

客入れの数を注意深く制限・設定しながら、これまでなら必要の無かったコストも負担しなければならない。国際試合を手掛けるプロモーターは、仕事だから仕方が無いとは言え、やはり大変ではある。


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■主なアンダーカード
<1>WBO世界M・フライ(ミニマム)級タイトルマッチ12回戦
王者 ウィルフレド・メンデス(プエルトリコ) VS WBO1位 谷口将隆(ワタナベ)

日本(小西伶弥に0-2判定負け)とOPBF王座(小浦翼に0-2判定負け)挑戦に1度づつ失敗し、プロ3年目でWBOのアジア・パシフィック王座を獲得した後、2019年2月に実現した世界タイトル初挑戦でも、当時のWBO王者ヴィック・サルダール(比)に大差の0-3判定負け(谷口はWBO2位)。

昨年暮れ、武漢ウィルス禍による1年3ヶ月のブランクから復帰した緒戦で、ランク3位の佐宗緋月(T&T)をワンサイドの10回TKOに下して、空位の日本タイトルを獲得。今年6月に組まれた初防衛戦では、平仲ジムの1位仲島辰郎に5回TKO勝ち。

沖縄の期待を一身に背負い、後楽園ホールに登場した仲島の指名挑戦を危なげのない完勝でクリアし、WBOの1位としてメンデスへの指名挑戦を引き寄せた。

丁寧に右のジャブを突きながら前後左右にステップを刻み、ショートの的確なタッチでポイントメイクするサウスポーは、龍谷大のボクシング部で主将を務めた元トップ・アマ。同門の2階級チャンプ,京口紘人のサポートを受けて、2度目の挑戦に念願の載冠を期す。


”Bimbito(ビンビート:Child:子供)”の愛称で呼ばれる王者も、左構えのボクサーファイター。ご本人の弁によると、「イヴァン・カルデロンのスタイルを踏襲している」との事だが、けっしてフットワーカーではない。

2019年8月、谷口の挑戦を退けたサルダールに敵地フィリピンでアタック。2-1のスプリット・ディシジョンをもぎ獲り、WBOのベルトを巻いた。

メキシコのアクセル・ベガ(2019年10月/母国で7回負傷判定勝ち)、コロンビアのガブリエル・メンドサ(2020年2月/アウェイのパナマシティで9回TKO勝ち)を破り、2度の防衛に成功した後パンデミックによる一時休止入り。

2年近いブランクの影響はやはり大きかったらしく、「ホームでの復帰を望んでいたが、家族を飢えさせない為に日本行きを決断した。」とのこと。

入札を目前で回避したのは、ワタナベ,大橋両陣営がそれ相応の条件を出したということになる。

「この階級で短期間に大きく稼ぐのは難しい。なおかつ、現役でいられる時間は限られている。だから、出来る限り短いスパンで防衛戦を続けるつもりだった。」

家が貧しく過酷な少年期を過ごしたというメンデスは、同じ境遇から成り上がった多くのチャンピオンたちと同じく、経済的な成功への欲求は強い。

2年前に完敗を喫したサルダールにも言えることだが、何よりも根源的で強靭なモチベーション(ハングリネス)に支えられた王者を攻略する為には、攻防の切り替えと距離をはっきりさせることが重要になる。

中途半端にくっ付いて揉み合う時間が増えると、その分だけ勝利も遠のいて行く。


◎メンデス(25歳)/前日計量:104.7ポンド(47.5キロ)
戦績:17戦16勝(6KO)1敗
アマ通算:約180戦(詳細不明)
身長,リーチとも165センチ
左ボクサーファイター

◎谷口(27歳)/前日計量:105ポンド(47.6キロ)
日本ミニマム級王者(V1),元WBOアジア・パシフィック王者(V0)
戦績:17戦14勝(9KO)3敗
アマ通算:74戦55勝(16RSC・KO)19敗
2012年岐阜国体,2014年長崎国体準優勝
※階級:L・フライ級
神戸第一高校→龍谷大学
身長:162センチ,リーチ:センチ
左ボクサー

■リング・オフィシャル:未発表


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<2>55キロ(121.25ポンド:S・バンタム級)契約
武居由樹(大橋) vs 今村和寛(本田フィットネス)

話題の元K-1王者が、プロ3戦目で地方ジムの実力者(自身と同じサウスポー)を迎えての初8回戦。

ボディワークの決定的な不足(硬くて棒立ちの上半身+反応の鈍さ)と、直線的な攻撃が仇となり、カウンターの餌食になり易い。

フィジカルの強さがけっしてプラスに働かず、キック経験者の多くが陥る落とし穴は、素早いステップワークと鋭い反応を併せ持つ武居には無縁?。

昨年11月、2度目の後楽園ホールで辰吉寿以輝(大阪帝拳)と対峙した今村は、第2ラウンドに得意の左フックで寿以輝をグラつかせ、追撃のボディで動きを止めル事に成功したものの、バッティングで左瞼をカットした寿以輝にドクターストップがかかり、無念の負傷ドロー。

辰吉ジュニアに続いてK-1王者にあてがわれることにも、「勝てば顔と名前が売れる。大きなチャンス」だと臆する気配は無し。

武居有利の前評判は致し方の無いところだが、進境著しい寿以輝に冷や汗をかかせた今村の左にも要注意。


◎武居(25歳)/前日計量:121.25ポンド(55キロ)
戦績:2戦2勝(2KO)
身長:170センチ
左ボクサーファイター

◎今村(29歳)/前日計量:120.8ポンド(54.8キロ)
戦績:3戦2勝(1KO)1分け
アマ通算:52戦32勝(10RSC・KO)20敗
佐賀学園高校→日大
身長:センチ,リーチ:センチ


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■ひかりTVとABEMAによるPPVについて

Amazonが日本国内の放映権を取得して大きな話題となった「ゴロフキン VS 村田(中止は何としても避けて欲しい)」に続いて、2年ぶりに国内のリングに立つ井上尚弥も、フジによる地上波の中継は無し。

NTT(ぷららとNTTコミュニケーションズ)が運営していた、複数の映像配信サービスを統合して出来た「ひかりTV」と、テレ朝+サイバーエージェントの出資による「ABEMA」が、PPVによる有料(3,960円/税込)の中継を行う。

<1>ひかりTV
1.会員登録必須(月額0円)
2.視聴チケットの購入(カード決済)
3.ひかりTV会員:視聴チケットの購入のみ

◎ひかりTV公式サイト/視聴チケット販売ページ
https://www.hikaritv.net/sp/pxbworldspirits20211214/

◎チケット購入手順(PDF形式)
https://www.hikaritv.net/resources_v2/hikari/all/sp/pxbworldspirits20211214/images/pc.pdf


<2>ABEMA:「ABEMAコイン(サービスを利用する為の独自通貨)」で視聴チケット購入
1.通常販売:3,300コイン(3,960円相当)
2.ABEMAプレミアム会員(月額960円の有料会員):2,630コイン(3,156円相当)
3.アプリからの購入:1,420コイン(1,704円相当)の手数料が別途課金される

◎ABEMA公式サイト/視聴チケット販売ページ
https://abema.tv/video/episode/527-299_s10_p300

◎ABEMAコインとは
https://help.abema.tv/hc/ja/articles/360026740711-ABEMA%E3%82%B3%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%81%A8%E3%81%AF

◎ABEMAプレミアム(有料プラン)について
https://help.abema.tv/hc/ja/articles/360024378511-ABEMA%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%9F%E3%82%A2%E3%83%A0-%E6%9C%89%E6%96%99%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%B3-%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6


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□フェニックス・バトル(PXB)関連
<1>公式サイト
https://www.phoenixbattle.jp/

<2>Twitter公式アカウント
https://twitter.com/PXB_PR

<3>youtube公式チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCV1AsvsYD-iaTbL812WeSJA

「PXB WORLD SPRITS」というシリーズ名で、田中恒成とのスパーリング映像(ダイジェスト)を含む、複数の映像を配信している。

アメリカの4大スポーツ、サッカーや日本の野球に代表されるメジャー競技とは違って、ファン層が限られるボクシングのPPVを成功に導く為には、様々なプロモーション活動が必須となる。

SHOETIMEが製作する「All Access」シリーズや、かつてHBOがやっていた「24/7」シリーズに匹敵し得る、マニアを納得させるだけの見応えと手応えを提供するプレビュー映像はとりわけ重要。

大変残念ながら、今回の井上尚弥にはそうした映像コンテンツが間に合っていない。あるいは、そもそも製作する意図が無いのか・・・。

ゲスト解説に招かれたヒカキン氏には、「最も成功した邦人ユーチューバー」ではなく、かつてスキージャンプの代表チームに呼ばれ、高梨沙羅選手らと研鑽に励んだトップ・アスリートとしての立場、あるいは、アリアナ・グランデやエアロスミス、Ne-Yoら海外の大物アーティストと競演したビート・ボクサーとしてのコメントを望みたい。

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